みなさんこんにちは。飼い主たちが「犬を理解する」ために必要なことをメルマガでご紹介している、Masumiです。
現実に起きた事件や事故、海外の犬事情など、日本では報道されないこと、私が体験したことを中心に、知っておいてもらいたいことをお話ししています。
みなさん、「犬を読む」はできていますか?
犬を読むというと、多くの人は犬の「ボディーランゲージ」について学ばれると思います。
犬が尻尾を振っていると楽しい、犬の尻尾が落ちていれば楽しくない、または怖がっているとか。カーミングシグナルはどうかとか。
犬のボディー(体勢)や仕草を、人間の「気持ち」に当てはめがちですよね。
楽しそう、悲しそう、怖がっている、怒っている…どれも感情表現に直結して考える人がほとんどです。
そして、私のメルマガを読まれている方は、「心理」について少なくとも理解をしようとしている人が多いはず。
気持ち=喜怒哀楽で表現できます。でも、心理はもっと生物学的で医学的精神状態のことを表します。
たとえば、医者は「お腹が痛い!」と訴える患者の気持ちを見ますか?
お腹が痛い患者は、苦しんでいます。少なくとも楽しい気持ちであるはずはない。痛いのだから、苦しい、そして怖い、あるいは痛みに対して腹立たしい人もいるでしょう。
でも、医者はどこを見ますか?痛みで苦しくて泣いている患者の気持ちに寄り添う前に、冷静に病気の原因を突き止めなければなりません。治療を施さなくてはなりません。患者の感情に振り回されて同調していては、何もできませんよね。
患者の気持ちに理解を示すことは大事なこと。ですが、そもそも気持ちとは「精神状態」の表れですから、表面的に見える患者の感情より、その感情を作り出している心理状態を冷静に把握する必要があるのです。
表情や態度に表し、しっかり主張する犬。人間はどうか
毎月末に行っているZoomアカデミーでは、動画を使って犬の「心理」の理解を深めてもらっています。
以前のアカデミーで使った動画をひとつご紹介します。
さて、こちらの動画ですが、このハスキーが何を言わんとしているか、おわかりになりますか?
この動画を見たときに、みなさんはどこを見ましたか?犬の体の部位をひとつひとつ見ましたか?見ていないでしょう。でもわかりますよね?
全体を見て、一瞬で理解したはずです。犬の姿勢やら態勢、犬の目、耳、歯とかひとつひとつ見ていないのではないでしょうか?
そう、特別犬について勉強していなくても、読めているということ!自信を持っていただきたいです。
つまり、犬を読むために知識として犬のボディーランゲージを丸暗記したところで、それらをひとつひとつ当てはめて犬を読む重要性がいかに低いか…ということ。
この動画ですが、ほとんどのみなさんは、ハスキーが何を訴えているのかおわかりになるはず。何を伝えようとしているのか…ハスキーの主張していることを感覚で理解したはずなんです。この動画から一瞬で得た情報の処理ができたからわかるのです。
人間もある種、動物ですから、身の危険を察知する能力はあります。勘が働きます。
耳を使えば犬の唸り声が聞こえ、目で確認すると犬の目が怒りに満ちていて、犬の前には餌がある。そういう情報を、一瞬でみなさんが処理できたわけですよ。
犬を知らない人でさえ、この犬の主張は理解できるはずです。
犬は言葉を使いません。体を使って、はっきりと人間がわかるように訴え、主張しています。
このハスキーを読めた理由は、ハスキーのはっきりとした態度があるからですよね?
「これは私の餌だ」「近づくな!」と言っていますでしょう?聞こえますよね?
ボディーランゲージを知識として机のうえで勉強して暗記した場合、それに当てはめようとする時間を使います。
ということは、タイムラグが生じます。「感じること」の方が、当然早いわけです。
さて、こうやって犬は人間にわかるように自分がどうしたいか、人間に何をしてほしいのかを、しっかりと表情や態度に表しています。
では人間はどうでしょうか?
言葉は、犬にとって重要ではない
言葉、コマンド(「座れ!」や「伏せ!」など)を使う人は多いですが、犬にはっきりと自分がどうしてほしいのかを伝えていますか?犬に自分がどのように映っているのか、想像したことがありますか?
