海外との比較
日本では入手のハードルが高くなってしまっていた緊急避妊薬ですが、海外では薬局で販売されていて、受診しなくても購入できるという国も少なくありません。2020年6月時点では、約90カ国もの国で、薬局での入手が可能となっています。
そのほかにも日本と海外では、避妊法などに関してさまざまな違いがあります。
女性側ができる一般的な避妊法としては緊急避妊薬のほかに、毎日服用することで妊娠の確率を下げる「低用量ピル(OC)」がありますが、国連が発表した「避妊法2019」のデータによれば、日本の女性のピル内服率は2.9%。
一方、フランスは33.1%、カナダは28.5%、英国は26.1%、ノルウェーは25.6%、タイは19.6%、米国とカンボジアでは13.7%と、世界と比較するとかなり低い水準となっています。
また、中野司朗レディースクリニックによると、15〜49歳の女性を対象とした避妊法に関する調査結果によれば、ドイツではピルが約8割、フランスでは約6割ともっとも多い方法であるのに対し、日本ではコンドームの利用が約9割となっているようです。
いずれにしてもいまの日本では、女性が低用量ピルの利用による避妊法を選んでいるケースは少ないことがわかります。
「海外のように低用量ピルが定着すれば、望まぬ妊娠を減らせるのでは?」という考え方もできそうですが、現段階での服用率が極めて低い日本では、そう簡単なことではなさそうです。また副作用が出ることもあるため、すべての女性が服用できるわけでもありません。
なお、日本では緊急避妊薬や低用量ピル以外の避妊法として、子宮内に装着するIUD(子宮内避妊具)や「ミレーナ」と呼ばれるIUS(子宮内避妊システム)の利用が可能な医療機関もあります。
ただしIUDやIUSを利用する目的は、基本的には出産経験のある女性が「次の妊娠まで間を空けたい、次回の出産を計画的に考えている」または「もう妊娠を希望していない」などの理由が一般的。そのため、日常的な女性の避妊法として現実的とはいえません。
また現在の日本では利用できないものに、肌に貼るタイプの避妊シール、腕に埋め込むタイプの避妊インプラントのほか、避妊注射などの避妊法も海外には存在しているそうです。