懸命に育児参加していた夫
弘子さんは、「夫は子どものために仕事を休んでくれることは少なかったし、料理洗濯はほとんど私がしていたけれど、育児はよくしてくれたのよ」と話してくれました。
「上の子は小さいころ寝つきが悪く、よく泣く子で。そんなとき、夫がよくドライブに連れて行ってくれて本当に助かったの。私がゆっくり家事をしたり体を休めたり、仕事上必要な勉強ができるようにって、休日は公園やデパートの屋上の小さな遊園地に連れて行ってくれたりね。
何よりも子どもたちのことをよく考えていて、『こんな所に連れて行ってあげよう』『こんな経験をさせてあげたい』といって連れ出してくれたり、学習をサポートしてくれたり。足し算、引き算、かけ算は、夫が百ます計算を作って週末になるとやらせてたのは夫なのよ。
育児本を読んで、『こんなことが書かれていた』『こんな本を読ませるといいらしい』と教えてくれたりもしていたわ。それも押し付けがましくなかったから受け入れられたんだと思うけど」
あの寡黙な正樹さんが?と少し驚きましたが、常に本を携帯し、時間があれば読んでいる正樹さんのその本のテーマが、娘たちの幼少期は育児書だったんだなと思うと、ほんのり温かさを感じました。
何より、「育児は妻の仕事」と任せっぱなしにせず、できる限りの育児参加をしている夫に、妻は感謝こそすれ、不満は抱かないのかもしれません。
フルタイムで働きながら家事や育児をこなす母親のなかには、「子どもの教育や遊びに付き合っている時間がない」という悩みを抱く人もいます。
料理や洗濯は不得意でも、そうした「遊び」や「学習」の部分を正樹さんが担い、妻の手が回らない部分をカバーできていたからこそ、弘子さんは「またこの人と結婚したい」という気持ちを持つことができていたのかもしれません。