「結婚したいけど、お金のことを考えると不安…」「相手に求める条件って、昔とは変わってきている気がする」。そんな声が、今の若い世代から聞こえてきそうです。
値上げのニュースが日常になり、将来への見通しが立てづらい令和の時代。結婚という人生の大きな選択を前に、Z世代は何を考え、何を大切にしようとしているのでしょうか?
AI家計簿アプリ「ワンバンク」広報事務局が、結婚願望のある23歳~31歳のZ世代の男女1,322名を対象に実施した「Z世代の結婚観とお金に関する意識調査2026」。
この調査からは、物価高という厳しい現実と向き合いながら、現実的かつしなやかに未来を設計しようとする若者たちの姿が浮かび上がってきました。
今回は、この調査データを紐解きながら、令和時代の「結婚」と「お金」の新しい関係について考えていきたいと思います。
結婚は「気持ち」だけでは語れない。物価高が与えた変化
まず注目したいのが、物価高騰が結婚観そのものに与えている影響の大きさです。調査では、結婚願望のあるZ世代に対し、昨今の物価高騰によって「結婚観に変化があったか」を尋ねています。
その結果、「かなり変化があった」と答えた人が15.4%、「やや変化があった」と答えた人が42.4%。両者を合わせると、実に57.8%が「結婚観に変化があった」と回答しました。
過半数を超える若者が、物価高をきっかけに結婚への向き合い方を変えている。これは見過ごせない数字です。
恋愛感情やフィーリングといった「気持ち」だけでは語れない、もっと地に足のついた現実的な視点で、結婚を捉え直している人が増えているのでしょう。
かつての結婚が「好きな人と一緒になりたい」という想いを軸に語られていたとすれば、今は「この人となら、厳しい時代でも生活を成り立たせていけるか」という視点が加わっているのかもしれません。
決して夢がなくなったわけではなく、むしろ夢を現実のものにするために、堅実な土台を求めるようになった。そんな変化が読み取れます。
求められるのは「高収入」より「安定した収入」
では、結婚観はどのように変わったのでしょうか。最初の大きな変化は、結婚相手の男性に求める「収入」のかたちです。
1980年代のバブル時代、女性が結婚相手の男性に求める理想として「3高(高学歴・高収入・高身長)」という言葉が流行したことを覚えている方もいるかもしれません。
華やかな時代を象徴するこの価値観が、今どう変わっているのでしょうか?同調査では、結婚観に変化があったと答えた女性に、将来の結婚相手に「年収の高さ」を求めるかを尋ねました。
その結果、「非常に当てはまる」14.4%、「やや当てはまる」58.3%を合わせて、72.7%もの女性が「年収の高さ」を求めると回答しています。やはり収入は大切な要素であり、これ自体は決して低い数字ではありません。
ところが、もう一つの質問に対する回答が、現代の価値観の変化を鮮やかに映し出しています。「どんな環境でも安定した収入が得られること」を重視するかを尋ねたところ、「非常に当てはまる」20.4%、「やや当てはまる」56.9%を合わせて77.3%と「年収の高さ」を上回る結果となりました。
この数字の差が示すのは、単に収入が「高い」ことよりも、「不況や環境変化に強い、揺るがない収入」がより強く求められているという事実です。
一時的に高い給料をもらえても、景気が悪化すれば真っ先にカットされてしまうかもしれない。それよりも、どんな時代になっても着実に稼ぎ続けられる力のほうが頼もしいですよね。
リストラや業績悪化のニュースを身近に感じ、終身雇用が当たり前ではなくなった時代を生きるZ世代らしい、現実的な判断だと言えるのではないでしょうか。
きらびやかな「収入の高さ」ではなく、地に足のついた「収入の安定」。これこそが、令和の結婚相手に求められる新しい基準なのかもしれません。
Z世代が描く新しい夫婦像『3共』とは?

