6歳差姉弟を育てるママライターEMIです。両親の介護体験をもとに、介護に関する記事を書いています。
近年、高齢者同士が無理な介護をする「老老介護」や「認認介護」が深刻化しています。
高齢者同士の介護が増加し、ときには殺人や虐待にまで発展するケースが後を絶ちません。
もしかしたら、あなたのご両親もこのような状況に陥る可能性もあるかもしれないのです。
そこで今回は、「老老介護」や「認認介護」の実態や家族ができる適切な対処法について、一緒に考えていきます。
老介護・認認介護とは?その深刻な実態
「老々介護」「認認介護」という言葉を知っていますか?
「老々介護」は何となくイメージがつくかと思いますが、「認認介護って何?」って思われている方もいるのではないでしょうか。
高齢者同士が互いに介護し合う状態を「老々介護」、認知症の高齢者同士で介護する状態を「認認介護」と呼びます。
現在、この両者が増加し、深刻な問題となっているのです。
厚生労働省の調査によると、65歳以上の高齢者世帯のうち、77.1%が老々介護の状態にあるとされています。
そして冒頭で触れた通り、無理な介護がトラブルの原因となり、虐待や介護殺人にまで発展する深刻な事件も起きているのです。
高齢者虐待は年々増加しており、2022年には過去最多の35,594件も通報があったことが明らかになっています。(参考:厚生労働省「令和4年度高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等について」)
なぜ増加の一途をたどるのか?主な4つの理由
なぜ、こんなにも老々介護・認認介護が深刻化してしまったのでしょうか。
次のようなことが要因だと考えられます。
1.高齢化と認知症患者の増加と健康寿命の低下
日本の高齢化は、世界に類を見ない勢いで進行中。
2025年には3人に1人が65歳以上の後期高齢者になると見込まれており、認知症高齢者数も2025年には675万人に達すると予測されています。(参考:内閣府「令和3年版高齢社会白書」、厚生労働省「認知症施策推進大綱」)
また、平均寿命は延びている一方、健康寿命との差が拡大しています。
健康寿命とは、日常生活に支障なく生活できる期間のこと。健康寿命が短いほど、介護が必要となる期間が長くなり、老々介護・認認介護のリスクが高まるのです。
2.核家族化による介護力の低下と経済的理由
核家族化が進み、同居する親族が減少するなかで、高齢者を介護できる家族の手が足りなくなってきていることも老々介護に陥る要因のひとつだと考えられます。
65歳以上の夫婦のみの世帯は30年で1.7倍に増え、何らかの介護を必要とする高齢者は1,000万人を超えているのです。(国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」)
私の近所でも、老夫婦のみで生活している世帯が何軒かあります。そのなかには、足の悪い奥さんのサポートを旦那さんがしている老夫婦も…。
今後状況が悪化したときのことを考えると、少し心配な状況です。
また、介護費用の心配から、サービス利用を控え、同居家族だけで無理な介護をする世帯も多数あります。施設入所を断念する例も少なくありません。
3.「家族が介護する」という強い意識
日本人には「家族が介護をするのが当たり前」という意識があり、外部のサービスを利用するのを避けたがる傾向があります。
特に高齢者は、この考えが深く根付いているように感じます。
そして、介護サービスを利用するのは「よくない」「恥ずかしい」と見なされがちで、外部の支援を受け入れにくい風潮も…。これも、老老介護や認認介護が起きる一因となっています。
私の両親も「介護は家族がするもの」という固定概念を持っていて、外部サービスの利用を拒否していた時期がありました。
「介護は家族がするもの」と考えがちな風潮が、介護虐待や殺人まで発展するほど事態を深刻化させているのではないでしょうか。
4.面倒な申請手続きから介護サービスを利用しない
介護サービスを利用するには、介護認定を受ける必要があります。
しかし、申請手続きが面倒と感じたり、時間がかかったりして、申請を諦めてしまうケースが多いのです。
自分の親を見ていても感じますが、高齢になるにつれて新しい行動を起こすことが面倒に感じることが多くなりますよね。
申請を先延ばしにした結果、老々介護に疲弊し、介護虐待にまでつながってしまうケースもあるのではないでしょうか。
家族はこうすべき!最悪の事態を防ぐ対処法
老々介護・認認介護は、誰にとっても起こり得る問題です。
もしも、介護が必要になったときには、まず 「家族が介護をしなければならないという固定概念を捨てる」ことが大切。
固定概念にとらわれず、外部の支援を上手に活用することが老々介護・認認介護を避けるための一番の解決策ではないでしょうか。
介護は家族だけで抱え込むと、過酷な負担からつらい事態に陥りかねません。
介護が必要になりそうだと感じたら、まず地域包括支援センターに相談しましょう。
包括センターは介護に関する相談窓口で、専門家に適切なアドバイスがもらえます。また、面倒だと感じる介護申認定の手続きの方法も丁寧に教えてくれますよ。
家族だけで介護を背負い込もうとするあまり、最悪の事態を招いてはなりません。
老老介護や認認介護の問題を根本的に解決するには、古い考えを捨てて外部の支援を上手に活用することが何より大切なのです。
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