宿泊者の7割が外国人の「異常」な宿に日本人も注目し始める
日本人の「暮らし」に触れる旅の形は、クリエイティブな仕事に従事する欧米の人たちを中心に、密かな人気を博し始めました。
口コミが新しい利用者を呼び、利用者評価の最も高い宿にブッキング・ドットコムが贈る賞を、2018年には受賞しています。近年では各メディアも競ってベッド・アンド・クラフトを取り上げてきました。
その「騒ぎ」に、今度は日本の若者が注目します。さつきさんによると、当初の利用者の7割は欧米を中心とする40~50代の外国人でした。しかしその「異常」な宿に泊まってみたいと、今度は日本人の30~40代の若い世代が押し寄せ始めたといいます。
今では繁忙期の4月や8月となると、9割以上、それこそ100%といっていいくらいの稼働率に達するそう。鉄道も走っていない「不便」な立地条件を考えると、信じがたい数字ですよね。
ただ、日本人が増え、日本人と外国人の利用者の割合が半々くらいになった段階で、新しい問題も浮上します。智嗣さんによれば、宿の利用のされ方が望んだ形とは少し異なり始めたのだとか。
ベッド・アンド・クラフトの宿は、住人と旅行者をつなぐハブとして機能しています。あえて素泊まりという形にこだわり、宿泊者には地元の料理屋で食べ、地域の人と交流を持ってほしいと願いました。
しかし、日本人の利用者が増えるにつれ、夜の10時にチェックインして、翌朝の7時に次の目的地に出発するなど、宿を単なる寝床として利用する人が目立ってきます。
そこで次の一手として、まちの中心部にあった空き家をリノベーションし、飲食店『nomi』を併設したラウンジ『BnC LOUNGE』を作って、チェックイン機能を集約化させたのですね(チェックアウトは自由)。
半強制的にチェックイン(BnC LOUNGE)と翌朝の朝食(nomi)で2回、宿泊者がまちなかを歩く時間を作れば、
「旅行者が地元の職人さんと出会うかもしれません」
と、智嗣さんは語ります。井波には200人近くの木彫刻職人が暮らしています。地区の人口は8,000人ほど。住民の40人に1人は彫刻家ですから、あながち職人との出会いは冗談ともいえません。