そこに居を構えて生活を続けていれば、避けて通れないのがご近所さんたちとの接触です。
ペットの散歩など定期的に外を歩く機会があると、それがきっかけで近くの人と知り合うこともありますよね。
いい距離感でいられると思ったのに、相手が一方的に約束などを押し付けてくると、楽しいお付き合いは難しいもの。
ある女性は何が原因でご近所トラブルに発展したのか、実録をご紹介します。
犬の散歩で知り合った「ご近所さん」と…
中古の家を購入し、リフォームが完了してから家族で引っ越してきたという浅川さん(仮名/40歳)。
なじみのある土地ではないけれど、夫と自分の実家の中間にあり、「どちらにも行きやすい」ことからみんなで話し合って決めたそうです。
「昔からそこに住んでいるって感じの家が多く、静かで治安がいいのが決め手でした。うちはクルマが2台あるので広い駐車場が必要で、街寄りになると中古でも高額になるからなかなか手が出せなくて…」
3人のお子さんも環境を気に入ってくれて、新生活は問題なくスタートしたといいます。
浅川さんのお宅では「ルイ」ちゃんと名前のついた小型犬を一匹飼っており、朝晩の散歩は浅川さんか子どもたちの役目で、引越し後しばらくは浅川さんが「近くを知りたいから」とあえて引き受けていました。
クルマで見るのと歩くのでは風景が変わり、自分のところと同じようにペットを飼っているのがわかるお宅を知ると、どこかホッとしたそうです。
ある夕方、いつものように数百メートル先の公園を目指してルイちゃんとお散歩に出かけたとき。
「歩道を歩いていると先日からよくお見かけする女性のかたがいらして、挨拶をしました。先日引っ越してきた者ですと自己紹介をしたら、向こうもこの近くに家族で住んでいることを明かしてくれて。連れているのはコーギーで、毛並みがよく元気いっぱいの感じでした」
おそらく50代くらいと想像したその女性は、浅川さんの印象では「おっとりした話し方で特に威圧感などなく、会話も続くし話しやすい雰囲気だった」と言います。
この時間帯にお互いよく散歩させていることがわかり、犬にとって毒のある草が生えている道や外飼いの犬がいて避けたほうがいいお宅のことなど、「いろいろと教えてもらって助かった」のが、そのときの浅川さんの気持ちでした。
突然の「提案」に…
それから、その女性とはほぼ毎日散歩のたびに道端で顔を合わせるようになり、近くでまだ親しくできる人がいなかった浅川さんは、「気軽に話せるご近所さんができてうれしかったです」と振り返ります。
犬の話題が中心なら会話に困ることもなく、数分立ち話をして去るくらいの距離感が、浅川さんには居心地のいいものでした。
「話していれば、お互いの人となりみたいなものもある程度はわかってくるし、うちの事情などあれこれ詮索してこないところもいいなと思っていました。ワンちゃんを大事にしていらっしゃるのも伝わるし、いい人と出会えたって夫にも話していたんです。それが、どうしてこうなったのか…」
そう言って肩を落とす浅川さんが体験したのは、この女性の「約束のゴリ押し」でした。
あるとき、いつものように話していると「毎日会うのだし、これからは待ち合わせをしましょうよ」と女性から突然の提案を受けます。
「道端で待っていると、自転車とか通るから危険なの。できればあそこの公園でこの時間に待ち合わせができたらうれしいのだけれど」
あくまでも穏やかな言い方だったと繰り返す浅川さんですが、「待ち合わせとなるとさすがにプレッシャーを感じてしまって…」と、お約束は難しいかもしれませんとやんわりお断りします。
浅川さんは事務のパートとして午後はある会社で働いており、繁忙期は急な残業が入ることもあれば帰りに買い物をすることも多く、「そのときに同じ時間帯に散歩をしているのはほとんど偶然に近い」感覚だったそうです。
そんな事情も説明して、「タイミングが合えばこうやってご一緒したいですね」と笑顔で締めたといいます。
それをどう受け止めたのか、女性ははっきりと「わかった」という返事はせず、「それじゃあ、またあしたね」と柔らかい表情で帰っていきます。
「待ち合わせは無理ね、とならなかったのが不安ではあったのですが、私の言葉は聞いていたはずだし、大丈夫だろうとそのときは思いました」
次の日はたまたま買い物があっていつもの時間に散歩には行けず、普段より遅くなったためかその女性を見かけることはありませんでした。