「喫煙」をめぐってすれ違い…
「新型コロナウイルスに感染すると、喫煙者は非喫煙者に比べて重症化あるいは死亡してしまう危険性が3倍以上になる(参考:CLINIC FOR/クリニックフォアグループ医師の渥美義大さん監修)」節子さんがそんなニュースをネットで見たのは4月中旬でした。
宏さんは喫煙者で1日、2~3箱も消費するヘビースモーカー。「いつどこで感染するかわからないでしょ?あなただって私に何かあったら困るでしょ?煙草をやめてください」節子さんは一つ屋根の下で副流煙を吸わされることに恐怖を感じ、そう頼んだのです。
宏さんは「ああ、わかったよ。こんなご時世だからな」と二つ返事で承諾してくれたそうです。
しかし、長年染み付いた煙草という習慣をやめるのは簡単ではありません。病院(禁煙外来)を頼る人もいるなか、自力で禁煙を達成するのは難しいのではないか…と筆者は危惧しました。しかも、前々から計画していたわけではなく、コロナ禍という降って湧いたタイミングなのでなおさらです。
やはり筆者の心配は現実になりました。それから3日後。節子さんが帰宅すると部屋中に煙草の煙が充満していたそう。
節子さんは「禁煙するって約束だったでしょ!」と詰め寄ったのですが、宏さんは「お前の前で吸わなきゃいいんだろ!?俺は(新型コロナウイルスに)うつらないように気をつけているから関係ない!」と反論。
感染による危険より、喫煙による快楽を取るような相手に何を話しても無駄…節子さんは夫を再度、説得するのをあきらめ、3台の空気清浄機を購入し、各部屋に設置したのですが、新型コロナウイルスへの対応をめぐって夫婦間の溝が明るみに出た格好です。
相談に来る妻たちの共通点
結婚から27年間。宏さんは結婚当初から喫煙者だったそう。節子さんは長きにわたり、副流煙を吸わされ続けたので、いまさら夫に禁煙させても大差はないだろうと筆者は思います。
しかし家にこもるしかなかった節子さんは、気持ち悪くなるほど大量のネットニュースを浴びたせいで精神的に追い込まれていました。何かしなければ落ち着かないという気持ちもわかります。
筆者は「残念ながら、そういう人間なのでしょう。いまさら変わるとは思えないので…」と苦言を呈したのですが、「うちの家庭はもともとうまくいっていなかったのに、今回の新型コロナで余計にその思いが強くなりました」と節子さんは答えました。
いままで散々悩まされ、苦しめられ、困らされてきた節子さん。その代償として宏さんが得た老後資金で支えてもらうのだから、さすがに離婚は考えていないそう。
しかし、節子さんが今後も我慢に我慢を重ねないと結婚生活が成り立たないのかと思うと、愚痴をこぼす機会がますます増えそうだと言います。
冒頭で述べた通り、新型コロナをめぐる夫婦喧嘩のカウンセリングをしに来るのは夫より妻のほうが多いのですが、共通するのは夫に対する期待値が高いことです。
たとえば、夫は「自分のことを第一」に動くのが当たり前だと思っている節があるので、夫が少しでも怠るとヒステリーを起こします。
そして人一倍、頑張っている自負がある妻も危険です。夫も「同じくらい頑張ってくれるはず」と決め付ける傾向があります。そのため、夫の頑張りが足りないと歩調を合わせるつもりがないと感じるのですが、思い出してください。
いままで夫と話し合い、意見を言い、結論を出してきたのなら、今回のコロナ禍でも夫は期待に応えてくれたでしょう。しかし、これまで夫とまともに話さず、勝手に決め、事後報告してきたのに今回だけ特別というのは無理があります。
コロナ離婚を防ぐには自分は自分、夫は夫のペースがあることを理解し、相手のことを尊重し、そして期待しすぎないことが大事です。
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