「お隣さん」の存在は、生活していくうえでどんな機会で関わるかわからず、距離感のコントロールが難しいですよね。
マンションなどと違い戸建ての場合は、外から生活の様子が垣間見えて日ごろの行動も把握されやすく、隣の家の住人から「ちょっかい」を出されることもあります。
すぐ接触ができる距離のために起こるトラブルには、お隣さんの関わり方に問題がある場合も。
ある女性が閉口したお隣さんからの「お願い」とは、何だったのでしょうか。
「おしゃべり好きなだけ」と思っていたけれど…
裕美さん(仮名/45歳)は、同い年の夫と3人のお子さんと、いまの持ち家に住んで15年になるそうです。
周囲も戸建てばかりでファミリー層が多く住んでおり、静かで環境がいいところを裕美さんは気に入っていました。
戸建てといっても建主が賃貸物件として人に貸している家も多く、裕美さんの隣の家もそうでたびたび住人が変わるのを見てきました。
転勤族のご家族が数年で出ていった後に入居したのが現在のお隣さんで、自分たちと同じような家族構成で最初の挨拶から話が盛り上がったことを、裕美さんは覚えていました。
「奥さんは、明るいけれどこちらのことにけっこう踏み込んで質問してくるタイプで、その代わり自分たちのことも何でも話すような、おしゃべり好きな人だなという印象でした。私がパート勤めだと知って『私もよ!』と勤務先のことまで尋ねられ、ちょっと慎重になりましたね」
お隣さんだから仲良くはしたいけれど、最初からプライバシーを伝えすぎるのは、裕美さんにとっては抵抗がありました。
細かい情報は伏せる裕美さんの様子に奥さんが何かを感じ取ったのかどうかはわかりませんが、引っ越しの挨拶が済んで以降は、特に訪ねてこられることもなく平穏だったといいます。
それが、なるべく顔を合わせることすら避けているいまの状況になったのは、この奥さんから申し出のあった「お願い」が原因でした。
「ついでに」買い物を頼むお隣さん
「私は小さな会社で経理のパートをしていて、午後2時に退勤したら一度帰宅してスーパーに買い物に行くのが習慣です。自分のクルマがあるのですが、駐車場を出入りする音がお隣さんに聞こえるのか、あるときたまたま外にいた奥さんに『いつもこれくらいの時間に出かけるよね』と言われました」
そのときは素直に「買い物に行くところで」と答えた裕美さん。
すると、「クルマがあっていいわね。うちは1台しかなくて夫が使うから、私は買い物はいつも自転車なのよ」とお隣さんが話を始め、雨が降ると大変とか遠くに行けないとか愚痴を聞いて終わったそうです。
そんなやり取りがあった数日後のこと、裕美さんが職場から帰宅するとすぐ玄関のインターホンが鳴ります。
モニターを見ると隣の奥さんが立っており、「また長話になったら困るな」と思いながら応対に出た裕美さんは、思いがけない言葉をかけられました。
「いまから買い物?」といつもと同じ様子で話しかけてくる奥さんにうなずくと、「じゃあ、ついでにヨーグルトとこんにゃくを買ってきてもらってきてもらいたいんだけど…いい?」と、無邪気な声で続けられ、裕美さんは驚きます。
「『ついでに』って言葉が一番引っかかりました。私は2日に一度は買い物に行くけれど、それに当たり前のように乗っかるのがちょっと信じられなかったです」
その日は小雨が降ったり止んだりの天候で、お隣さんが買い物に行きづらいことは想像がついたけれど、「だからといって、私が行くタイミングを狙って訪ねてくるのが、何と言うか図々しい気がしましたね」と、裕美さんは当時を振り返ってため息をつきました。