こんにちは。韓国在住歴3年、日本語教師でライターのHAZUKIです。Webメディア「by them」で、韓国の今を切り取り、生の情報をお届けしています。
2021年8月8日に閉幕した東京2020オリンピック競技大会(以下、東京オリンピック)。コロナ禍で開催が危ぶまれるなか、コンディションを整えてこられた世界各国の選手たち、そして大会のボランティアを含めた関係者には頭が下がる思いです。感動的な競技シーンであふれた大会でした。
韓国人は小山田圭吾さんの「いじめ問題」をどう見たか?
ただひとつ、日本人として残念に思ったことは、東京オリンピック直前に、開会式の楽曲を担当する予定だったミュージシャン・小山田圭吾さんの「過去のいじめ騒動」が勃発したことです。
この騒動は、韓国の掲示板で話題になり、後にニュースでも取り上げられました。
障がいを持つ同級生に凄惨ないじめを行っていたこと、それを大人になってから自慢気に雑誌などで語っていたこと、また過去にいじめ行為を行なっていた人物が「いかなる差別も禁じる」と憲章を掲げるオリンピックに関与する予定だったこと、同じ日本人としてショックを受けました。
またこうした事実に加え、韓国で暮らす筆者が衝撃を受けたのは、日本のメディアやSNSで「許せることではない」「オリンピックに関与する資格はない」という声を挙げる人が多かった一方、「過ぎたことを蒸し返すなんてやめようよ」と、いじめ加害者である小山田さんの過去の行動を黙認するような発言をする人が一定数いたことです。
韓国でも今年に入ってから、芸能人やアスリートの過去のいじめ問題がメディアやSNSで大きく取りざたされました。
ほかの記事(彼女は本当に「サイコ」だった?「韓国で話題になったニュース」)でも書いた通り、韓国人は過去のいじめであっても容赦しません。
筆者が日本語を教えている中学生の生徒に、「もし、『過去のいじめ問題を蒸し返すのをやめよう』と韓国で言ったらどうなると思う?」と聞いたところ、「次の日から友達がいなくなるんじゃないかな。特にメディアで言ったら人生終わると思いますよ」という答えが返ってきました。
これが中学生のみならず、多くの韓国人の「いじめ」に対する反応です。
小山田圭吾さんの過去のいじめを伝える報道についても、彼を擁護するコメントはひとつもなく、憤慨するコメントばかりが並んでいます。
儒教の影響が強く、「目上の人や自分よりも弱い人には親切にしなければならない」という考えを持つ韓国人からすると、障がいを持つ人をいじめるような人間が、平和の祭典であるオリンピックに携わることはあってはならないことであり、「辞任は当然」という意見も多くありました。
韓国人が「過去のこと」でも許さないわけ
筆者は、日本人の「臭い物に蓋をする」「事なかれ主義」が、「過去を蒸し返すのをやめようよ」という言葉につながっているような気がしました。
韓国では、事なかれ主義は通用しません。むしろネガティブな状況をよくするために行動や発言をしない人、臭い物に蓋をするかのようにまわりに合わせている人がいたら、その人は「責任感がない人だ」と思われます。
筆者の韓国人の夫は、「物事をよくするために自分の意見を言うことは、自分と自分の大切な人を守る大切な行動。だから場合によってはデモをするし、必要であればボイコットもする。明らかにおかしいことに対して何もアクションしないと、逆に自分や自分の大切な人が被害に遭ったとき、なにも言えなくなる」と話します。
つまり、「悪い状況を変えようとしない人は、それによって自分が被害を受けたとしても助けてもらう資格はない」ということです。言い方はかなりきついですが、ある意味で的を得ていると思います。
今回の騒動を韓国人の考えに当てはめると、「過ぎたことなんだから…と過去のいじめを黙認する人は、自分の家族がいじめの被害者になって、加害者が自慢顔でいじめの経験を話していたとしても黙っていなければならない」ことになります。