肌に一番近い場所にある衣類、ランジェリー。いつもどんな風に、どんなことを考えて下着を選んでいますか?
デザインの好み、重ねる衣類に響かないことや補正力、男性なら通気性などの機能性でしょうか。
今回は下着にこだわりがあるかただけでなく、“なんとなく”で下着を選んでしまっている人にも読んでほしい、ランジェリー店を舞台に描かれる漫画『ランジェリー・ブルース』をご紹介します。
ランジェリー・ブルースのあらすじ
主人公の深津ケイは、34歳の派遣社員。派遣先の契約満了時期は近づき、7年間交際している彼氏は自分から結婚の話題を出そうとしません。
仕事も彼氏も自分で選んできたはずなのに、歯車はうまく噛み合ってくれなくて…。そんなとき、紹介された下着店で、運命だと感じる下着と出会います。
この出会いをきっかけに派遣会社を退職、下着店の販売員としてケイは新たなステップへ。
ランジェリーを通して自分と向き合い、自分を大切にすることを描いたツルリンゴスターさん最新作のコミックスです。
下着(ランジェリー)という存在
主人公のケイは自分で選んだはずの派遣先での仕事や、長く交際した彼氏との関係性、そしてそのなかにいる自分すら距離を感じていました。
そんなときに同窓会のしらせが舞い込み、着ていくドレスに合わせた下着を新調しにランジェリーショップ「タタン・ランジュ」を訪れ、運命の下着と出会います。
いや、正確には、タタン・ランジュで働いていた柳(やない)によって出会わせてもらいました。
柳の見立てで、形やデザインの異なるさまざまなブラジャーを次々にフィッティングしていくと、初めは言われるがままだったケイにも、着けていて心地いいものとそうでないものが少しずつわかるようになります。
そして10着程試した最後の1着に、「死ぬほど私に似合う」とまで感じてしまったのです。
いままで選んでこなかったデザインと心地よさを身に纏うことで、遠くに離れてしまってた自分を自分でつかまえた感覚を覚えたのでしょう。
それは言い換えれば、自分自身のかたちを「これだ」と認識する感覚。僕はそれを、男性用のボクサーパンツを初めて履いた日に感じていました。
女性の身体で生まれ、いまはXジェンダーというセクシュアルマイノリティで、心の性別を男女のどちらにも定めていません。
メンズファッションが好きで、仕事の日も休日もメンズファッションで過ごすことがほとんど。下着もメンズのボクサーパンツを愛用していて、不本意ながら胸が比較的豊かなので小さく見せるブラジャーを着用しています。
20代の中頃までは女性的な雰囲気の色濃い「ランジェリー」を着けていましたが、デザイン問わず自分が身に着けるものとして違和感があり、あまり好きになれませんでした。
当時試しに買ってみたメンズのボクサーパンツを履いたとき、いままでになく心にしっくりきて「これこそが僕用の下着だ」と思えて嬉しくなったものです。
ケイが出会ったブラジャーによって、自分をつかまえた場面でそのときのことを思い出し、思わず溜息がもれました。