何度も同じことを聞かれたときの対応法とは?
では、何度も同じことを聞かれたら、どのように対応すればよいのでしょうか?
講演会やネットで紹介される対処法は、「はじめて聞いたかのように対応する」「おだやかにかつ丁寧に話を聞いてあげる」などです。
しかし、数回はそのような対応ができても一緒に暮らす家族にとって毎日同じ話を聞かされたり、同じことを聞かれるのはストレスが溜まりますよね。
一つの対策として私が試したのが、ホワイトボードなどを活用して文字で見てすぐわかるようにすることです。
ホワイトボードを100円ショップで買って、母が暮らす高齢者住宅の部屋の目立つ場所に設置しました。母はテレビをみて過ごすことが多いので、現在はテレビの隣に置いてあります。
母から電話がかかってきたら「きょう、(私は)来るの?」の質問に対して「きょう私は来ない、今度行くのは○月○日」とホワイトボードに書かせるようにしました。
このように視覚的にわかるようにすることで、再度母から電話がかかってきたときに「ホワイトボードに書いてあるから見て」と答えるだけですむようになったのです。
また、これは認知症のどの症状についてもいえることなのですが、「認知症だからしょうがない」とある程度割り切って考えることも必要です。
母が、同じことを繰り返し聞くのも、言ったことをすぐに忘れてしまうのも認知症だから仕方ないことだと。そう思うことにしたのです。
何度も同じことを聞かれると「さっき聞いたばかりじゃない!」「同じこと何度も聞かないで!」と言ってしまいがち。私も最初は、同じことを繰り返し聞く母に対して、何度も同じことを聞いているという状況を言い聞かせようとムキになっていました。
しかし認知症の人は、「同じことを聞いている」「同じ話をしている」という自覚がないので、本人を責めたり、否定するような言い方をされると不安に感じます。
そんなときは、「認知症だから仕方がない」と割り切って接することで気持ちが少し楽になります。
認知症だとわかっていても繰り返される質問にイライラ…
同じことを聞かれたときの対応方法として、「認知症だと割り切って対応するのも大切」「否定するような言い方はよくない」とお伝えしましたが、さすがに何十回も続くと聞く側も限界を感じることもありますよね。
松本診療所ものわすれクリニック院長・松本一生先生の臨床観察によると、どんなに熟練した聞き手ののプロでも、ある回数以上同じことを聞かれると過度なストレスになることがわかったそうです。それが、5回なのです。(参考:けあサポ)
松本一生先生は、認知症患者に「5回以上同じことを聞かれたら、指摘してもよい」と言っています。
同居して認知症家族の介護をしている方のなかには、何十回と同じことを聞き返されて疲弊している方も多いはず。介護する側の心が疲弊しないためにも、5回以上同じことを聞かれた場合には「その話はさっきもしたよ」とやんわりと伝えましょう。
けして怒った口調ではなく、おだやかに…
「5回以上同じこと聞かれたら指摘してもいい」という目安ができれば、介護する側の負担も少しは軽減するのではないでしょうか。
しかし、あまり厳密に「1回、2回…」とカウントし過ぎるとかえってストレスに感じてしまうので、ある程度同じ話をされたら、やんわり指摘してもよいと覚えておくとよいでしょう。
認知症家族の介護をしていると「認知症だからしょうがない」と思っていても、忙しいときや余裕がないときはイライラしてしまうこともあるかと思います。そんなときは、自分を責めないようにすることも大切です。
今回は、「同じ話を繰り返す」「同じことを何回も聞く」の対応法についてお伝えしました。「ある程度同じことを聞かれたら、指摘してもよい」と思っておくと気持ちが少し楽になるのではないでしょうか。この記事が少しでも参考になれば幸いです。
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