以前メルマガでお話ししたのですが、「言葉を辞めましょう」ということです。言葉は、犬にとって重要ではありません。態度が重要なんです。
私は、口が開いている状態、閉じている状態、体の固さ、しっぽの位置、振り方、耳の位置、オデコの狭さなど、犬の大まかなサインを動画を用いて解説しています。
その動画では、犬を取り巻く状況というものが必ずあって、そのときどきの犬の表現、意志表示というものが違うわけです。
ですが、躾本などにイラストで描かれている犬のサインなどの多くは、犬の状況を無視した表現がされています。
耳が後ろに寝ていればサミッシブの状態、犬が怯えているというようなイメージのイラストで解説されたりしていますが、先ほどの動画のハスキーはどうですか?
耳が後ろに寝ていますよね?
犬のボディーランゲージが説明されている本やポスターの多くは、耳が後ろに寝ている場合、怖がって怯えているように解説されているものがほとんどではないでしょうか?
このハスキーの動画の場合は、餌があります。もっと言えば、その餌は犬の逃げ場がない場所に置かれています。
さらによく見ると、このハスキーのものであろうクレートのようなものが映ります。ブランケットも敷いてある…ということは、ここはハスキーのスペース。
このハスキーは怯えているのではありません。耳が寝ているとしても、攻撃態勢であることはおわかりになりますよね?状況ありきだということです。
犬を学びたい人に必要なことは、暗記ではなく、情報ではなく、動く犬、表現する犬を感じることが大事。空気を読むという表現が当てはまりますね。
続いて、こちらの動画を見てください。最初の2分あたりは重要ではないので、飛ばしてもOKです。2分あたりから、飼い主からシーザーに相談が始まります。
このご夫婦が飼っている犬、シェパードの仔犬ですが、「言うことを聞かない」という相談でした。
女性は妊娠されています。生まれてくる子どものことを考えて、いまのシェパードをコントロールできないことに不安を感じているそうです。
ここからは、シェパードをコントロールするシーザーの動きを解説します。
3:32、犬がクレートから出てきます。サンドイッチを手にしたシーザーは、お約束の「シ!」という音、指で犬を触る(指ツン)というコレクションを入れます。
3:36、3:38あたり、シーザーは2回目のコレクションを入れていますが、そのときのシェパードを見てください。
尻尾を振っていますでしょう。コレクションをいれたシーザーに対して尻尾を振っています。ということは、シーザーと犬の間でコミュニケーションが取れていないということです。
シーザーは、犬にサンドイッチを食べてほしくないわけです。犬はというと、食べたいわけです。
3:41あたりで、3度目のコレクションをシーザーが犬に対して入れますが、犬はどうですか?サンドイッチを諦めましたか?
4:11で、今度はメニューが変わります。さきほどのサンドイッチよりも魅力的なものになります。
4:13、シーザーがコレクションを入れますよね?4:15、犬は諦めるどころか、吠えて反発しています。
そして10秒ほどで、犬はその場を離れました。このとき、シーザーは皿を手に持っています。つまり、食べ物がシーザーの所有であることを理解したわけです。
その後、シーザーは床に皿を置きました。床にあるものは、誰のものでもありません。まだ、所有者がない食べ物なんですね。
そこから10分です。10分かかって犬が床に寝そべりました。
10分の間、犬が混乱したわけですよね。このとき、シーザーがなぜ10分間待ち続けたのか私にはわからないのですが、これだと犬が諦めるまで待ったということになります。
シーザーが使っている「スレンダー(Surrender)」という言葉は、「降参、完敗」という意味です。
シーザーは、犬が10分後にスレンダーになったと飼い主に犬の心理を説明しておりますが、果たして本当にそうでしょうか?
私はそう思いません。犬の興奮は落ち着きましたが、完全に諦めた状態ではなく、どうすべきか、どういう態度をとればいいのか、迷っている感じがします。みなさんはどう思いますか?
