クィアマガジン「purple millennium」を運営し、LGBTQ当事者としての経験や考えを発信しているHonoka Yamasakiです。きょうは、ジェンダーギャップについてお話しします。
ジェンダーギャップとは、男女の違いによる格差を意味します。世界経済フォーラムは毎年、男女の格差指数「ジェンダーギャップ指数」(Gender Gap Index: GGI)を発表しており、2021年の日本は156カ国中120位で、性別による優位性の問題が顕在化されました。
「ジェンダーギャップ指数?」と最初は頭を傾げていた私が、社会が自分ごとだと思うようになったのは大学生のころ。それまで性別を意識することがなかったのは、性別による区別が当たり前だと思っていたからかもしれません。
当時根付いていた女・男らしさの呪文、いわゆるジェンダーロール(性役割)は、自分自身の生活に影響していました。
無意味な女らしさ・男らしさ
いままでジェンダーギャップについて無知であった私が、違和感を覚えるようになったのは、就職活動のときでした。
私は、当時「女性が3割程度」といわれている広告業界の営業職に興味を持ち、就活をしていました。面接を通して数多くの社会人と話す機会がありましたが、役職に当たる人の9.5割以上が男性であることに違和感を持ち始めたことを、いまだに覚えています。
ある会社の説明会では、「営業職は人と関わる仕事だから女性を多めに採用している」「特に女性職員は身だしなみに気をつけている」と説明を受けることもあり、まるで「女を使って営業しろ」といわれているように感じました。
そのとき、初めて女性の社会的ステータスに不快感を抱きました。女性に対し、「ヒールを履くべきだ」「メガネは着用してはならない」「派手にしてはいけないが、すっぴんはだめ」といった細かい規定も多いように感じます。
リクルートスーツのスカートはタイトでお尻のラインが見えるうえ、スカートが上がってくる。かといってレディースのパンツスーツも作りがタイトで、快適に動きづらい。
ストッキングは伝線し、慣れないヒールで靴擦れになり、コンビニで絆創膏とストッキングを買う日々でした。学内では女子生徒に向けた就活メイク講座なども行われ、これは本当に意味のあることなのかと、いまでも疑問に思います。
もちろん女性だけでなく、男性だから強いられることも多いと思います。たとえば、過重労働を強いられる割合は男性のほうが多いのも事実。
ジェンダーギャップについて、女性だけの問題として捉えられがちですが、「男性だから」「女性だから」と性別によって決められたルールが生じる不利益は、どの人も経験しうるのです。
突きつけられる女性性
そんな違和感を抱えながらもなんとか就活が終了し、私は数カ月後の社会人スタートに胸を躍らせていました。就職先は兄が社長、弟が副社長の兄弟経営しているアットホームな雰囲気の会社です。絶好のスタートを切るはずが、あることがきっかけで内定辞退を決めました。
社内の雰囲気を見てほしいと会社の忘年会に誘われ、参加することに。イベント終盤にかけてお酒も入り、盛り上がりを見せました。
一人おとなしく座っていると突然、副社長が私の横に座り、身体をすり寄せてきたのです。下心丸見えのおじさんを目の前に、「私は接待をやらされにきたのか?」と馬鹿馬鹿しく思うと同時に、私が男性だったらこのようなことは起きないのだと、改めて自分の女性性を強く感じました。
そんな状況でも周りは楽しんでいる様子だったので、私は雰囲気を壊すまいと、どうにか愛想よく振る舞い続けます。
「相手は副社長。嫌だと伝えれば兄である社長に伝わり、今後の仕事に悪影響を及ぼすかもしれない。ましてやわかりやすく手などで意図的に触られていないので、セクハラかもわからない。それで新人である私が声を上げたら生意気に思われるかもしれない」
そんな考えがぐるぐると周り、ただ笑ってやり過ごすだけ。周りの社員も「副社長酔ってますね〜」と言うだけで、止める人は誰一人いませんでした。