静岡県伊東市に鎮座する「大室山(おおむろやま)」は、青々とした山肌にペコっとへこんだ頂上がインパクトの強い山です。
ユネスコ世界ジオパークに認定されている大室山からは、富士山の絶景が見ることができ、眺望スポットとしても大人気。
ですが、「富士山を褒めると不幸になる」という、言い伝えのある場所でもあります。そこで今回は、不思議な伝説の残る大室山とその楽しみ方をご紹介します!
静岡県伊東市にある「大室山」とは?
静岡県伊東市、伊豆半島の東側に位置する街のシンボルが、大室山です。標高580mの火山で、山の頂上にぽっかり口をあけた火口がとても特徴的。
下から見ると三角錐の山の形をしていますが、空から見てみるとちょうどお茶碗をひっくり返したような、中央がペコリとくぼんだ形をした個性的な山です。これは火山活動によって作られ、「スコリア丘」と呼ばれています。
スコリア丘は国内にいくつもありますが、その代表格がこの大室山です。
伊東市きっての観光スポットとなっている大室山は、毎年春になると山全体を焼く「山焼き」が行われることでも有名。
山が火に覆われる豪快な山焼きを見ようと全国から人々が訪れます。この山焼きの影響もあり、普段の大室山は一年生植物に覆われ鮮やかな緑色!
火山というとゴツゴツしたイメージですが、大室山は緑を蓄えた柔らかな雰囲気の山です。
映画『君の名は。』の聖地巡礼も
大室山は、映画『君の名は。』にそっくりな場所ともいわれており、聖地めぐりとしてもおすすめ。
映画に登場する糸守町の御神体がある山に似ていると話題になりました。映画を見た方ならあの山ね!と記憶に残っているはず。
大室山にも神社があり、山頂をぐるりと一周歩けるようにもなっているので確かに映画に出てくる場所にそっくり。君の名はの世界にひたりたい方にもおすすめの場所です。
富士山や相模湾が見渡せる頂上
標高は580mと大きくはありませんが、見晴らしは絶景。山頂からは富士山や相模湾、伊豆諸島、天城連山などが見渡せます。
大室山は国の天然記念物に登録されており、植物の保全のために歩いて登ることが禁止されています。
山頂へは、リフトの利用が必須となっているので訪れる時間には注意しましょう。リフトは朝9時から夕方4時ごろまで。
大室山のリフトはスキー場によくあるふたり乗りのリフトです。地面から比較的近い場所を登って行くため迫力満点!
リフトが苦手な人もいますが、地面が近く、比較的揺れも少ないので乗りやすいかもしれません。麓からは約6分ほどで頂上に到着します。
頂上で楽しむ「お鉢めぐり」
約6分のリフトの旅を終えると大室山の山頂に到着。「おはち」と呼ばれる火口は深さ約70m、直径約300mの大きさ。
その周囲をぐるりと一周およそ1kmにわたり歩道が整備されています。この火口に沿った遊歩道を歩くことは「お鉢めぐり」と呼ばれており、大室山観光のメインイベントとなっています。
お鉢巡りはゆっくり歩いて30分程で一周できますよ。360度歩くことで、さまざまな角度から絶景を眺めることができますのでぜひゆったり散策を楽しみましょう。
「大室山浅間神社」へお参りも
お鉢めぐりの途中には、「大室山浅間神社」が鎮座しているのでぜひお参りしましょう。大室山は、実は富士山と姉妹と呼ばれる山。富士山に匹敵するパワースポットとしても知られています。
大室山浅間神社にお祀りされているのは、イワナガヒメノミコト。縁結びや安産のご利益を授けてくれる神様です。
美しい景色の中、山頂にある大室山浅間神社を訪れればそれだけで恋愛運がぐっと上向きそうなそんな良い雰囲気の神社です。
「きれいな富士山」と褒めるのはタブー
絶景の大室山。山頂からは富士山がとても美しく、思わず「きれいな富士山!」と呟いてしまいます。天気の良い日、青空の下にそびえる富士山は日本の誇る絶景中の絶景です。
しかし、誰もが口にしてしまうこの「富士山がきれい」というセリフは大室山ではタブーだといわれているんです。
大室山で富士山を褒めると「小さいながらも不幸なできごとに襲われる」というのはこの辺りの人なら誰もが知っている有名な言い伝え。
姉妹と呼ばれる富士山を褒めてはいけないとは、一体どういうことなのでしょうか?なんとも不思議な言い伝えは、悲しい姉妹の神話と深く関係があります。
その理由は、姉妹の神話が関係している?
大室山浅間神社の御祭神であるイワナガヒメには、とても仲の良い妹がいました。妹はコノハナサクヤヒメといい、富士山にご鎮座する「富士山本宮浅間大社」の御祭神として祀られています。
大室山と富士山にはイワナガヒメとコノハナサクヤヒメの姉妹がそれぞれお祀りされているというわけですね。
ふたりは仲良く暮らしていたのですが、コノハナサクヤヒメがニニギノミコトに一目惚れされお嫁にいくこととなります。
コノハナサクヤヒメは絶世の美女でしたが、イワナガヒメの容姿は醜くお嫁に行けなかったため、父はふたりをまとめてニニギノミコトに嫁がせることに決めました。
ニニギノミコトは一緒に暮らすようになっても美しいコノハナサクヤヒメだけを愛し、イワナガヒメはじっと我慢の日々。苦しい日常を過ごした挙げ句、最後には父の元へと戻されてしまうのです。
こうして姉妹の間には大きな溝ができてしまいました。この神話が元となり、いまでもイワナガヒメの側である大室山で妹のいる富士山のことを褒めると小さな不幸が襲うといわれているのです。
富士山だけでなく、大室山も褒めるべき
悲しい思いをしたイワナガヒメ。その後は「自分と同じ悲しい思いをしないように」と、良縁を授けてくださる神様になったとされています。
しかしきっと心の傷が癒えなかったのかもしれません。また富士山だけを褒められると、少し意地悪をしたくなるのかもしれません。
でも、ついうっかり「富士山きれい」というワードを口にしてしまっても大丈夫。その後に「でも大室山もきれい」というと帳消しになるとされています。
大室山を訪れるときは、ぜひイワナガヒメのことを思い出してくださいね。きっと良縁をさずけてくれるはずです。
また山頂には売店があり、大室山グルメが楽しめます。大きめのお団子が3つ連なった名物の「大室山三福(みつふく)だんご」に加え、ソフトクリームやたこ焼きなど売店の定番商品が並びます。
さらに山頂ではアーチェリー体験ができる施設も。売店で申込みをし、手ぶらで気軽にできます。風のない、天気の良い日に訪れることができたらぜひ体験してみてはいかがでしょう。
今回は富士山の姉妹、大室山をご紹介しました。リフトで気軽に登れる大室山は、体力に自信がない方でも安心して出かけられます。パワースポット大室山で過ごす一日はリフレッシュにぴったりですよ。
- ※初出:2023/05/26・TRiP EDiTOR
- ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
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