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そしてもう一つ、調査から浮かび上がってきたのが、Z世代が現実的に「想定」する夫婦像の新しい基準です。それが『3共(共働き・共有・共同)』です。
かつての「3高」が女性が男性に求める一方的な条件だったのに対し、「3共」は二人で協力して人生を築いていくという、対等なパートナーシップの発想が根底にあります。
それではここからは、この『3共』を一つずつ詳しく見ていきましょう。
3共その1 .「共働き」
まず一つ目の「共」は、「共働き」です。
将来の結婚生活でどのような働き方をしたいかを尋ねたところ、「夫婦ともにフルタイムで働く」と回答した人は、男性で72.0%、女性で68.5%にのぼりました。男女ともに7割前後が、二人ともフルタイムで働くことを希望しているのです。
さらに視野を広げてみると、その傾向はより鮮明になります。
「夫婦ともにフルタイムで働く」70.2%に加え、「一方がフルタイム、一方が時短やパート等で働く」28.1%を合わせると、なんと98.3%。ほぼすべてのZ世代が、何らかの形で「共働き」を前提として将来を描いているということになります。
かつては「男性が稼ぎ、女性が家を守る」という性別役割分担が一般的だった時代もありました。しかし、今の若い世代にとって、専業主婦・専業主夫という選択肢はもはや「標準」ではなくなっているのでしょう。
物価が上がり続け、一人の収入だけで家計を支えるのが難しくなった現実。そして、女性も自分のキャリアを大切にしたいという価値観の浸透。その両方が、この圧倒的な共働き志向の背景にあるのだと考えられます。
二人で働き、二人で支える。それが、Z世代にとっての当たり前のスタートラインになっているのです。
3共その2. 「共有」
二つ目の「共」は、「共有」です。これは、結婚前にお金に対する価値観やルールを互いに分かち合っておきたいという意識を指します。
まず、結婚する前に「お金に対する価値観や金銭感覚が自分と合っているか」を重視するようになったかを尋ねたところ、男性では「非常に当てはまる」23.8%、「やや当てはまる」43.0%を合わせて66.8%。女性では「非常に当てはまる」25.9%、「やや当てはまる」52.8%を合わせて78.7%が「当てはまる」と回答しました。
男女ともに高い数字ですが、特に女性のほうが金銭感覚の一致を重視している様子がうかがえます。
次に、結婚前に「家計管理のルールや分担について具体的に話し合っておきたい」と思うようになったかを尋ねた質問では、男性70.1%(非常に18.7%・やや51.4%)、女性79.2%(非常に21.3%・やや57.9%)が「当てはまる」と回答。
漠然と「なんとかなるだろう」ではなく、具体的なルールを事前に決めておきたいという、計画的な姿勢が見て取れます。
さらに踏み込んで、結婚前に相手の「貯金額」や「借金の有無」を正確に把握しておきたいかを尋ねた質問では、Z世代全体で73.5%(男性66.9%、女性80.1%)が「当てはまる」と回答しました。
女性の8割が相手の懐事情をクリアにしておきたいと考えているというのは、ある意味でとてもシビアな結果です。
これらの数字が物語るのは、お金に関する「見て見ぬふり」をしないという姿勢です。
結婚生活が始まってからお金のすれ違いに気づいて後悔するのではなく、スタートを切る前に互いの価値観をオープンにして、しっかりすり合わせておきたい。
物価高という厳しい現実が、若者たちに「お金の話をタブーにしない」という新しい誠実さをもたらしているのかもしれません。
3共その3.「共同」
三つ目の「共」は、「共同」です。これは、結婚後に資産形成や家計を二人で協力して行いたいという意識を表します。
まず、結婚後にパートナーと協力して資産形成(新NISA等)に取り組みたいかを尋ねたところ、男性では「非常に当てはまる」24.8%、「やや当てはまる」50.0%を合わせて74.8%。女性では「非常に当てはまる」25.5%、「やや当てはまる」51.4%を合わせて76.9%が「当てはまる」と回答しました。
男女ともに7割を超え、新NISAのような資産運用を「二人で取り組むもの」と捉えている様子がうかがえます。
お金を貯めるだけでなく、増やすことにも二人で向き合いたい。投資が身近になった時代ならではの、前向きな協力意識と言えるでしょう。
