フロントにわざわざ電話して聞いた、恥ずかしい質問
一番困ったのは、このリゾートで開催されるガーデンパーティーにお誘いされたとき。
ある日、部屋にフロントから電話がかかってきて、「きょうは宿泊ゲストを招いてガーデンパーティがあるから来ませんか?」というお誘いを受けました。
ちょうどその日の夕飯をどうしようかと話していたので、パーティで何かつまめるならそれでいいかなと思い、夫にそのことを話しました。
すると夫は、「予約はいるのか?」「ご飯は出るのか?」「どんなものが出るのか?」と矢継ぎ早に聞いてきます。
わたしの頭のなかでは、高級リゾートのパーティーで、予告なく料金がかかるというのも考えにくいですし、当然サービスの一環で行われるものだろうし、お誘いが来ているのだから自由参加だろうし、しっかりした食事かどうかはわからないけれど、そりゃあドリンクや軽食はふるまわれるでしょうと思ったのですが…。
「夫が聞いてほしいというのだから、一応聞いてあげないといけないのかな」と思ってフロントに再度電話し、予約の有無や食事について聞きました。
するとわたしの想像通り、予約フリーで、軽食やドリンクがふるまわれますとのことだったので、そのことを夫に伝えました。
すると夫はさらに質問を投げかけてきたのです。それは「それってタダなの?」という質問!
フロントから電話を受けた限り、「とっても素敵なパーティーだから、ぜひどうぞ」というサービスが前提のようなフレンドリーな誘いだったし、こんな高級リゾートで無許可にサービス料金を取るような勧誘をするとは思えないしで、「さすがにタダなんじゃない?」と夫に答えましたが、わたしの想像でしかないので確実性はありません。
そう言われてしまうと、「たしかに高級リゾートでは当然のように加算されるサービスがあるのかも?」と思ってしまい、だんだん心配になってきました。
けれどせっかくこんな素敵なリゾートで、素敵なガーデンパーティーの誘いを受けたのに、「それって無料ですか?」という貧乏くさい質問をわざわざフロントに電話するなんて、すっごくイヤでした。
「自分で聞いてよ」と言いたいところですが、夫は英語がまったく話せないので、わたしが聞くしかありません。
恥ずかしい気持ちを抑えてまたフロントに電話し「それって…お金かかりますか?」と聞きましたよ、ええ。
するとスタッフは明るい声で「当然無料だから、気軽に来てくださいね!」と言ってくれました。ほら、だから言ったでしょ!高級リゾートはケチ臭いことしないんだから!
すると夫は急に乗り気になり、夜はそのガーデンパーティーに参加することにしました。
広い敷地にたくさんの食事が用意され、ビール、ワイン、シャンパンなどがふるまわれます。日本人ゲストが多いせいか、寿司ロール的なものもふるまわれ、夫はすっかりご機嫌で、あれこれじゃんじゃん食べてました。
セールに来たおばちゃんじゃないんだからと思いつつ、わたしはわたしで別のゲストとお話ししたりその時間を楽しみました。
けれどこのパーティーの通訳で、なんだか夫の通訳をするのにちょっと疲れてしまいました。
そこから、「英語が話せないと言ったって、わたしがいるから甘えているだけで、カタコトの英語くらいは話せるでしょ。自分でできることは何とかしてよ」と思い始めて。
翌日。疲れて寝ていて、まだウトウトとベッドにいたわたしですが、もともと早起きの夫は朝からリビングルームでコーヒーを飲みたかったようです。
ですが昨晩コーヒーマシンが壊れていることに気づき、明日直してもらおうと話していたところ。フロントに連絡して、朝見に来てもらうように伝えてありました。
けれど早朝に起きてしまい、スタッフが来るのを待てない夫。まだベッドにいる私に夫が「コーヒーマシン壊れてるんだけど、フロントに言ってくれないかなぁ」と話しかけてきたのですが、「ええい面倒くさい!コーヒー飲まなくても死なないだろ!そんなものは自分で頑張れ」と寝たふりを決め込みました。
もしわたしがいなかったら、夫はどうするのか試してみたかったのです。
すると、いいタイミングでスタッフが部屋に来てくれました。わたしが起きて行こうかと迷いましたが、夫一人でできるか様子を見たくて、タヌキ寝入りを決め込み、耳をそばだてました。
すると夫は、バリバリの日本語で「あのさぁ、コーヒー飲みたいんだけど、壊れちゃってるんだよねー」とマシンを指さして現地スタッフに話しかけていました。
純度100%の日本語ですが、コーヒーマシンを指さして話しているし、前日にフロントに伝えてあったこともあり、スタッフは「Oh,OK」といって、コーヒーマシンをチェック。
10分ほど何がおかしいのかチェックしている間も夫は「ここが変かなぁと思ったんだけど、違うのかな?」と現地スタッフにバリバリ日本語で話しかけています。
なんだかんだでマシンが直ったようで、「これで飲めます」とスタッフが言うと、「ああ、よかった、ありがとね」と最後まで純度100%の日本語でコーヒーメーカーのトラブルを解決しました。
いやサンキューくらい言えるでしょというツッコミをしながら、タヌキ寝入りをやめてリビングに出て行きましたが、あのときの堂々とした日本語は忘れられません(笑)。
これで夫は本当に一言も英語を話さないんだということがハッキリしたので、やはりわたしが通訳してあげなくちゃいけないんだなとわかり、残りの滞在も英語の勉強だと思って、通訳ガイドを頑張りました。
新婚旅行はタヒチという場所、そして高級リゾート、すべてが素晴らしくて最高の思い出になりましたが、それと同時に、やっぱり英語力ゼロの人と行くと、かなり疲れるということがわかりました。
それ以降、サイパンなど日本語が通じるところには行ったけれど、やはり自分も大変な思いもするし、夫は夫で言葉が通じない場所は不安だということで、旅行は国内がメインになりました。
そんなわたしたち夫婦ですが、お互い年を取り、あれから17年。いまや50歳と70歳。
海外にはあまり行きたがらない夫でも、あのタヒチは本当に感動したようで、「退職したらもう一度タヒチは行きたいなぁ」と言っています。
70歳なのですでに嘱託となり、退職が間近な夫。ただでさえ高級リゾートなタヒチ。円安でなかなか費用もかかりますが、もし本当にタヒチにもう一度行けるなら、わたしもぜひ行きたいです。ただ、またわたしは通訳として彼の右腕となるしかなさそうですね…。
とりあえずガーデンパーティーに「無料かどうか」を聞くのだけはごめんなので、今度は「ノーチャージ?」って自分で聞いてもらうつもりでいます。
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