露木行政書士事務所・露木幸彦です。筆者は夫婦の悩み相談を専門としております。
きょうは、几帳面で心配性な性格の妻と、大雑把で感情の起伏が激しい夫の離婚劇について事例をもとにお話しましょう。
離婚を決意した出来事
- 夫:健太郎(36歳/会社役員/年収1,200万円)
- 妻:智恵(32歳/専業主婦)
「レジでお札の顔をバラバラにして渡す神経がわかりません。ちゃんと同じ向きに並べないと気持ち悪いでしょう!」
そんなふうに会計時の不安をこぼすのは智恵さん(32歳)。
智恵さんは夫が洗濯物を畳んでくれても、畳み方がバラバラだと気が済まず、自分でもう一度、畳み直すような几帳面な性格。しかも心配性な一面もあるので、たとえば娘がちゃんと宿題をやっているのか、子ども部屋を何度ものぞき見してしまうそう。
一方の夫はのんきにリビングで寝転がり、テレビを見てくつろぐなど、智恵さんが首をかしげる回数も年々、増えていきました。
「夫は自分の主張が通らないとすぐにキレるんです。夫の癇癪を避けるため、私も娘も言いなりになるしかないんです!」
智恵さんはそんなふうにため息をつきます。智恵さんはもともと気を使いすぎて疲れるタイプ。弱音を吐かないので、知らず知らずに無理がたたっていたよう。ある日病院で子宮筋腫が見つかり、手術をすることになってしまいました。
当日は、家族のために家を空けられないという一心で入院せず、日帰りを選んだそうです。麻酔の影響が少し残るとのことで車ではなく公共交通機関で来るように言われていたので、智恵さんは電車とバスを乗り継いで病院へ向かいました。
夫は智恵さんのことを心配して会社を早退し、娘さんの面倒をみてくれていたそうです。そして智恵さんは手術を終えると家路につきました。
そうすると智恵さんが帰宅するや否や、「よく頑張ったな。きょうはシャンパンを開けよう!」と言い出したのです。
ここまではよかったのですが、夫はどういうわけか智恵さんが「シャンパンに合う総菜」を買ってきたと思い込んでいました。しかし智恵さんが途中で「酒のつまみ」を調達するのは無理です。なぜなら、頭のふらつきや手足の痺れ、そして動悸や息切れを我慢して何とか自宅にたどり着いたのだから。
そもそも夫から前もって何も聞かされていません。それなのに夫は「おいおい、何も買ってきていないのか?」という目で智恵さんをにらみつけたのです。
「自分の思い通りにならないと怒り狂うんです!少し予定がずれただけなのに…」
酒の肴がないのは夫にとって予想外だったかもしれませんが、百歩譲って自分で買い出しに出かけたり、料理の腕をふるったりすれば、今後の展開も違っていたはずです。
しかし、夫はリビングのソファーに座って携帯ゲーム機で遊んでばかりで、頑として動こうとしませんでした。結局、智恵さんは立ち上がるのもやっとなのに、冷蔵庫からタコのボイルとキュウリ、玉ねぎを取り出してカルパッチョを作らされるハメに。
智恵さんは、内心で少し期待していたそうです。普段からわがままで自己中心的で自惚れ屋な夫でも、妻が病気で倒れ、病院に運ばれ、手術を受けるという「非日常」の空間なら、きょうばかりは心を入れ替え、気を使い、優しくしてくれるはずと。
残念ながら、夫は数時間前に手術を受けたばかりの智恵さんに向かって傍若無人の限りを尽くしたので、完全に堪忍袋の緒が切れてしまったのです。
「こんなときでも『夫婦なら助け合う』という気持ちにならないなんて…私のことなんてお構いなし。自分のことしか考えていないだなぁって。あの人の考え方に付いていけなくなりました」
こうして智恵さんはついに離婚を決断しました。