そして、理想とする「夫婦の財布の形」を尋ねた質問では、興味深い結果が出ました。
「【一体型】夫婦が全収入を持ち寄った上で生活費等を払い、個人の支出もそこから払う」が27.4%、「【拠出型】夫婦が収入から一定額を出し合った上で生活費等を払い、残りの自分の収入を各自管理」が38.8%。この二つを合わせた66.2%が、生活費を二人で出し合う「共同財布」派であることがわかりました。
一体型と拠出型では、お金の管理方法に違いがあります。
一体型は文字通りすべてを一つにまとめる方式で、家計の透明性が高い一方、個人の自由なお金は少なくなります。
拠出型は共通の支出だけを出し合い、残りは各自が管理する方式で、二人の協力と個人の裁量のバランスが取れています。
拠出型のほうがやや多いという結果は、「二人で支え合いたいけれど、自分のお金もある程度は自由に使いたい」という、現代的なバランス感覚の表れなのかもしれません。
いずれにせよ、家計を「どちらか一方に任せきり」にするのではなく、二人で出し合い、二人で運営していく。この「共同」の発想が、Z世代の理想の家計像になっているのです。
専門家が読み解く「婚前家計管理」という新しい鍵
こうした調査結果について、AI家計簿アプリ「ワンバンク」のリサーチャーであり、株式会社スマートバンクのUXリサーチャーを務める瀧本はろか氏は、物価高時代を生き抜くZ世代の結婚観が『3共』へと向かっていると指摘。
そして、結婚前からの「婚前家計管理」が、協力して歩む夫婦関係を築く鍵になると語っています。
瀧本氏によれば、かつて理想とされた「高収入」よりも、どんな環境でも揺るがない「安定した収入」が求められるようになった背景には、先行きが不透明な時代において経済的な不安を最小限に抑え、現実的に生活を成り立たせたいという切実な思いがあると考えられるといいます。
特に注目すべきは、結婚する前からお金の価値観やルールを「共有」し、結婚後は生活費や資産形成を「共同」で行いたいという意識の高さだと瀧本氏は述べます。
結婚生活がスタートしてからお金のすれ違いに気づくのではなく、事前に価値観をオープンにしてすり合わせておくことが、安定したパートナーシップに不可欠だと捉えられているのでしょう。
実際に、ワンバンクの共同口座「ペアカード」を利用するZ世代ユーザーの約5割を、交際・同棲中のカップルが占めているというデータも紹介されています。
結婚を迎える前からペア口座を活用して『婚前家計管理』を実践し、日常的に金銭感覚をすり合わせながら協力体制を築こうとする。これはまさに、Z世代の新しい価値観の表れだと言えるでしょう。
一方で、瀧本氏は共働きが当たり前になることで生じる新たな悩みにも触れています。
それぞれの収入をどう家計に反映させるか迷う人は多く、必要な分だけ出し合う家庭では、支払いのたびに話し合いが必要になり「話し合いに疲れてしまった」という声も聞かれるといいます。
だからこそ、結婚を見据えた早い段階からアプリなどのデジタルツールを活用し、無理なく二人でお金を管理・共有できる仕組みを作ること。それが、お金への不安を取り除き、将来に向けて協力し合える夫婦関係を築くための第一歩になるとまとめています。
まとめ
バブル時代の「3高(高学歴・高収入・高身長)」が、男性に求める一方的な「条件」だったのに対し、令和のZ世代が描く「3共(共働き・共有・共同)」は、二人で協力して人生を築いていくという「姿勢」を表しています。この対比こそが、時代の変化を象徴しているのかもしれません。
物価高という厳しい現実は、若者たちから夢を奪ったのではなく、むしろ夢を確かなものにするための「現実的な知恵」を授けたのではないでしょうか。
相手に安定を求め、結婚前にお金の話をオープンにし、二人で家計を運営していく。それは決して打算的なのではなく、「この人と長く幸せに暮らしていきたい」という願いの、最も誠実な形なのだと思います。
お金の話を避けて通れない時代だからこそ、その話し合いから逃げずに向き合う。そんなZ世代の姿勢には、世代を問わず学べるものがあるはずです。
結婚を考えている方も、すでにパートナーと暮らしている方も、改めて「お金の価値観」について話してみる。それが、これからの時代を二人で歩んでいくための、小さくて大きな一歩になるのかもしれません。


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