カートに入れてすぐ決済。ほしいものは決まっているから、最短ルートで手に入れたい。
そう思って開いたはずのECサイトで、気づいたら1時間が経っていた。買うつもりのなかったものが、なぜか3つも画面に並んでいる。
オンラインショッピングをしていると、「つい時間を無駄にしてしまった」と感じる人も少なくないのではないでしょうか。でも本当は「無駄」ではないのかもしれません。
株式会社システムリサーチが運営する「創作品モールあるる」が、全国20〜59歳の男女を対象に実施した「ECでの買い物の価値」に関するアンケート調査。
そこから見えてきたのは、私たちがオンラインショッピングに対して抱いている「意外な本音」でした。
タイパ(タイムパフォーマンス)重視と言われる時代に、それでも「探して選ぶ時間」に価値を見出す人が確かに存在しています。
今回はその調査結果をひもときながら、現代のEC体験の本質に迫ってみたいと思います。
ECでの買い物はただただ“便利”なだけじゃない
まず前提として確認しておきたいのが、「そもそもオンライン購買が楽しいと感じることがあるか」という問いへの回答です。
調査によれば、「よくある」と答えた人が21.0%、「ときどきある」が52.0%。合計で73.0%の人が「ECの買い物に楽しさを感じている」と回答しました。
これは、実はけっこう大きな数字なのです。
ECと聞くと、「必要なものを効率的に買う場所」というイメージを持つ人も多いはず。でも実際には、7割以上の人がそこに「楽しさ」を感じています。
つまり、ECはすでに単なる購入の手段を超えて、何らかの「体験の場」として機能しているということを、この数字は示しています。
では、その「楽しさ」の正体は何なのか。ここからが、この調査の本当に面白いところです。
やっと出会えた。オンラインショッピングで幸福を感じる瞬間
「オンラインショッピングをする際に楽しい・うれしいと感じる理由は何ですか?」という問いに対して、上位に並んだのは次の3つでした。
- 1位:ほしい商品を見つけられた/61.0%
- 2位:比較しながら選ぶ時間/52.1%
- 3位:商品を探す時間/50.0%
1位の「ほしい商品を見つけられた」は、まさに「これだ!」という瞬間の喜びです。
ずっと探していたものにやっと出会えた感覚、あるいは「こんなのあったの?」という予想外の発見。それを表現したのがこの回答ではないでしょうか。
2位の「比較しながら選ぶ時間」も、多くの人に共感されやすい感覚のはず。
同じような商品が複数並ぶ中で、「どれがいちばん自分に合っているか」をじっくり検討する時間。これが「面倒なプロセス」ではなく「楽しい時間」として認識されているという事実は、注目に値しますよね。
そして3位の「商品を探す時間」は、最もシンプルで、ある意味もっとも本質的な答えかもしれません。
目的の商品に向かって画面をスクロールし続けるその過程そのものに、楽しさがある。宝探しのような感覚と言えば、わかりやすいでしょうか。
この3つに共通しているのは、「購入する前のプロセス」であること。
決済ボタンを押す瞬間でも、荷物が届いたときでもなく、探して、比べて、見つけるまでの時間にこそ、ECの楽しさが宿っているということです。この調査は、そんな事実を浮き彫りにしています。
「これだ」と思った瞬間が、いちばん気分が上がる
オンラインショッピングをするうえで、さまざまな理由で幸福を感じていることがわかりましたが、「オンライン購買で最も気分が上がる瞬間」についても質問。その結果、堂々の1位に選ばれたのは「ほしいものを見つけたとき」(39.7%)でした。
この回答は、先ほどの「楽しさの理由」でも1位だった「見つけられた」という体験と完全に一致していますよね。ECにおける喜びと満足の頂点は、どちらも「発見の瞬間」に集中していることが明らかになりました。
これは考えてみれば、とても人間らしい感情ではないでしょうか?
ずっと探していたものに出会えたときの「やっと見つけた!」という高揚感。自分でも存在を知らなかったものが「これ、まさに自分がほしかったやつ!」に変わる瞬間。
そこには、購入するかどうかに関係なく、純粋な喜びがありますよね。
ECサイトは単なる「お店」ではなく、出会いの場。この質問を通して、その出会いに最大の価値を見出している人が、これだけ多くいるという現実が見えました。
それを知ると、スマホを手にしてついつい時間を使ってしまう自分のことを、少し優しく見てあげたくなっちゃいますね。
「早く買いたい」vs「選ぶ時間を楽しみたい」。あなたはどっち?
