偏っている「負担」のこと
「お金がなくて出せないのなら、妹夫婦と長女にはっきりとそう言えばいいじゃないか」と言う夫の言い分はもっともで、身内なら収入を隠すこともないだろうとミサキさん自身も思ったそう。
普段から義実家にはお金をあれこれと出している状態で、それに加えてお年玉まで負担するのは、さすがに図々しいのではと筆者も感じました。
ところが、義母は「せっかく来てくれるのに、お年玉もないなんて恥ずかしいじゃない!あなたたちは渡すのにうちは出せないなんて、みっともなくて言えないわよ」と夫の言葉を一蹴します。
「義母の気持ちもわかるのですが、それならうちも渡さなければいいなんてことにはならないじゃないですか。何でもうちに要求するのはおかしい、と夫は何度も返していました」
さすがに借金をしてまで用意しろとは思わないけれど、同じ市内にいる長女も家庭を持ち生活しています。
夫と自分より年下の長女のご夫婦とは滅多に顔を合わさないとミサキさんは言いますが、心のどこかで「どうして長男のうちだけこんな出費を負わされないといけないのか」と、小さな不満はくすぶっていたそうです。
それについて夫に伝えたことはないけれど、そして夫自身もそんなことは口にしないけれど、きょうだいの間で偏る負担については、今後もっと大きな問題になるのではとミサキさんは考えていたと言います。
それでも義母は「どうしてもお年玉を渡したい」と譲らず、結局はミサキさん夫婦がその出費を引き受けることになりました。
変わったこと
ミサキさんと夫には義母の妹夫婦やその長女、お子さんたちをあたたかく迎えたい気持ちがあり、それを優先して義母たちが渡すぶんまでお年玉を用意することを決めました。
このとき、夫は「一度きりだぞ」と何度も義母に念押しをします。
「義母たちに恥をかかせたくないという気持ちも多少はありました。でも、私たち夫婦がこのお金を出したことを絶対に黙っているだろうなと思ったし、今回は許すとしても『次からは自分たちで用意する』と夫ははっきりと義母に言わせていましたね…」
電話でのやり取りでしたが、いつになく真剣に怒りを見せてくる息子の様子にひるんだのか、義母はおとなしく「ごめんなさいね」と言ったとミサキさんは聞きます。
いままで何を買わせても「ありがとう」の一言で済ませ、負担について謝罪することなど一度もなかったという義母ですが、今回は完全に自分たちのわがままであり金額も大きいことは、さすがに無視できなかったのではないでしょうか。
「3人にはそれぞれ1万円ずつ用意しました。我が家より高いですが、仕方ないですよね。ポチ袋も義母たち用に別のものを買いに行って、本当に何をしているのだろうと虚しかったです」
それでも、お正月になりみなさんを迎えて過ごす時間は、ミサキさんにとっては楽しいものだったと言います。
ポチ袋を見たお子さんたちは笑顔で受け取ってくれて、妹夫婦や長女からも何度も感謝の言葉があり、「それが救いでした」とミサキさんは振り返ります。
気まずかったのは義母との間に流れる空気で、ミサキさん以上に夫がそっけない態度をとっていたことは、その後のお付き合いにも影響しました。
義実家とはこのお正月以降連絡の頻度が減り、食事の一方的な誘いもなくなったそうです。
何かあればもちろん夫とミサキさんに真っ先に電話がありますが、「義母と話していて何となく感じたのですが、長女さんと連絡を取り合っているのかもしれません。夫を頼りにくくなったら、次はそこしかないですよね」と、ミサキさんはため息をつきました。
長女の家も同じく負担を強いられているとしても、それはミサキさんご夫婦の問題ではなく義実家と長女の間でまずは解決することです。
「義実家のことなので、私は夫の気持ちを最優先するつもりです。お年玉の件で夫も両親との向き合い方が変わったのはわかるし、これからは距離を置いて接していきたいですね」
こんな非常識な要求は家族仲に不穏な影を落とすことを、義母たちはもう少し考えるべきではないでしょうか。
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