こんにちは、椎名です。今回は注目のお仕事コミックエッセイ『女性に風俗って必要ですか?(新潮社刊)』をレビューします。
タイトルに“風俗”とつくだけでギョッとしてしまう人もいるかもしれませんが、筆者は実際に読んでみて、とても受け取りやすい作品だと感じました。
『女性に風俗って必要ですか?』あらすじ
『女性に風俗って必要ですか?』は、実体験をもとにヤチナツさんが描くお仕事系コミックエッセイです。
原案者の吉岡そのさんは新型コロナウイルスの影響でアルバイト先の飲食店を失業したのをきっかけに、女性向け風俗店「ハニータイム」の裏方として働くことに…。
そのさんの仕事は、利用客の女性たちの要望をもとにセラピストと呼ばれる男性たちのなかから誰を派遣するか考え、マッチングさせること。しかし、そのさんは男性経験が少なく、マッチングをさせるのにも四苦八苦。
女性たちの悩みに考え方に触れていくにつれ、次第に彼女たちの抱える性の悩みや思いに裏方として向き合いはじめます。
今年2月に発売した第1巻では、多くのカップルが悩むパートナーとのレスやマンネリ、交際経験が少ないけれど“卒業”はしたい!など、周囲に相談しにくい性に関する悩みが登場します。
コミックの制作には吉岡そのさんの実体験のほか、実際に大手女性風俗店にも取材を実施。普段垣間見ることのできない女性向け風俗の裏側を、リアリティを保ちつつ、触れやすいポップなタッチで描いている作品です。
女性に風俗って必要ですか?
筆者を含め、女性向け風俗を利用したことがないかたや女性以外のかたにとって、「女性向け風俗」は非日常的なものだと思います。
もしかしたら、「女性向け風俗なんて本当に利用する人がいるの?」と感じるかもしれません。
男性向け風俗を男性が利用する場合よりも、利用者以外の人から見えにくい分、より実在のものとして想像しにくいですよね。
しかし、利用する・したことがあるかたにとっては、ファンタジーなどではなく日常の延長線上に存在しているものだと、この作品と出会ったことでそう考えるようになりました。
冒頭にも書いた通り、人によってはタイトルに“風俗”とつくだけでギョッとしてしまう人もいるかもしれません。しかし、本作は単なる“エロ”を描くためのモチーフとして女性向け風俗を扱ってはいないと断言します。
本作では表紙のデザインを、紙での出版では性やエロティックな印象を与えないシンプルで柔らかい印象のデザインに、電子書籍ではポップで気軽に読める印象のデザインに変えているのもその証拠。
書店で手に取る場合には手に取って購入しやすく、本棚にしまってもいやらしさを感じない。スマホでこっそり気軽に読む場合は、紙の本とは違い作品の楽しそうな印象を前面にしてより楽しめるようにという、作品を手にする女性読者の目線に立っている作品ならではの心遣いを感じました。
その気遣いが作品を通して、「女性に風俗って必要ですか?」と読み手に問いかけます。