「成功」への執着
ところで、傷つくのをそれほどまでに恐れるのは、それだけ期待が大きい裏返しだといえます。「思い通りになってほしい」という気持ちをとても強く持っているということです。
想像してみてください。どうしても行きたいコンサートのチケットを取ろうとする場合と、それほど行きたいわけでもなくてダメなら別にいいやと思えるようなチケットをとる場合。
予約がとれなかったときの落胆は、前者の方がずっと大きいはずです。思い通りになることを期待する気持ちが強ければ強いほど、それがダメだったときのショックは大きくなるのです。
「思い通りになってほしい」という期待が大きい。それをいい換えると、思い通りに物事が運ぶことに強く固執しているとなります。「成功への執着が強い」ということです。このように「成功への執着が強い」と、失敗(思い通りにいかないこと)への恐れが強くなります。
また、「もし失敗したらどうしよう?(思い通りにならなかったらどうしよう?)」という不安も強くなります。そこで、恐れや不安を軽くするために、あえてネガティブな思考をしてしまうのです。
ですから、ネガティブな思考になりがちだという人は、成功への執着がとても強い人であり、それゆえに失敗することで心が傷つくことに敏感になっているといえます。
なお、ネガティブな思考になることはよくないのかというと、必ずしもそうとはいえません。先ほど説明したように、あらかじめ心が傷つくことの予防線を張ることで、実際に思い通りにうまくいかなかったときに受けるショックは軽減されますし、失敗しないように慎重になって対策を講じることができるというメリットもあります。
楽観的に考えて、根拠もないのに「きっと大丈夫!」「なんとかなる」と思い込んでいると、何の準備も対策もしないので失敗する確率は上がります。一方、悲観的に考えることで、念には念を入れて準備や対策をするので、失敗する確率が下がるのです。
しかし、ネガティブ思考の多くの人は、不安や恐れに頭のなかが支配されてしまっていて、肝心な準備や対策にまで意識が向かわないことが多くなっています。これではまったくいいことがありません。せっかく悲観的になっているのに、そのメリットが生かせていない。「準備は悲観的に、行動は楽観的に」というのが理想です。
ネガティブ思考をうまく成功に生かすためには、頭のなかの不安や恐れに支配された状態を変える必要があります。そうすることで、準備や対策を講じることができるからです。
では、どうすれば、頭の中が不安や恐れに支配された状態を変えることができるのでしょうか。そこで、不安や恐れを払拭して冷静さを取り戻すために役立つ取り組みを5つご紹介したいと思います。