戸建てに限らず、アパートやマンションでも隣人との関係は生活するうえで無視できないもの。
気配が近いだけになるべくいい距離感でいたいと思いますが、そんな気持ちが裏目に出て一方的に利用される事態になると、放ってはおけません。
アパートやマンションの場合、管理会社があるのが強みでもあって、トラブルの解決は現状をしっかりと報告することも大切です。
ある女性はお隣さんとの問題をどう乗り越えたのでしょうか。
「愛想のいい隣人」だったはずが…
真奈美さん(仮名/39歳)が念願のマンションを購入したのは、2年前のこと。
狙っていた中古の物件が値下がりし、それまで賃貸のアパートに家族4人で暮らしていたのを心機一転、広くて設備の行き届いているマンションの部屋で生活を始めました。
「お隣さんにご挨拶に行ったのは引っ越しの前日で、うちは角部屋なので隣の1軒だけにしました。50代くらいの女性が出てきて、ここには借りて住んでいる専業主婦とおっしゃっていたのを記憶しています」
会話のキャッチボールができて「愛想のいい人だな」と感じた真奈美さん夫妻は、これからいいお付き合いができることを期待していたと振り返ります。
お隣さんはご夫婦だけの生活らしく、お子さんの気配がないことには気づいていたけれど、「当然ですが赤の他人が詮索することではないので」と真奈美さんは特に気にせず暮らしていたそうです。
たまに廊下で会えば笑顔で挨拶をし、向こうもこちらのことをあれこれと尋ねてこないのが、真奈美さん夫妻には付き合いやすい点でした。
「あるとき、うちが借りている駐車場について『たまにうえの電線に止まっている鳩たちがフンをする』って軽く愚痴ったことがありました。駐車場は平面の青空駐車で、うちは2台借りていること、駐車場の番号なんかもそのときに話してしまいました」
ただの笑い話と思っていたこの場面が、その後トラブルに発展することを、真奈美さんは知る由もありませんでした。
駐車場を勝手に使われると知り…
「異変に気づいたのは次の週からで、うちが借りている駐車場のひとつに誰かが無断でクルマを停めていることが何度かありました。私が在宅で仕事をしているのと、窓から駐車場を見下ろせるので気づいたのですが、気をつけて見ていたら勝手に停めたクルマの助手席からお隣さんが降りてくるのが確認できて、本当にびっくりしました」
最初は、「モヤモヤするけれど、数回なら」と見逃していた真奈美さんでしたが、無断駐車はそれからも続き夕方まで何時間も動かない日もあって、さすがに「放置できない」と夫と話し合ったそうです。
「お隣さんだし、強気な態度に出て関係をこじらせたらまずいと思ったので、『やめてください』とやんわり注意するつもりでした」
日曜日の午前中、夫とふたりでお隣さんのインターフォンを押したとき、対応に出てきたのはやはり奥さんでした。
「『うちの駐車場、◯番ですが、もしかして使っていますか?』と尋ねたら、バツの悪そうな顔をしましたね。あ、無断駐車の自覚はあるのだなと思っていたら、夫が『やめてもらってもいいですか?』と静かな口調で続けてくれて。奥さんは慌てたようにすぐうなずいたのですが、私たちが去ろうとしたら、突然『少しくらいいいじゃない』と半笑いで言い出して、びっくりしました」
驚いて足を停めた真奈美さん夫妻に向かって、奥さんは「知らない人間じゃないのだから。ケチね」と冗談ぽく口にしたそうです。
「ケチと言われて、正直カチンときました」と話す真奈美さんは、「うちはお金を払って駐車場を借りています。クルマを停める場所が必要なら、ご自分で借りたらいかがですか」と冷静な口調で返しました。
それは対立を招くのではなく正しく筋の通った返事で、無断で他人の駐車場を使っている自分を棚に上げて「ケチね」と揶揄してくるお隣さんのほうが、非常識に見えたそう。
奥さんはムッとした顔で黙り込み、真奈美さん夫妻はその場を後にしました。