みなさんこんにちは。飼い主たちが「犬を理解する」ために必要なことをメルマガ「ドッグペディア Doggies911」でご紹介している、Masumiです。
きょうは、結果的に犬に信頼される飼い主であるにはどうあるべきかということについてお話しします。
私は75匹~120匹のオフリードの犬のなか、5~6年ほどを過ごしていた時期があります。いまから20年ほど前のことです。
ちょうど「犬の幼稚園」的なものがチラホラと出てきた、YouTubeもない時代ですね。
そのかたわら、ドッグウォークやドックシッターをやったり、休日は「ボクサーレスキュー」という団体でボランティアをしておりました。
車で50分ほど離れた民間の施設に保護されている75匹ほどの「ボクサー犬」や「ボクサー・ミックス」たちの犬舎の掃除や散歩、シャンプーを1日がかりで数人のボランティアさんと担当。
そのなかでも、私ともうひとりの女性と2人がかりで一番大変だったことは、保護されている犬たちにマイクロチップを埋め込むことでした。
犬たちはみんな暴れる、嫌がる、怖がる、攻撃してくる、逃げる、隠れる…。素直にマイクロチップを受け入れる犬なんていません。
でもここでの経験は、当時のなまっちょろい「ただの犬好き」だった私に、いま思い返すととてつもない力をくれました。
犬から信頼されない飼い主
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「犬を知る」ためには、まず自分が「犬を知らない」ということに気づかなければなりません。
気づかない人は、メルマガやこの記事にたどり着くことはできませんし、私を知ることもないと思います。
正しく犬を学ぶ機会すらないまま、ド素人でも犬は飼えますからね。
犬のことで困る問題があっても、ある程度「回避」(=マネージ)すれば、犬は「飼育」できますので、犬への負担も考えずに飼うことはできます。
ただ、私を知って「犬を学ぶ」という姿勢がある人がどんどん増えていくことを望んでおります。人間の身勝手さには反吐がでるほど、人間の愚かさを知っているのでなおさらです。
「人間の無知」による「犬の犠牲」について、毎回アカデミーで「報道された実際のニュース」を紹介しているのも、「犬」の犠牲を減らすためです。
まず、人間はすぐに「感情」でものを考えます。犬を見ても、すぐに人間の感情・概念を基準として、勝手に変換してしまうんです。
そもそも、人間同士でもそうですよね?人の表情や態度をみて、「この人はいま怒っている」とか「喜んでいる」と認識します。
しかし、人間には「言語」がありますから、腹のなかでは舌を出していても謝っている振りをすることができますし、悲しくなくても泣くことだってできます。
その人間の複雑さは、「犬」にとって混乱でしかありません。
犬を見て、尻尾を振っていれば「喜んでいる」「楽しそう」、頭を下げていれば「悲しそう」「寂しそう」、吠えていれば「泣いている」、人を噛めば「焼きもちをやいている」など。
トイレの躾はできているのに、留守番させる度に仕返しをするので困る…これらはまさに、「犬を知らない」人の考え方です。
これらが「犬から信頼されない飼い主」を作るのです。
なぜなら犬の言わんとしていること、犬にいま「必要なこと」を理解していないから。
たとえば、「帰宅すると犬が喜んで飛びつく」という犬の行動。そりゃ嬉しいですよね?家に戻ってきた自分に対して、犬が「喜ぶ姿」を見ると私でも嬉しいもんです。まさに「犬が喜んでいる」状態です。
でもこれは医学的に見れば「興奮状態」であって、血圧、眼圧、脈拍が急上昇している状態。2本足で人に飛び掛かり、その場でジャンプして犬は「喜び」を全身で表現します。
これも嬉しいもんです。そして犬の喜ぶ姿にこちらも興奮して喜ぶ。これは悪いことではありませんが、医学的に見てどうかということ。
考えている方、そういう視線で犬を見てる方、ほぼいらっしゃらない。有難いことに、アカデミー参加者さんや長くメルマガを読まれている方なら、客観的な視点をお持ちかと思います。
4つ足とあばら(肋骨)で支えられている犬の内臓が、2本足で立つことにより、下に下がります。そうなると骨盤が広がる。体重の重い犬が、細い後ろ足だけで体重を支えるわけです。
膝、関節への負担…これらは「医者の目」があれば見えてきますよね?
