夏休みが来ると、子どもたちはうれしそうな顔をする。でも、その長い休みの裏側で、「今日のお昼、どうしよう」と静かに頭を抱えている親がいることを、どれだけの人が想像できるでしょうか。
学校がある日なら、給食がある。栄養バランスが考えられた温かい食事が、当たり前のように子どもの前に並ぶ。
けれど、その「当たり前」が止まる長期休み中、一部の家庭では子どもの食事が大きく揺らいでいるのです。
今回は、認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンが、フードバンク「グッドごはん」を利用する低所得のひとり親家庭1,388名を対象に実施した調査をもとに、長期休み中の子どもの食事のリアルに迫っていきます。
数字の向こうにある一人ひとりの生活を、一緒に考えてみませんか。
給食が消える夏、食事回数は「約3倍」減少

image by:認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン(via PR TIMES)
まず衝撃的なのが、長期休み中に1日2食以下になる子どもの割合が、学校がある時期と比べて約3倍に増えるという調査結果です。
普段であれば朝・昼・晩と3食を食べている子どもたちが、長い休みに入った途端、1食、あるいは2食で1日を過ごしている。
この事実だけでも、給食という制度がいかに大きなセーフティネットとして機能しているかがわかります。

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では、なぜ食事の回数が減ってしまうのでしょうか?
理由として最も多かったのは、「経済的に余裕がなく、家庭で十分な食事を用意することが難しいため」で約4割。続いて「子どもの生活リズムが崩れるため」が約3割でした。
つまり、お金の問題と生活リズムの問題が絡み合って、子どもの「食べる」という行為そのものが不安定になっているということ。
これは個々の家庭の努力だけでは、どうにもならない構造的な課題だといえます。
長期休みに広がる「孤食」はなんと5割超

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食事の回数だけではありません。もう一つ深刻な問題があります。それが、子どもだけで食事をとる「孤食」です。
調査では、長期休み中に近くに見守る大人がいない環境で子どもが一人、またはきょうだいだけで食事をとる頻度について、「ほぼ毎日」が最も多い回答となりました。
「週に4〜5日程度」と合わせると、実に5割以上の家庭で、週の半分以上にわたって子どもだけの食事が発生しています。
そして、その時間帯は約9割が「昼食」に集中していました。
つまり、学校がある日なら給食で温かいごはんを友だちと一緒に食べていたはずの時間に、子どもが一人でテーブルに向かっている。
そう考えると、この問題の輪郭がより鮮明に見えてくるのではないでしょうか。
さらに注目すべきは、1日のうち複数回にわたり子どもだけで食事をとるケースが5割近くに達している点です。
孤食は昼の一回だけではなく、朝や夜にも広がっている家庭があるのです。
孤食が子どもにもたらすもの

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子どもだけで食事をとる頻度が高い家庭では、食事回数が「減少」する割合が高く、その一方で「増加」する割合も高いという、一見矛盾した結果が出ています。これは何を意味しているのでしょうか。
要するに、食事の回数やタイミングが「安定しない」ということです。
大人の目が届かない中で、食べたり食べなかったりという不規則な状態が日常化してしまう。この「不安定さ」こそが、孤食の本質的なリスクなのです。
実際に、保護者が感じている困りごとを見ていくと、その深刻さがより伝わってきます。
1位 栄養バランスが偏る(約6割)
最も多かったのがこの回答です。
子どもだけで食事をとると、どうしても手軽に食べられるものに偏りがち。カップ麺や菓子パン、お菓子だけで一食を済ませてしまうことも珍しくありません。
親が栄養を考えて野菜やおかずを用意していても、大人がいなければ食べないという声も多く寄せられました。
2位 食事の時間が不規則になる(約6割)
1位とほぼ同率で挙がったのが、食事時間の不規則化です。
朝起きるのが遅くなり、朝食と昼食の境目がなくなる。気づいたら夕方まで何も食べていなかった。
大人がいれば「そろそろごはんにしようか」と声をかけられますが、子どもだけではその歯止めが利きにくいのです。
3位 自分の好きなものばかり食べる
偏食の問題も見逃せません。
親が用意したバランスの良い食事があっても、好きなものだけ選んで食べてしまう。これも「見ている大人がいない」ことで起きやすくなる現象です。
4位 食事を抜く
そして、食事そのものを抜いてしまうケースも一定数報告されています。
一人でいると食欲がわかない、面倒で食べない。子どもの「食べない」は、単なるわがままではなく、孤独な環境が生み出す自然な反応でもあるのです。
自由記述では、「1人でいると、食べる量が減ったり食べなかったりする」「ひとりでの食事はさみしいと言われることがあります」という声も。
子どもにとって食事は、栄養を摂るだけの行為ではなく、誰かと一緒に食卓を囲むという安心感そのものなのだと気づかされます。
なぜ孤食は生まれるのか?保護者の「働かざるを得ない」現実

