調停での夫の異常さ
「弁護士は調停について、家庭裁判所で誰でも利用できること、費用は相手方に送る書類の切手代や裁判所に収める印紙などで数千円かかることなど、丁寧に説明してくれました。
自分が私の代理人として調停に参加することはできるけれど、弁護士費用が発生すること、調停は裁判と違い私も必ず同席する必要があることなどもわかりました。
『話が進まず自分たちだけの力では解決が難しいと思ったら、代理人の依頼を考えてください』と優しく話してくれて、この弁護士さんにはその後も何度もご相談することになります。
自分たちでも調停の申し立てはできるとわかり、家庭裁判所に向かい、改めて手順や切手代のことなど聞いて用意し、書類に記入しました。
私がいま住んでいる実家の住所を知られずに手続きができる、とわかったときは本当にほっとしましたね。夫は結婚前も後も『忙しくて時間を作れない』と私の実家に来ることはなかったのが、このときはよかったと思いました。
これで夫のもとに裁判所から調停の相手方になった通知が届く、夫は必ず来て反論してくるだろうと思い、それと同時に私や娘の身辺の安心も忘れてはならず、一回目の期日が来るまでは外出は避けてひたすら家に閉じこもっていました。
一回目の期日は、娘を母に預けて裁判所へは父が付き添ってくれて、受付で相手方である夫と顔を合わせる危険性がないよう待機する部屋の階から違うことを教えてもらい、ほっとしました。
そうして始まった調停では、夫は案の定『妻は育児ノイローゼで妄想がひどい』『こっちは一方的に加害者にされている』と調停委員のおふたりにまくし立て、『今回の家出は妻に責任がある』と離婚は絶対にしないと言い放ったそうです。
このころの私は、夫から物理的にも心理的にも離れたことで自分の置かれていた状況が客観的に見えてきており、暴力は本当だしモラハラも大げさではないという実感が強くありました。
その証拠として、調停委員のおふたりにつらい気持ちを吐き出していたノートを提出しました。
ノートは数冊あって日付も入っており、なかには涙が落ちて文字が滲んでいる箇所もあります。
それを開く勇気はもう残っていなかったのですが、調停委員のおふたりは静かに目を通してくれて、『大変でしたね』と言葉をかけてくれました。
夫はこのノートの存在を知らないから好き勝手なことが言えている状態で、調停委員のおふたりは夫に私が書き記していたことは告げず、具体的な日付を加えて『こんなことを奥さんに言っていますよね』『このときに奥さんの背中を殴っていませんか』と具体的に尋ねたそうです。
何か証拠があって風向きが変わったとすぐ察したらしい夫は、『言ったかもしれないが、そんなことを言わせる妻が悪い』『殴ったのではなく手が当たっただけ』と、苦しい言い訳に終始していたと聞きました。
まさに腸が煮えくり返る思いでしたが、生活費について、『あなたが主張する金額と奥さんがつけていた記録にだいぶ開きがあるし、奥さんの記録のほうはきちんと収支が合っている』『奥さんが無駄遣いをしたと言いますが、その証拠はありますか?』『お金がないと言う奥さんに、手をあげる以外の対応はなかったのですか?』と逃げ場のないところを突いてくれました。
それでも、夫の態度はずっと『自分は悪くない』で、離婚も絶対にしないという姿勢は変わりませんでした」