こんにちは、椎名です。僕は身体の性が女性で心の性は定めていないセクシュアルマイノリティで、女性のパートナーと生活をともにしています。
早いもので同棲を始めてから7年、異性同士のカップルならば「いい加減結婚しないの?」なんて聞かれてしまうかもしれない年月を一緒に過ごしてきました。
僕たちも身体の性が同性でなかったら、いや、日本で同性同士でも結婚ができたならきっとそう言われているのかもしれません。
きょうは「日本で結婚したい」と願う僕から見た、同性婚ができない日本の現状についてお話しします。
「海外に行って結婚しようね」
TwitterなどのSNSを中心に拡散されている「#日本で結婚したい」というハッシュタグをご存じでしょうか。
これは、2021年に英国で国際結婚されたKanさんがTwitterで始めたハッシュタグで、その言葉通り日本での同性婚の実現を望む数多くの当事者や理解者がこのハッシュタグを利用しています。
そもそも、僕が初めて女性とお付き合いを始めたのは13歳のころで、いまのパートナーがその相手でした。
2000年代初頭、お互いが生まれ育った田舎町には同性愛者を公言している人はひとりも居ませんでした。当然、ふたりの関係も僕のセクシュアリティも絶対に隠さなければなりません。
周りの女の子たちが、ドラマや少女漫画に登場するイケメンや、異性との交際やその先にある結婚に憧れる年頃。そのなかでそれまで男性に好意を抱いたことはあるものの、自分の性別に抱いている感覚が周りと違うことを薄々感じていた僕は、なんとなく「自分は結婚できないんだろうな」と感じていました。
そのころに彼女と出会い、奇跡的に交際することができたことで、自然と将来誰かと一緒にいることを考えられるように。「海外なら同性でも結婚ができるらしい」とどこかで聞きかじった当時の僕たちは、「いつか海外に行って結婚しようね」と語り合いました。
いま思えば、その夢は当時の僕たちにとって「将来はトップアイドルになりたい」とか「メジャーリーグで活躍したい」とか、「日本代表選手としてW杯に出たい」というのと肩を並べるような、叶えるにはハードルがとても高い夢でした。
日本で結婚どころか同性を愛することを公にできる世の中になるなんて考えもしなかった当時、同じように叶えられない約束をした当事者は、僕たちだけじゃないはず。
もちろんトップアイドルもメジャーリーガーもサッカー日本代表選手でも、その夢に向かって努力を惜しまず、自分からチャンスにしっかりと手を伸ばして、掴んで離さないだけの意思の強さで夢を叶えたかたは世の中にたくさんいます。しかしみんながみんなそんな夢を叶えられるかというと、そうではありませんよね。
他国へ移住するということだけを考えても、たとえば「日本は物価が高い」からといって「それなら物価が安い日本以外の国に引っ越せばいいのだ」と簡単に実行できる人がどれだけいるのでしょうか。生活の基盤や拠点にしているところから簡単に離れることはなかなか難しいと思います。
現実的かどうかという点以外にも、お互いが結婚以外で人生において大切にしたいことも踏まえて検討して、そのうえで実行する勇気があるか。どちらにせよ、誰もが一足飛びに叶えられるものではないように感じます。
学生時代だけでなく、いまの僕にも結婚のためだけに海外で生活する勇気やフットワークの軽さはありません。家族を大切に想い、定期的に家族の様子を見に行く彼女を連れて海外に拠点を置くこと、大切にしたいお互いの趣味のこと、生活に欠かせない仕事のことなどを考慮すると、当時もいまも海外に拠点を置くことは僕たちにとっての最良の選択ではないと感じます。
なので、いまの僕たちにとっての最良の選択は、生まれ育った日本で結婚をすることです。