自分がしていることの意味を理解していない老人
「そんなの、何があるかわからないじゃないですか。子どもが熱を出して病院に行くことになったらどうするのですか?」
浅野さんの奥さんは「腹が立って仕方なくて、思わず大きな声が出ちゃいました」とそのときの自分を振り返りますが、黙っていられなかったそうです。
そう言われた老人は、顔をしかめながら「そのときは電話をくれたらすぐ行くから」と返したそうで、「そんな問題じゃないですよね」と話を聞いていた筆者がついツッコミを入れました。
「そうですよね」と浅野さんの奥さんはうなずきますが、ここらへんでもう老人は気分を害したことが表情でありありとわかり、その後は「近所なんだからこれくらいいいだろう」「何かあればすぐ動かすと言っているだろう」と話を切り上げたがったそうです。
話しても無駄だと悟った浅野さん夫婦は、それ以上の追求はせずその場は引き下がります。
「悔しかったですよね…」と筆者が言うと、浅野さんのほうはさっぱりした顔で、「いえ、そうなるだろうと予想はしていたので。それより、自分たちがやめてほしい意思を伝えた証拠を残せたのでよかったです」とそのときの会話をスマートフォンで録音していたことを明かしてくれました。
筋を通す自分たちの証拠もまた残すことを考えたのは、いずれ警察のお世話になるかもしれないからで、「これで次の手を打てるようになった」と浅野さんは続けて言いました。
やめてほしいとお願いしたにも関わらず、案の定その日の夜もまた浅野さん宅の前には老人のお孫さんのクルマが堂々と横付けされており、それも写真に撮っているそうです。
「自分のしていることの意味がわからないのだと思います。何でも許されるなんて思っている人と話し合いなんかできないし、こっちはもう、やることをきちんとやって後は対策するだけですよね」
涼しい顔でそう話す浅野さんは、次の日からの具体的な対策について話してくれました。
「停められない工夫」を
浅野さん宅には、2台の自家用車のほかにお子さんたちの乗る自転車もまた2台あります。
普段はクルマの隣に停めているのですが、いまはその2台を駐車場に張るチェーンの前に置き、老人のお孫さんのクルマが停めるスペースを潰したそうです。
「盗難防止に、カバーをかけてタイヤとチェーンを繋いでいます。さすがにこれを動かしてまでは停めないだろうと思ったし、実際それからは無断駐車はなくなりました」
物理的に場所がなくなれば当然無断駐車は不可能なわけで、それをする浅野さんご夫婦に文句を言える筋は誰にもありません。
「自転車をどけろとか言ってくるかなと思いましたが、そこまで図々しくはなれなかったようですね。あと、ほかのご近所さんもうちへの無断駐車を快く思っていない人がたくさんいて悪い噂が流れていたようで、我が家の対策を見て『ほら見たことか』と言い合っていることも聞きました」と、浅野さんは胸を張って言いました。
自転車への嫌がらせなどが不安でしたが幸いそんなことはなく、子どもたちはいちいちカバーやロックをかけることを「面倒くさい」とは言うものの「無断駐車に怒っていたのは同じ」と素直に協力してくれているそうです。
「新しく『無断駐車禁止』のプレートも壁に吊るしています。近所のみなさんが私に会うとこっそり『大変だったね』と言ってくれるので、それが救いですね…」
ため息をつきながら浅野さんの奥さんは言いますが、そこまでしないといけないのがこんなやばいご近所さんとのトラブルであり、我が家のことならしっかりと拒否する姿勢は見せておくのが正解です。
それから老人からは「会釈をしても無視されますね」と浅野さんは笑いますが、そんなことより大切なのは「断固ノーを見せたことでほかのご近所のみなさんと連携が取りやすくなった」ことで、同じように勝手なことをされている家も同じように対策をするのでは、と話していました。
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