日本で緊急避妊薬の入手を簡単にすべき理由
日本産婦人科医会の前田津紀夫副会長は、緊急避妊薬の入手が容易になることで「(緊急避妊薬を)使えばいいやという安易な考えに流れてしまうことが心配」という趣旨の発言や「日本では若い女性に対する性教育や避妊などの教育の場があまりにも少ない」という考えを示していたとBusiness Journalなどが報じています。
もちろん、緊急避妊薬を簡単に手に入れることができるようになることで起きる弊害は、ゼロではないかもしれません。「薬が簡単に入手できる環境をつくるより、もっと前段階の教育に力を入れて望まぬ妊娠を防ぐべき」という意見も一理あります。
しかし以下のような理由から、やはり女性にとって、緊急避妊薬の入手が簡単になることによるメリットのほうが多いといえるのではないでしょうか。
妊娠の負担があるのは女性だけ
子育てはパートナーと協力してできますが・妊娠・出産に関しては、その負担を抱えるのは女性だけ。ただでさえ大きな負荷がかかるものなのに、それが望まぬものであったならば、女性の心身の負担は計り知れません。
万が一望まぬ妊娠をした場合、対策のひとつとして中絶手術があります。しかし女性にとって「子どもを堕ろす」という選択や行動を取ることも、決して簡単なことではありません。
「妊娠したかも」と思ってもそのときに何も対策ができず、妊娠が発覚したときに中絶もできない時期になっていれば、女性には出産しか選択肢が残されなくなってしまいます。
望まぬ妊娠が起きてしまった場合、その身体的負担はすべて女性側にかかるのが現実です。女性が自分自身を守るためにも、緊急避妊薬という選択肢が身近にあることは必要だといえます。
受診の心理的ハードルが高い
「妊娠の可能性があるかもしれない」というとき、速やかに医療機関を受診するという行動を取れる女性ばかりではありません。
「かかりつけの婦人科がある」「定期的に通っている」などでない場合はとくに、受診の心理的ハードルは高くなります。
本来はすぐに対処すべきことであり、悪いことをしたわけではないにもかかわらず「怒られるのでは」「理由を詮索されたくない」などと考えてしまって行けない人もいるでしょう。または、受診したいが診療時間内に行くことがむずかしいケースも考えられます。
受診しなくても緊急避妊薬が購入できるようになる、また対面だけではなくインターネットを通じたオンライン診療の普及率が高まれば、女性側の心理的ハードルは、かなり下がります。緊急避妊薬は服用タイミングが重要です。高いハードルに迷う時間を先に削り、まずは薬局で薬剤師さんに相談して迅速に服用し、その後に病院に行くという選択肢があればいいのです。
ただし、生理のタイミングをずらすため、生理痛をやわらげるためなどの理由で低用量ピルの処方を希望する際は、これまでと変わらず婦人科の受診が必要です。