テストの答え
妬みは、人間が持つ闇の感情を引き出してくるような気がします。この人より上に立ちたい、そう思うあまり、自分の信頼を失う結果を招くことも…。
続いては、友人・隆から聞いた学生同士の妬みに関する少し後味の悪いお話です。
隆と同じクラスの前田は、いつもテストのヤマが当たります。勘が冴えているのです。だからみんな、「どの問題が出ると思う?」と前田に頼りっきりになっていました。
ただ、前田も魔法使いではないので、もちろん外れることもあります。しかし明るくユニークな人柄で、外れても誰にも恨まれません。むしろ「人に頼った自分らが悪いから」と、責めることすらしませんでした。
「前田、きょうの数学のテストこの問題出ると思わない?」
「あ~!俺もそれ怪しいなって思ってた、先生前の授業でやたらこの問題気にしてたよね」
いつものように、朝の時間でみんなテスト問題の予想をしはじめます。前田の周りにはたくさんの人だかりができていました。
「それは出ないよ。きょう出るのはコレ」
突然話に割って入ってきたのが、普段はあまり話に参加してこない鈴木です。
鈴木はいつも前田と点数争いをしているほどかなり頭がよく、高校も有名な進学校を志望していました。
鈴木は「テスト予想」と書かれた一枚のA4用紙を見せてきます。そこには鈴木が予想したらしいテスト問題と解答が10問ほど書かれていました。
「鈴木の予想も参考にしとくか」
「そうだな、前田の予想とダブルで参考にすれば俺ら満点かもな」
テスト用紙が配られたとき、クラス中がざわめきます。その日のテストは、鈴木の予想した通りの問題が出ました。答案用紙を回収している先生も、なんだか不思議そうな顔をしていました。
その次も、その次も、鈴木はテストの問題を当て続けました。いつしか前田の周りには人が集まらなくなり、鈴木が人気者の座をゲットしていました。前田のことが好きだと騒いでいた女子たちも、気づけば鈴木に対して目がハートに…。
「鈴木、ちょっと職員室までいいか」
中間テストの前日、鈴木が先生に呼び出されました。その後みんなが聞いたのは、鈴木がコッソリ職員室に忍び込み、問題用紙を盗んでいたということでした。
「前田さえいなけりゃ、俺がクラスの人気者になれたのに」
職員室から戻ってきた鈴木は、前田に向かって大声で怒鳴りました。そして、鈴木は学校に来なくなりました。
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