とはいえ、現実問題として「タイパ」の重要性は無視できません。忙しい毎日の中で、買い物に何時間もかけていられないと感じている人もいるのではないでしょうか。
そこで、「あなたのオンライン購買のスタイルに近いもの」について質問してみたところ、気になる回答は、まさにその二極化を映し出すものでした。
- 1位:ほしいものはなるべく早く買いたい/38.1%
- 2位:選ぶ・探す時間も楽しみたい/34.8%
- 3位:そのときによる/27.1%
最多は「早く買いたい派」でしたが、その差はわずか3.3%。「選ぶプロセスを楽しみたい派」が肉薄しているのです。
「タイパ時代だから、みんな効率重視でしょ」と思っていたとしたら、それは少し思い込みかもしれません。実際には、約3人に1人が「選ぶ時間そのものに価値を感じている」ということです。
この二つの価値観は、どちらが正しいというものではありません。
「早く買いたい日」もあれば、「じっくり選びたい気分の日」もある。そのどちらもが、オンライン購買の「楽しみ方」として同等に支持されているという事実は、ECというプラットフォームの奥行きの深さを感じさせてくれます。
「タイパ」が求められている今でも、楽しみ方は変わらない
では、「探す・比較する時間」についてはどのように感じているのでしょうか?「時間の無駄」として感じる人が多いのでしょうか?
「オンライン購買で探す・比較する時間について、どう思いますか?」という問いへの回答は、予想を超えるものでした。
- 「買い物の楽しみの一つだと思う」/35.4%
- 「どちらかといえば楽しみだと思う」/31.5%
合計で66.9%もの人が、「探して比較する時間」を楽しみとして前向きに捉えているのです。反対に、「短いほうがいい」「無駄だと思う」という否定的な回答はごく少数にとどまっています。
この結果は、冒頭の問いへの答えでもあります。
気づいたら1時間が経っていた。それは本当に「無駄な時間」だったのか?3人に2人の回答は、「必ずしもそうとは言えない」と語っています。
探し、比べ、迷い、選ぶ。そのすべてが、買い物という体験の一部として受け入れられているのかもしれません。いや、むしろそこにこそ価値があると感じている人が、7割近くいるのです。
「タイパ」という言葉が広まっても、人間の本質的な感情はそう簡単には変わらない。この数字は、そんなことを教えてくれているようにも感じますね。
「早く買う価値」と「自分で見つける価値」。どちらも本物だという話

image by:Unsplash
今回の調査全体を振り返ると、一つの大きな構図が浮かび上がってきます。
「なるべく早く買いたい」という即時性の価値と、「探して見つける体験」という探索の価値。この2つは対立するものではなく、現代の生活者が状況や気分に応じて使い分けている、同等の「EC体験の価値」だということです。
用事があって急いでいる日は、最短で目的の商品にたどり着きたい。でも時間のある休日や、何かを探している気分のときは、じっくりと画面をスクロールしながら、まだ見ぬ「出会い」を楽しみたい。
どちらのスタイルも、間違っていない。どちらの時間も、無駄じゃない。この調査が教えてくれるのは、そういうことではないでしょうか。
まとめ
今回の調査で明らかになったのは、ECの買い物体験の楽しさと満足の中心が「購入の瞬間」ではなく、「探して・比べて・見つける」というプロセスにあるという事実です。
7割以上がECに楽しさを感じ、楽しさの理由の上位はすべて「探索行動」に関するもの。気分が最も上がる瞬間は「見つけたとき」であり、探す・比べる時間を楽しみだと感じている人が3人に2人にのぼる。
これらのデータが語るのは、私たちが「買い物という行為」に求めているのは単なる効率だけではない、ということです。
「これだ」と思える何かに出会いたい。自分で探して、自分で選んだという実感がほしい。誰かに決めてもらうのではなく、自分の目と感覚で「いいもの」を見つけたい。
そんな、ちょっと地味で、でもとても大切な欲求が、デジタルの時代になっても変わらずに存在しているということですね。
次にECサイトで気づいたら時間が経っていたとき、少し思い出してみてください。それはきっと、あなたが「見つける喜び」を本能的に求めていた時間なのかもしれません。


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