若い世代のみなさんのカウンセリングをしていると、人生の節目の時期に、不安や恐れの大きな波に飲まれてしまう人が多いことに気がつきます。
たとえば、大学を卒業して社会人になるというときや、結婚が決まり挙式が近づいてきたというときなどに、情緒不安定になったり、未来に対する不安が湧き上がってきたりするわけです。
あるいは、結婚生活はよくても、「そろそろ子どもでも…」というときに大きな恐れに襲われて、心身のバランスを崩してしまうような人もしばしば見られます。このような人々の多くには、ある共通した深層心理があるようです。それは、「大人になること」への不安と恐れです。
「ものすごく苦労した親」を持つケース
そして、こうした人々とお話を進めていくと、「ものすごく苦労した親」、あるいは「素晴らしすぎる親」をおもちになっていることがよくあります。
「ものすごく苦労した親」をもつ子どもたちは、「大人になるということは、両親と同じぐらい苦労しなければならないということだ」、「苦労するのが大人というものだ」と親を見て学習し、思い込んでいます。
苦労した両親というのは、必ずといっていいほど、「子どもにはこんな苦労はさせたくない」と思うものです。そのため、大小の差はありますが、子どもたちには厳しく、過干渉になりがちです。
そして、厳しく育てられたがゆえ、「いつか自分もあの厳しく、つらい大人の世界に入らねばならない」と子どもたちは思います。
大人の世界に入ること、それはとても過酷なことだと思うわけです。その過酷な大人になる最初の儀式が、社会人になるということですね。
また、結婚するときなどは、「おまえも結婚するのだから、もういいかげんな生活はしていられないぞ」などといわれがちですよね。
お友だちからは、「結婚したら好きなことができなくなるから、独身最後に旅行しようよ」などといわれることもあるのではないでしょうか。
そして、ダメ押しとでもいえるプレッシャーが、子どもをもち、親になるというときにやってきます。いままでラクをしてきたぶん、これからはまるで修行僧になるがごとく、「子どものために、質素な暮らしをしなければならない」などと思うわけです。すると、心はどんどん憂うつになっていきますね。
「素晴らしすぎる親」を持つケース
一方、「素晴らしすぎる親」をもつケースでは、父親が素晴らしく、母親はダメだったり、その逆だったりすることがよくあります。そんなとき、子どもはダメなほうの親を責めていることが多く、その親を責めている度合いだけ、「立派なほうの親のようにならないかぎり、世界中の人が私をバカにする」と感じがちです。
そして、「そんな立派な人に私はなれない」と思うことで、不安や恐れに飲み込まれてしまうわけです。この考えかたのすべての土台にあるのは、完ぺき主義です。
それによって、「自分は不完全である」という信念が作り出されてくるのですが、この考え方をするのは、一般に男性よりも女性のほうが多く、「エレクトラ・コンプレックス」とよばれたりもします。
このようなケースでは、まず、「親は素晴らしい、私はダメ」という概念を崩す必要があります。そのためには、両親を「素晴らしすぎる存在」として崇めるように見るのではなく、もっと人間扱いして、等身大で見る必要があります。
たとえば、ご両親にもあなたと同じような恐れや不安があるのだという話、あなたと同じようななまけ者の一面もあるという話を聞いてみるのもいいでしょう。
また、ご両親にかぎらず、あなたが尊敬する先輩のダメダメ話などを聞いてみることもおおいに助けになるはずですよ。
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