こんにちは、椎名トキです。僕は身体の性は女性ですが、心の性は定めていないセクシュアルマイノリティで、女性のパートナーと暮らしています。
この記事を書いているタイミングの話になってしまいますが、最近は新型コロナウイルスの感染者数もだいぶ落ち着いており、帰省しにくかった2020年に比べると、今年は気をつけながらであれば帰省ができそうですね。そのため「今回の年末年始は久しぶりに帰省する」というかたも増えるかもしれません。
そこできょうは、僕が一大決心をし、家族と向かい合った年末年始の出来事についてお話しします。よかったら少しだけお付き合いください。
父に「カムアウト」をしよう
毎年、当たり前のように帰省していた年末年始。
僕の恒例の過ごし方は、年末に帰省をし、まずは実家で過ごしてから、大晦日の夕飯のあと彼女の実家にお邪魔して彼女のご両親と彼女、僕の4人で年越し。
年が明けてからは父方の親族に挨拶し、離れて暮らす母や母方の身内と過ごして自宅へ戻るというのが大まかな流れで、それに沿って毎年年末年始は地元で過ごしていました。
毎年特に変わらず過ごしてきましたが、2018年の末から2019年の頭にかけてだけは、僕にとって特別な帰省となりました。
2019年は、僕が30歳を向かえる年。年齢の区切りのよさから、僕はこのタイミングで父にパートナーである彼女とのことをカムアウトしようと考えていました。
2016年にすでに彼女とはフォトウェディングを挙げており、その際母にはカムアウト済みでしたが、父にはできずにいました。
父と母は僕が大学進学のため親元を離れたあとに離婚。ふたりの離婚の理由は父にあり、僕が反抗期だった学生時代からすでに家庭内で問題になっていたこともあり、そのころからあまり仲がよいというわけではありませんでした。
離婚後、父はさすがに改心したらしく、父の希望もあり、対話と酒の席を重ねて少しずつ和解。ある程度は仲良くいられるようになったのです。
パートナーである彼女のことも、僕の幼なじみとして実の娘のように大切に扱ってくれていたのも和解に至る大きな要因で、それがかえって言い出し難くなってしまった理由でした。
フォトウェディングから数年。父から見れば結婚する気配のない娘が「今後の人生においてひとりきりではなく彼女とともに生きていくつもりであるのだ」と本当のことを言えていないことに少なからず後ろめたさを感じていて、年齢のキリがいいこの年末年始に、遅まきながらカムアウトをする決心がついたのでした。
決意の帰省
12月30日、いつもより緊張の面持ちで帰省。地元駅まで迎えに来た父の、いつもと変わらない「おかえり」と笑う顔を見ると、「この笑顔を失わせてしまうかもしれない」と早速決意が揺らぎそうになりました。
最近買ったCDや父が観ているドラマの話をしながら、そのタイミングをいつにするのか考えていました。
帰省の間は、父の晩酌に付き合うことも恒例の過ごし方のひとつ。父と晩酌をともにするのは、帰省したこの日もしくは1月1日の晩の2回。機会として狙い目であるこのどちらかに、アルコールの力も借りて言ってしまおうと算段をしました。
同居の祖父母との夕飯を済ませ、夕飯のおでんと少しのつまみを持って父の部屋へ。1度目の絶好のタイミングに挑みます。
つけたテレビでは年末の特番かなにかがやっていたと思いますが、まったく頭には入ってきませんでした。やはりいざ言おうと思うと、面と向かってということもあり、かなり緊張します。酔いもなかなか回りません。話の区切りのいいところが度々やってきても、切り出すことは難しい…。
そもそもスッと言い出せるのなら、数年間も後ろめたさを感じることなく、フォトウェディングを挙げる際に母と同じタイミングでカムアウトをしていたでしょうし、当たり前の状況です。
そうこうしている内にどんどん時間は過ぎてしまい、酔えない僕とは裏腹に、父はいい気分で眠気がやってきてしまった様子。残念ながらこの日はタイムリミットです。次のチャンスである晩酌は、1月1日の晩でした。