デザインフェスタとの出会い
僕がデザインフェスタに初めて足を運んだのは大学進学を機に上京した、大学1年生の秋に開催された回でした。
きっかけは、当時参加していたイラストサークルを通じて出会った年上の女性ふたり組がデザインフェスタへ出展をするというので、それを見に行ったこと。
当時は、「アートイベント」と言われても、正直いまひとつピンときませんでした。
行ったことのある大きなイベントといえば、オタクらしく同人誌の即売会くらい。はっきりと想像できないなりにおそらく絵やイラスト、彫刻を展示したり売り買いするイベントなのだろうくらいに考えていました。
何も知らないままビッグサイトに足を踏み入れ、僕は尽く(ことごとく)圧倒されることになります。
当時の開催は東京ビッグサイトの西1〜4エリア。1階と4階をフルに使った広い空間に所狭しと出展ブースが敷き詰められ、どのブースもただひたすらに好きなものを好きなように表現していました。
それぞれの展示や販売からは、表現することが心から好きなのだとわかる熱を感じ、熱は混ざり合い会場内で大きな熱気となっていました。
生まれて初めて目にした、大きな真っ白いパネルに筆を走らせる迫力あるライブペインティング。
目の前で自分の背丈よりも遥かに大きなパネルに作品が描かれていく様子からは目が離せませんでした。
畳1畳か2畳ほどのブースで披露されるコントや落語もおもしろい。ランウェイではファッションショーが繰り広げられていて華やか。映像作品を延々流している出展もありました。
来場客は思い思いに立ち止まり、ブースによっては見物でちょっとした人だかりになっています。
人だかりの間を縫うように進むと、展示だけでなく出展者によって販売されている作品も目に飛び込んできます。
販売作品も種類は多岐にわたり、額装された絵画・イラストもあればアクセサリーや服、立体作品、ポストカードなどの紙ものなど。
どれもが普段買い物をする一般の小売店ではお目にかかれない、個性的なデザインのものばかりで脳が情報量に追いつかず、オーバーヒートしてしまいそうでした。こんな場所地元にはないし、地元では買えないものばかり。
驚くべきは出展者側だけではありません。通路を行き交う来場者は僕の地元では「おかしい」「変なの」と言われると感じたそれらを、批判するどころか「おもしろい」「かわいい」「いいね」と肯定的な言葉を向けています。
当たり前のようにそこかしこで飛び交っていて、出展者は表現することを、来場者はそれを受け取ることを楽しんでいるようでした。
ここでは“好き”を否定されない。
上京してもなお、まだ地元にいたころの「変わってる」と嘲笑される感覚が抜けなかった僕は頭をガツン!と殴られたような感覚になりました。
ここは僕の「好き」が居てもいい場所かもしれない。僕がどこか後ろめたく感じていた「好き」はなにもおかしくなかったのか。
何かを書いたり作ったりして表現することも、何かを楽しんで表現している人も好きだと気づかせてくれたのは、デザインフェスタの出展者と来場者でした。