結婚すれば、夫の両親や義実家とのお付き合いが生まれ、「新しい家族」としてあたたかい関係を築いていけるのが理想ではあります。
どんな人間関係でも自分ひとりで完結できるものはなく、義母たちや義実家とのつながりをよくしていくには互いの努力が欠かせません。
こちらがそう思っていても相手が一方的に線を踏み越えてくるときが厄介で、ストレスに耐えられなくなる前に「No」を伝えるのも自分のため。
ある女性は、身勝手な義母にどんな対応をしたのでしょうか。
「頼れる義母」ではあったけれど…
裕子さん(仮名/33歳)は、保育士として働きながらふたりのお子さんを育てています。
2年前に結婚した夫とは3年の交際期間があり、義母や義父とも何度も会っていて入籍について特に反対されることもありませんでした。
近所のスーパーにパートとして勤務している義母への印象は、パワフルで自分の意思を大切にする人。
裕子さんが結婚後に仕事を続けることも、「私もそうだったし、いまの時代は共働きが当たり前よ」と応援してくれたそうです。
「頼れる人って感じで、夫の彼女として付き合っているころからいろいろとよくしてくださいました。それには感謝しているし、結婚後もいい関係でいたいと私は努力していたつもりです」
ため息をついてそう振り返る裕子さんが悩んでいたのは、入籍して義実家からクルマで数十分のところにあるマンションに入居してからの、義母の振る舞いについて。
義母は、自分たちがいないときに連絡せずに勝手になかに入り、買ってきたものを冷蔵庫に入れたり掃除をしたり、裕子さんが帰宅すると「おかえり」とリビングでお茶を飲んでいたり…。裕子さんは、「鍵を預けたのが間違いでした…」と繰り返します。
「夫が不規則な勤務で家を空ける時間が長く、私も仕事で遅くなるときも多いので、荷物の受け取りなどを代わってもらうためにと鍵を渡すことを夫が決めました。そのときは義母の常識を信じたというか、自分たちがいないときに入るなんて事態は考えていませんでしたね…」
義母の人間性を信用していたことが裏目に出る結果となり、堂々と出入りする義母への対応がだんだんとストレスになっていったそうです。
自分たちの状態に疑問を持たない義実家と夫
義父は正社員として大きな会社に勤務しており、平日は話す機会もないそうですが、義母の行動については義実家に遊びに行ったときに話題にしたことがありました。
「でも、『それくらいはいいだろう』って簡単に言われて、昔はお互いの家を行き来するのは当たり前だったと義母のしていることに疑問を感じないようでしたね。これはダメだと思い、夫からそれとなく勝手に入らないよう言ってもらおうとしたのですが、夫は自分の母親が家に来ることに抵抗はないようで…。『別に見られてまずいものはない』って言うので、そんな問題じゃないと言ったのですがわかってもらえなかったですね」
夫には自分の親でも裕子さんにとってはやはり他人であり、自分がいないときに寝室を覗かれることなど想像すると「いい気分はしませんよね」と、暗い表情でつぶやきます。
自分の感覚がおかしいのかと同僚に相談すると「え、それは旦那さんもおかしいでしょ」と驚かれ、義実家の考え方は現代にそぐわないことを改めて感じたそうです。
それでも、嫁の立場である自分から「鍵を返してほしい」と言い出すことは難しく、仕方なく貴重品を入れる金庫を購入したり寝室を常に掃除したり、余計な手間をかけながらお付き合いを続けていました。
それが終わったのは、ある日裕子さんが料理をしようとキッチンの戸棚を開けたら、お気に入りのお鍋が消えているのを知ったとき。
「義母が持っていったに違いない」とすぐに気がつき電話をすると、「ああ、よさそうなお鍋だったからちょっと借りようと思って」と、悪びれた様子もなく明るい声で返す義母に、「心底引きました」と裕子さんは強い口調で言いました。