こんにちは、精神科医・心理研究家のゆうきゆうです。発行しているメルマガでは、人間心理を裸にして、あやつる技術をお教えしています。
今回も、女医と青年の会話で「恐ろしい不幸が2回も来た男」の話をご紹介します。
不幸の二重連鎖
女医:アメリカの実業家で、モチベーション・スピーカーにW・ミッチェルという人物がいてね。ミッチェルさん、27歳のときに車の炎上事故に巻き込まれてしまったの。
青年:な、なんてことだ…。
女医:そして全身の65%を大火傷。顔にも手にもひどいヤケドを負って、10本の指のほとんどを失ってしまったのよ。
青年:すごく大変じゃないですか…。
女医:でも彼はくじけなかった。4年後、ヤケドからなんとか回復したミッチェッルは、航空機のパイロットになるために訓練を行っていたの。
青年:その状態からパイロットに…?
女医:でもね、なんと彼が乗っていた航空機が墜落事故を起こしてしまったの。31歳のときね。
青年:えっ!?
女医:その結果、彼は脊髄を損傷し、半身不随になってしまった。
青年:そんな…そんなレベルの事故、1回だけでもそうそうないですよ…それが2回も…それはずいぶん落ち込みますよね…いや、落ち込みで
済みませんよね…。
女医:それがね、彼はくじけなかったの。
それでもくじけず進むミッチェル
女医:そこから回復するまでに、彼は「絶対に人生をあきらめてたまるか、絶対に成功してやる」って誓ってね。これからの人生で、さらに事故が起こることがあっても、絶対に自分の意志で打ち勝ち、乗り越えてやろうと決心したのよ。
青年:すごい…。
女医:事故からしばらくして、ミッチェルはアメリカのコロラド州の自治区の長となって、そこにある山をある鉱山開発会社から守ったの。結果
的に「山を救った」として英雄になったわ。さらに実業家としても大成功して、多くの人に仕事の場を与えた。さらにコロラド州議員にも任命されたの。
青年:す、すごい成功ですね…。
女医:そしてその後も、飛行機の操縦や急流下りを楽しんでいるそうよ。
青年:す、すごいですね…。僕なら1回の事故でくじけそうなのに…それを2回も…。
女医:そんな彼は、こんなセリフを発しているわ。「体が麻痺する前、私にはできることが1万あった。いまは9000ある。失った1000を嘆くこともできるが、残された9000に全力で取り組むこともできる」。
これってすごく趣深い言葉だよね。私たちは何かうまくいかないことや失敗をするたびに、「あぁもうダメだ!」「未来が閉ざされてしまった!」「もう何をしてもうまくいかない!」なんて風に、ネガティブな部分にだけ目を向けて、悲しんでしまう。
青年:そうですね…。
女医:でもミッチェルは違う。まだ「できること」だけに目を向けている。
青年:はい。ていうか1万のうち9000になった、というのはすごいですよね。
女医:えぇ。考えてみれば、指がなくなったり半身不随になってしまったら、それによって閉じてしまう道は、たしかにいくつも存在する。でもだからといって「何もできなくなってしまう」わけではない。その状態でもできることはたくさんたくさん残っている。それを「1万と9000」とたとえたのは、非常にすごいと思うのよ。
青年:はい…そう思います…。
女医:もしこの数字が実はもっとネガティブで「1万できていたものが1000になってしまった」としても、その1000ですら、人生でやり尽くすことは大変なこと。であれば、嘆いているあいだに、その1000に向かって突き進んだ方がずっといいとも考えることもできるわね。
新たな扉が開く
女医:また、かのヘレン・ケラーは、こんなことを言っている。「ひとつの幸せのドアが閉じるとき、もうひとつのドアが開く。でも私たちは閉じたドアばかりに目を奪われ、開いたドアに気づかない」。
特にヘレン・ケラーは目が見えず、耳が聞こえなくなった。でもその結果、誰もが知っている偉人になったわ。その不幸がなかったら、そこまでの偉人になっていたかはわからない。
青年:はい。
女医:彼女はまず、目と耳が不自由になってしまった。その前提において、それを前向きに捉えたからこそ、あそこまで成功することができたとも言える。
青年:そうですね…!
女医:何かの不幸が起こったときに、それについて嘆いたり、怒ったりしているだけでは、人生がどんどん悪くなっていく。それよりも「それによって新たに開いた扉は何か?」とか「まだできることはなんだろうか?」と考えることは何よりも大切なのね。
とにかく、進んでいくしかない
女医:とはいえ、それでも、誰でもすぐに前向きに考えられるわけではないかもしれない。でも私は、そんなときこそ、この話を思い出してほしいと思うの。W・ミッチェルは、全身ヤケドして、指まで失って、さらに半身不随になっても「できる9000のこと」に注目して行動した。
ヘレン・ケラーも、目と耳が不自由になっても、新たに開いた扉に向かって歩き続けた。これに比べたら、いまの自分の状況なんて、軽いものかもしれない…!そんな風に考えて、少しでも前に向かって進めたら、いいなって思うんだ。
青年:はい…。
女医:もちろん幸福や不幸なんて、比較できる話じゃない。あなたにとってつらいこと、苦しいことはたくさんあるかもしれない。でもそれで止まっていたら、何も始まらない。あなたが不幸を大きいことと思えば思うほど、さらに重く大きくなって、あなたにのしかかってくる。そこから抜けるには、進んでいくしかないんだよ。どうか覚えておいてね。
青年:は、はいっ!
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