2023年11月11日、12日の2日間にかけて東京ビッグサイトで行われたアジア最大級のアートイベント「デザインフェスタ vol.58」。
とある出展ブースで購入したマフィンを食べた複数の客が腹痛や嘔吐の症状を訴えたため、SNSを中心に大きなニュースになりました。(参考:朝日新聞デジタル)
報道番組を通じて初めて「デザインフェスタ」というイベントを知ったというかたも少なくないのではないでしょうか?
今回はデザインフェスタに10年以上足蹴く通う筆者が通い続ける理由を、ひとりのティーンがデザインフェスタに救われたエピソードを通してお伝えします。
SNSでの誹謗中傷は別として、出展側が被害者へ真摯に向き合っての解決を望んでいることを前提に、読んでいただけると幸いです。
「デザインフェスタ」とは
デザインフェスタ有限会社が主催するアートイベント。年に2回、2日間かけて東京ビッグサイトにて開催され、2024年5月開催でvol.59。
出展ブースは6500設けられ、来場者数は2日間で約10万人、規模はアジア最大級と言われています。
開催に際し、デザインフェスタは運営として『全ての「表現したい」を応援します。』と銘打ち、オリジナル作品であればプロ・アマチュア問わず自由に表現できる場を提供することと、アーティストと来場者を繋ぎ、誰もが心に持つ「表現したい」気持ちを応援することを掲げています。
周りと違う子ども
30年と少し前、関東の田舎町でセクシュアルマイノリティの僕は生まれ育ちました。
「トキちゃんって、変わってるよね」
いま心の性別を男女どちらにも定めていない僕は、子どものころから自分の身体の性別に違和感があり、自分が興味を示すものも同年代の女の子とは異なると感じていました。
リボンやフリルのついた女の子らしいとされるものよりも、中性的なものや比較的男の子に好まれるようなデザインや作品が好きで、小学校就学前には自分が好意を示すものに対する周りの反応が芳しくないことにも薄々気づいていました。
その反応は同年代の子どもである友人たちからだけではなく、母からも向けられるものでした。
僕を若くして産んだ母は、綺麗な女性だったと思います。
田舎町のなかではかなりファッションが好きな方で、おそらくセンスも悪くはなかった。セクシュアルマイノリティの自分にはない、身体の性別にあった好みと容姿。
自他ともにセンスがいいとされていた母から向けられる「トキちゃんはお母さんとセンスが違うから」という一言は、いまも嘲笑として頭の奥にこびりついています。
クラスの中心にいるタイプの母と、端っこでマンガを描いているタイプの僕とでは好みも全く違う。
さらに当時は、いまほどオタク趣味が一般的に認識され、受け入れられる時代でもありませんでした。
僕がなにかを好きになる度、母は「またそんなの好きになって」と口にする。
だから僕はずっと自分の好きなものは周りに共感されないことが当たり前で、それが思春期の年齢特有の「自分は周りとは違う、特別なのだ」という気持ちにさせる反面、理解されないことが寂しくもありました。