25%がアウティングの被害を経験
当時、アウティングについてはニュースで見聞きしていたので、怖いなとは思っていたものの、どこか他人事で深刻な問題として捉えていませんでした。しかし実際に経験をすることで、誰もが被害者、加害者になり得ることを痛感したのです。
実際に、LGBTQ当事者の25%がアウティングの被害を経験。78.9%が学校や職場で、LGBTQに関する差別的発言を聞いたことがあると調査の結果が出ています(ライフネット生命調べ/2020年8月31日)。
アウティング被害として有名な「一橋大学アウティング事件」では、ゲイであることと恋愛感情を同級生に告白した学生が、その相手にアウティングされて心身に変調をきたし、パニックから転落死へと繋がってしまいました。
この事件によりアウティングについてようやく世間で問題視されるようにはなりましたが、実はこれが初めてではありません。聞く限り、昔からアウティング被害やアウティング被害による自死は多く存在しています。
本来ならばアウティング被害のない環境や制度・法がすでに確立しているべきだと思いますが、社会から見えにくい位置に立つ性的マイノリティは、差別に遭いやすい構造下にいるのが現状です。
表面上の「いいと思う」
一橋大学アウティング事件で、告白された同級生は、本人には「(ゲイであることについて)自分のことを責める必要はないよ」と救いの手を差し伸べたものの、のちに本人の意に反して周りに暴露し、追いやってしまいました。
最近では、個々のアイデンティティを尊重しようとする風潮が強まり、会社でもLGBTQなどのセミナーが増えています。差別をする人がおかしいと認識され始め、目の前で差別発言をする人も目にすることは少ないですが、一橋大学アウティング事件のように表面上だけで「いいと思う」という人は多く存在するように感じます。
私はいま友達に同性のパートナーがいることを「カミングアウト」ではなく、自然と会話のなかで伝えることができるようになりましたし、ほとんどの人が自然な反応を示してくれます。
ですが、なかには女性と付き合っていることを受け入れた様子を見せながらも、最終的に「3Pがしたい」といい寄ってくる男性も。また同性と付き合っていることを伝えると、「セックスってどうやってるの?」と不自然に下ネタの話題へと変換してしまうこともありました。
「カミングアウト」の概念がなくなる世のなかへ
カミングアウトをしたのに、いやな経験をしたり被害に遭ってしまうことは、現状の認識が十分ではないからだと思います。
また若者世代には受け入れられやすくても、うえの世代になるにつれ、同性愛を信じたくない人も多くいるのが現実です。特に親へのカミングアウトは2つの世代をつなぐ行為でもあり、ギャップを埋めることは難しいことかもしれません。
いまは、カミングアウトをしなければ異性愛以外の性のありかたは認識されないことが多いですが、同じ社会で過ごす人たちが社会やさまざまな人に対し関心を持ち、あえて伝える「カミングアウト」の概念がなくなることを願っています。
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- ※本文内容を一部修正しました(2021/5/18)