6歳差姉弟を育てるママライターEMIです。両親の介護体験をもとに、介護に関する記事を書いています。
ご家族が認知症と診断されたとき、こんな不安がよぎりませんでしたか?
「認知症は一気に進行するのだろうか…?」
認知症は、個人差はあるものの基本的にはゆるやかに進むと言われています。しかし、注意しないと進行速度が加速することもあるそうです。
私の母は、6年前にアルツハイマー型認知症を発症しました。比較的進行がゆるやかだと言われていましたが、それでも急に悪化したと感じることが何度かありました。
今回は、私の実体験から「認知症の進行を加速させる原因と対策」についてお話しします。
認知症が突然悪化する原因とは?
認知症が一気に進む原因は、大きく4つあると考えられています。
からだの調子が悪くなることで考えられる「身体的要因」、安静状態などで刺激のない環境で何もせずにぼんやり過ごすことで考えられる「廃用性要因」、周囲の環境が急激に変わることで考えられる「環境的要因」、精神不安定から考えられる「心理的要因」です。(参考:みんなの家庭の医学)
ここからは、実際に私の母の身に起きた実体験から詳しくお伝えします。
1.急激な環境変化
転居や入院、家族構成の変化など生活環境が一変すると認知症が進行しやすくなります。
これは、慣れ親しんだ環境を失うストレスが大きいことが原因だと考えられています。
母は、父の入院後に認知症が急に悪化しました。毎日父に世話を焼いていた母にとって、父の入院は大きな環境変化でした。
やがて父が亡くなると、被害妄想など症状が深刻化してしまいました。
2.考える機会の減少
趣味や社会活動の減少など、脳を活性化する活動が減ると認知機能の低下が加速する可能性があります。
私の母は、趣味でやっていた手芸教室の講師をやめた後、認知症を発症しました。
活動的だった生活が一変したことが発症の引き金となった可能性があるのではないかと考えられます。
3.行動制限による脳への影響
外出や運動が制限されると、脳が活性化されなくなり症状が進みます。社会的活動の減少も、危険のシグナルです。
父と一緒にサービス付き高齢者住宅に入居していた母は、父の入院や死去で、外出機会が激減しました。
それも、認知症の進行を加速させた一因だと思います。
4.ミスへの過剰な指摘
責められたり、否定されたりするストレスは、脳に悪影響を与え、認知症の進行を加速させる可能性があります。
適切な声かけとサポートが大切です。
このように、認知症が急に進行する背景には、原因があります。
認知症が悪化させる原因があらかじめわかっていれば、介護をするときに気をつけるべきことがわかるのではないでしょうか。
認知症のタイプ別の進行速度
認知症には、主な4つのタイプがあります。進行速度はタイプによって異なります。(参考:朝日生命)
アルツハイマー型
もっとも患者が多いのがこのタイプで、緩やかに進行するのが特徴です。
初期は軽度の物忘れから始まり、中期になると日常生活に支障が出てきます。末期には、会話も難しくなり、完全に介護が必要になってしまいます。
進行スピードには個人差が大きく、早い人は2~3年で重症化する場合もあれば、10年以上かけて進行する人も。
私の母は、アルツハイマー型認知症を発症して6年になりますが、徐々に日常生活に支障をきたしてきている状態です。
レビー小体型
アルツハイマー型に次いで多いのが、このタイプ。認知機能が著しく変動するのが特徴です。
比較的進行が速く、初期から手足の震えや動作緩慢などの症状が出ます。
幻視や錯乱を起こしやすく、治療が難しいことが多いのが特徴です。
脳血管性
脳梗塞や脳出血が原因で発症します。発症が突然で、一気に重症化することも…。
一定期間は症状が進行しませんが、次の発作で一気に悪化するケースもあります。
症状の出方は、どの脳の部位が損傷したかによって異なります。
前頭側頭型
比較的若い世代にも発症します。人格や行動の変化が目立ち、無為・無関心になりがち。記憶障害よりも、判断力の低下が顕著に現れるのが特徴です。
進行スピードは比較的早く、発症から数年で重度に至ることがあります。
このように、タイプによって進行のスピードや症状に違いがあり、事前に把握しておくことが大切です。
母と接するなかで得た「認知症」の進行を遅らせる4つの対策
認知症の進行を遅らせるためには、「認知症を悪化させる原因」を避ける環境づくりが重要。
そうはいっても、家族が亡くなったり、身の回りの環境の変化を完全に避けることは難しいのが現状です。
認知症の母を持つ私が、認知症の進行を遅らせるために大切だと感じたことは次のようなことです。
1.認知症を早期発見し、早期に治療すること
認知症を早期に発見し、専門医による治療を受けることがもっとも大切だと感じました。
最近承認された新薬「レカネマブ」のように、発症初期に適切な治療を受ければ、症状の進行をより効果的に遅らせられます。
2.”役割”を持ち続けさせる
認知症の人にとって、「役割を持つこと」はとても大切。
私の母は、父の入院をきっかけに、夫の世話をする「役割」を失い、それが認知症を悪化させることに…。
そのとき認知症の人に「役割」を持ってもらい、やりがいを感じられる環境をつくることはとても重要なことなのだと気づきました。
なので、母の入居するサービス付き高齢者住宅に訪れるときは、私の子どもの世話を母に手伝ってもらい、母に子育てのサポートをする役割を持ってもらうようにしています。
3.外出の機会を作ること
閉じこもりな生活は、認知症を悪化させる要因となります。私の母も、父の死去後に外出機会が減り、認知症が進行しました。
そのため、デイサービスなどのサービスを利用し、外出や趣味の機会を作ることが大切。私の母も、定期的にデイサービスに通い、人との交流を楽しんでいます。
また、認知症が進行すると季節の変化を感じにくくなります。天気のいい日は一緒に散歩に出かけ、季節の変化を感じたり、五感を刺激する時間を作るようにしています。
家族だけで対応するのが難しい場合は、介護サービスや地域の支援を活用してなるべく、外出する機会や人と交流する機会を設けることが大切です。
4.不安や孤独感を和らげること
認知症になると、不安や孤独感が強くなります。父の死で母の不安が増し、被害妄想などの症状が出ました。
認知症の人は不安になりやすいので、こまめな声かけで安心感を持ってもらい、ストレスを避けることが重要です。
私は、母の不安を和らげるために、休日はなるべく母のもとを訪れ、不安な気持ちを和らげるようにしています。
家族の理解と適切なサポートを
認知症の進行を完全に止めることはできません。しかし、家族の理解とサポートによって、進行速度を緩やかにすることができます。
認知症の進行は一人一人異なりますが、上記の対応で速度を抑えられます。
寄り添う気持ちを忘れず、認知症の人に最適な環境づくりをすることが大切です。
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