なぜ、私がそう感じるのか?それは、私にはシーザーの意志を感じないからです。
私がこのシェパードだったとしたら、シーザーの表現がよくわからないと思うからです。どうしてほしいのかを感じないのです。だから犬も態度をはっきりと決められない。混乱する。
シーザーが口で「シ!」と言うだけで、犬には何の主張もしておりません。
犬にしてみれば、コレクションは感じたし(指でされた感触)、シーザーが口から出した音も聞こえています。だけど、どうしたらいいのか、混乱しているのはわかりますか?
では、シーザーはどうすればよかったのか。動けばよかったんです。シーザーがソファーから立ち上がるだけでよかったんです。
犬に音「シ!」とコレクションをしただけでは、わかりづらいということ。だから10分間もウロウロしたり、吠えたり、戸惑う結果になっていますよね?
自分の体を動かすべきなんです。私ならソファーに座っている状態だけで、音と指だけでコントロールしません。体を使って、「これ私のだから!」という「意志表明」をします。
そうすることで、シェパードに迷い戸惑う時間10分を作りません。
テクニックは後回しでいい
犬のボディーランゲージを読むことに、必死になっていては見えないものがあります。
犬の置かれた状況をきちんと見たうえで、変化する犬のボディーランゲージを見て「判断」しなければならないのです。
そして、犬を読むことと同じくらい大事なことをここで指摘しておきます。
インプットばかりで、アウトプットができない人が多すぎます。
特に知識ばかりが多く膨らんでしまうと、途端に素直な意志が出せなくなります。
テクニックは後回しでいいんです。まずは「自分の気持ち」「自分がどうしたいか」「犬にどういう行動をとってほしいのか」をきちんと意思表示・意思表明しましょう。
冒頭のハスキーの動画を見ただけで、みなさんはハスキーの言い分を理解したはずです。では人間の方は、犬にわかるように表現していますか?
シェパードとシーザーの動画を、もう一度見てください。
飼い主の女性がシェパードに引っ張られ、犬を車に乗せることすらできていない映像が流れています。
どうですか?彼女(人間)を見て、この人が犬に何を伝えようとしているのかわかりますか?
先にも書きましたが、このシェパードに対する意志表示はシーザーもできておりません。
「シ!」という音とコレクションのみ。シーザーの表情(顔)を見てください。
あなたがこのシェパードだったとしたら、シーザーの「シ!」という音と、指ツンで何を指示されているのか想像できますか?
極端に言えば、シーザーはシェパードが食べ物を諦めるまで待っています。シェパードが混乱して、吠えていても無視していますよね?無視されて、「察してくれよ」と言われても、人間でも気づけないことは多いはずです。
意思表示・意思表明がないから、犬は「人間の言わんとすること」を理解できません。犬が、人間を読むことができないのです!
言うことを聞かせるのは、その次のステップ。
犬を読むことを学びたければ、犬のいる場所や状況を把握してからでなければ、確実な判断はできない。これは、犬から見た人間も同じことです。
たとえば、自分の食べ物が皿に盛られていると仮定します。まさに、先ほどの動画でいうところの「シーザー対シェパード」の図になりますよね?
あなたなら、どうしますか?シーザーのテクニックを真似て「シ!」と発音し、指ツンをやったとします。犬がどういう反応をすると思いますか?ぜひ、やってみてください。
自分は動かずに、ただ、口で「シ!」という音を出して指ツンです。
これだけで犬が理解してくれればOKですが、あなたの食べ物から遠ざかり、諦めてその場を離れてくれるでしょうか?
体を使って自分の表情を使ってやってみると、意外と伝わるはずですよ。
一歩前に出るなど、犬にわかりやすく意思表示・意思表明をする重要性を知ってください。
犬を読むには、本に書かれているイラストなどでの解釈を頭に入れたところで、役に立たないことが多い。
そういうことを学ばなくても、ほとんどの方は実は犬を読めているということ、感じているということに気づいてください。
これは、語学を習得するのと同じです。幾ら英単語を覚えたところで、使わなければ忘れるだけ。その覚えた単語を応用して、口に出して使わなければ宝の持ち腐れ。
犬を読むというインプットを学ぶと同時に、アウトプットという自分の表現力を身につけてください。
犬が人間を読めるように、はっきりとした表現、このハスキーをお手本にしていただきたいです。
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