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ここで「なぜ親が一緒にいてあげないのか」と思った方がいるかもしれません。でも、その疑問を向ける先は、個々の親ではなく社会の構造であるべきです。
調査で保護者の働き方について尋ねた結果、最も多かった回答は「勤務時間を減らすと収入に影響があるため、働く時間を確保する必要がある」で、実に7割にのぼりました。
続いて「勤務する時間帯や曜日を柔軟に調整しにくい」という声が挙がっています。
そして、就労形態を見ると、非正規雇用が5割以上を占めています。非正規雇用の場合、テレワークの対象とされている企業は約3割にとどまるというデータもあり、「家で働く」という選択肢そのものが手の届かないところにあるのです。

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保護者が仕事で家を空ける時間帯は「昼食の時間帯」が約9割。つまり、子どもの孤食が集中する時間帯と、親が働きに出ている時間帯がぴったり重なっているのです。
自由記述からは、こんな切実な声が寄せられています。
「一緒に居られるなら居てあげたいが、食事を用意するためのお金に困っているため休むわけにはいかず、一人にさせてしまう時間が増える」
「休むと仕事をクビになる可能性や生活が出来なくなるので考えられない」
子どもにごはんを食べさせるために働く。でも、働きに出るから子どもが一人でごはんを食べることになる。
この矛盾を、親の努力だけで解決することには限界があります。
使いたいのに使えない…支援へのアクセスという壁

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では、民間や行政が提供する子ども向けの居場所やサービスは活用できているのでしょうか。
子どもの孤食が週1日以上発生している家庭に絞って調べたところ、「利用したいが、ほとんど/まったく利用できない」という回答が最多で、6割近くにのぼりました。
利用できない理由としては、経済的な負担、保護者の時間的制約、そもそも利用できる場所が近くにないといった点が挙げられています。
支援は「存在していれば届く」わけではありません。その支援にたどり着くまでの道のりに、経済的・時間的・物理的なハードルがあるのです。
支援を届けたい側と、届いてほしい側のあいだにあるこのギャップを埋めることが、今まさに求められています。
まとめ
今回の調査から浮かび上がったのは、長期休み中の子どもの孤食や欠食が、家庭の問題ではなく「社会の構造」と深く結びついているという事実です。
保護者は収入を維持するために働く時間を削れない。勤務の時間帯や場所を柔軟に選べない。
その結果、子どもの食事の時間帯に在宅できず、孤食が生まれる。そして孤食が続くことで、栄養バランスの偏りや欠食、生活リズムの乱れが生じていく。
この連鎖を断ち切るためには、個人の頑張りではなく、仕組みの力が必要です。
長期休み中の昼食を支える公的な場の確保、労働時間に依存しすぎない所得支援、そして子育て家庭が柔軟に働ける環境の整備。
どれも一朝一夕にはいかないけれど、どれも目を背けてはならないテーマです。
「うちは関係ない」と思う方もいるかもしれません。でも、給食という一つの制度がなくなるだけで、これだけ多くの子どもの食が揺らぐという事実は、私たちの社会の脆さを映し出しています。
すべての子どもには、安心して十分な食事をとる権利があります。その権利を支えるのは、特定の誰かではなく、社会全体の意識と行動と言えるでしょう。
- source:認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン(via PR TIMES)
- image by:Unsplash
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