生きづらさの原因のひとつに、AC(アダルト・チルドレン)があります。「Adult Children」という名前の通り、いつもいい子で大人のように振る舞うことを強要されたりして、子どもらしさを出せずに育った成人のこと。
もともとはアメリカでアルコール依存症治療を行うなかで、1980年代に作られた言葉です。アルコール依存症の親によって育てられ、アルコール依存を核とする「機能不全家族」のなかで子ども時代を過ごし、「生き辛さ」を抱えて大人になった人。
しかも、それゆえに順調な社会生活を送れずに悩み苦しんでいる人のことを指しました。
この「機能不全家族」とは、子どもが安心して育つ環境の整っていない家庭のこと。アルコール依存症の親を持つ家庭が、その典型なのです。
「日本型AC」の特徴
ところが、日本で多く見られる「機能不全家族」は少し違います。仕事熱心な父親、良妻賢母の母親、優等生の子どもからなりたっています。こんなにいい家族がなぜ、「機能不全」なのでしょうか?
父親は家族より仕事優先。経済力によって家族を支配しようとしている。優しい母親は、世話をやくことで、夫と子どもを支配します。この夫婦は2人とも、相手と子どもを「自分がいなければ生活できない人」に仕立てているのです。
そして子どもは、そのような両親の行動を愛情と勘違いし、両親の期待に応えようと一生懸命勉強し、いい子であろうと努力します。彼らは「いい子でなければ親に愛されない」と感じているのです。こうして子どもは「いい子でない自分は誰からも(自分からも)愛される価値がない」と判断するようになります。これが、いい子が一生懸命頑張る理由です。
このような家庭で育った子どもは、大人になっても親に期待されていることをするか、会社に期待されていることをするかを考えて行動しており、判断基準を自分で持ちにくくなってしまいます。そして他人の期待という底知れない欲求を満たさなければならないため、彼らは一生懸命努力するのです。
しかしながら、他人はいつも自分が期待していたほどの見返りを与えてはくれない。いつかは疲れ果てて体を壊すか、精神を病んでしまうのです。もちろんすべての家庭がそうではありませんが、これが日本でよく見るAC(アダルトチルドレン)です。