そこに長く住む限り、避けづらいのがご近所付き合い。
特に「お隣さん」は、生活の状態が伝わりやすく、ちょっとしたことでも関心を引いてしまいがちです。
実際に住んでみないとわからないのがお隣さんの実態でもありますが、ある女性は意外なクレームを突きつけられて困惑しました。
こちらの意思とは無関係に起こるトラブルについて、あるケースをご紹介します。
引っ越してきた「お隣さん」
優花さん(仮名/40歳)がその戸建てに引っ越したのは3年前。
賃貸物件ですが、住宅街にある一戸建てで駐車場も広くて、家族ですぐに決めたそうです。
周囲も一軒家が並ぶそこは、夜も静かで自分たちと同じように家族で暮らしている人が多いと不動産会社から聞いたことも、決断の理由でした。
「当時は、右のお家が空き家になっていました。そこは別の不動産会社が管理していて紹介はされなかったのですが、いま住んでいるこの家が目的だったので、特に気にしてはいなかったですね」と、そのころを振り返る優花さんですが、その家も半年ほど前に新しい入居者が決まります。
そのときの様子を尋ねると、「奥さまがご挨拶にいらっしゃいました」と記憶をたぐる優花さんは、いまのようなトラブルが起こることは想像もしていなかったと言います。
お隣さんも優花さんと同じく家族で引っ越してきており、お子さんはひとり。「うちは小1と小5の兄弟がいます」と優花さんが伝えると、「うちはまだ保育園ですが、同じ学校に通うのですね、よろしくお願いします」と丁寧に返してくれたそうです。
奥さんはすごく明るいという感じではないけれど、目を見てきちんと会話ができお互いの自己紹介もスムーズに進んだことから、いいお付き合いができるだろうと優花さんは思いました。
それからも、庭で会えば挨拶をして軽く世間話をするなど、ほどよい距離感で接する日々だったといいます。
ささいな不安
「いま思えば、お隣さんはうちより少しお子さんに厳しい感じがしましたね」と優花さんが言うのは、たまに庭から聞こえてくる「おもちゃを出しっぱなしにしないの!」「これはどうするの!?」という奥さんの強い声で、それに渋々と答える息子さんの様子も伝わっていたそうです。
「でも、うちだって大きな声で子どもたちに片付けを迫るときはあるし、息子さんは会えば明るく挨拶をしてくれるし、家庭に問題があるとかそんな感じではなかったです。ただ、奥さんと話しているときにちょっと気になることはありました」
それは、「子どもに見せるテレビ番組は教育系のものだけで、アニメなどはいっさい触れさせない」と言い切る奥さんの姿でした。
その理由が「アニメや漫画が悪いとは決して思わないけれど、小さいうちは勉強とか心の教育とかに力を入れたい」というもので、それ自体は納得したという優花さん。
「我が家は子ども向けのアニメなど普通に見せていましたが、それを言っても嫌な顔をするとか否定するとかはなくて、『人は人』って割り切っているのが伝わりました。『しつけも大事ですよね』って軽く話す程度で終わったのですが…」
優花さんがお隣の奥さんに「かたくなさ」を感じたのは、子どもが流行りのアニメの服を着ているときに庭で会うと自分の子どもをすぐ家のなかに入れようとすることで、「目に触れさせるのも嫌なのかな」と、何となく気まずさを覚えたそうです。
それでも、お互いの教育方針の違いと優花さんは思い、大きく気に病むことはなく過ごしていました。