なぜ私がこのような知識があると思いますか?先にも書いたように、私は毎日最低75匹くらいのオフリードの犬たちと過ごしておりましたので、「実際に起きたこと」から学んでいるのです。
デイケアで「飼い主のお迎え」が嬉しすぎて吠え、そして発狂に変わり、心肺停止になった犬もおりましたし、酸欠で倒れた犬もおりました。
飼い主のお迎えが犬たちにわかるような犬舎の配置について、私がボスに指導をしたくらいです。それもこういう犬たちが実際にいたからです。お迎えのときに、室内犬舎の犬たちから駐車場が見える状態の配置を、私が指摘して改善してもらいました。
デイケアにいる犬たちは、飼い主の声、車の音、足音などで、「自分のお迎え」が来たことを察知します。頭のいい犬は、飼い主のお迎えより30分も早い時間から興奮が始まります。
犬舎を走り回り、ゲートを飛び越える犬もいましたし、そのせいで靭帯損傷した犬もいます。後ろ脚がゲートに引っかかって、頭からコンクリートに落ちて脳震盪を起こした犬もいます。興奮しすぎて眼圧、脳圧があがり、眼球が飛び出した犬もいるのです。
よかれと思って犬がやっていることをやらせて喜ぶのはいいんですが、犬の負担、体への負担を考えることができる飼い主でいることは、絶対重要だと私は思います。
「犬への負担」をきちんと見れる目を
こういう競技であれば、これくらいバンジーワイヤーが犬をプロテクトして然るべき。犬の安全をきちんと確保して行われる競技は素晴らしいものです。
ですが、私個人的には、犬のドライブを高めて犬に負担のかかるようなことはしません。これらの芸ごとなど、どうしても私には「犬の体」への負担が見えてしまうんです。
私の個人的考えでは、犬の競技というものは人間が犬を使い競い合っている感があって、評価や順位、優劣を手に入れたいのは人間の方だと思っておりますので、一切興味はありませんが。
もちろん、私に賛同すべき!ということではありませんので、あくまでも私の意見です。
アカデミーでお見せした動画を紹介しましたが、「おもしろく楽しむ目」と「医者としての診方」では違って見えて来るはず。
犬を大事にするということは、犬の体への負担もきちんと飼い主が「知識」として頭にいれておくべきことだと思います。
犬はギリギリまで限界まで動きます。
一度私が飼っているマセをハイキングに連れて行ってもらったことがありまして、急に倒れたと報告を受けたこともあります。
「熱中症」でした。その日は、気温28度ほど、そこまで暑い場所ではなかったにも関わらず、熱中症。
二足歩行の我々は、地面からの照り返しを受けることはありません。しかし、4本足で歩く犬は体全部に照り返しの熱を受けます。
犬の体温、平常時、みなさん、ご存じですか?犬の体温、測れますか?脈拍はどうでしょうか?私はすぐに倒れたマセの太ももの内側と首を水で冷やすように指示を出しましたが、そういう知識はございますか?
私は医者ではありませんが、犬の体の仕組み、骨組み、応急処置は実際にやってきて経験して学んでいます。
心臓マッサージや人工呼吸まで「できなければならない!」とは申しませんが、せめて「犬」への負担をきちんと見れる目を持ってください。
ほどほどで辞めさせなければ、犬たちは限界まで興奮します。
犬が楽しそう、喜んでいる、悲しんでいる、怖がっている…これらすべて「喜怒哀楽」ですが、体内ではいろんなことが起きています。
「興奮」とは「体内」が乱れることです。血圧の低下や上昇は、興奮(緊張を含め)で起きるのです。
眼圧が高くなれば、当然、眼球、網膜に圧を掛けます。網膜剥離も起きるのです。犬にも「飛蚊症」はございます。ご存じですか?
私が飼っているマナは心臓肥大による不整脈と雑音(ハート・マーマ―)があります。いつ心不全を起こしてもおかしくない状態です。
でも散歩に行くとわかると、マナは喜んで走り回ります。私は全力で「ノー!」です。わかりますか?散歩行きたくて喜び勇んでいるマナに「ノー!」。そして「マテ!(動くな)」です。
マナが散歩前に喜んで走り回るのは、見ていてとても愛らしく、それはそれは可愛いですよ。
でも「ノー!」なんです。私はマナの心臓を見ているんです。急な血流が心臓にどう負担をあたえるか…を見ているんです。
そりゃ、マナが若くて健康面で問題がなければ「ノー」は言わないでしょうね。
「犬を守る」という意識こそが信頼に繋がる
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犬の心理が乱れていることを、「喜んでいる」や「悲しんでいる」などと感情でとらえるからこそ、犬を守る立場に立つことができないのです。
医者が、大けがした患者が泣き叫んでいるときに、同調しますでしょうか?「痛い」「辞めてくれ」「触らないでくれ」と暴れようが、医者はやるべきことがあるんです。患者の感情に寄り添っていては、治る怪我も病気も治りません。
「優しい先生」は、患者に寄り添う…なんていう「無責任」な評価をほしがるもの。
私が冒頭に書いたボクサーレスキューで、マイクロチップを埋め込む作業をしていたこと、嫌がる、怖がる、攻撃してくる、逃げる、震える、という「犬の心理の乱れ」に対して、淡々と業務をこなす必要があるんです。
多くのボランティアがやらなかったのはなぜでしょうか?そこには人間の感情、「かわいそうだから」というものがあり、犬たちに「嫌われたくない」からではないでしょうか?
もちろん、攻撃性を見せる犬を怖がらない人はいません。でも、ボランティアの意識で多いのは「行き場のない可哀そうな犬たち」=保護犬なのです。
「いい人でいたい」のはみんなそうですよね。私だってできれば「犬の嫌がること」はやりたくありませんでした。でもやる人がいない以上、誰かがやらなければならないことだったんです。犬を守るためですからね。
これこそが「強さ」の本質ではないでしょうか?犬を守るという意識こそが「強さ」です。リーダーシップです。そこにこそ、「犬との信頼」が生まれると私は確信しております。
嫌われるようなことをやったとしても、結果的に犬は私について来ます。力づくで暴れる犬にマイクロチップを打ち込むのではなく、マズルやリードを使い落ち着いた状態のときに、一瞬で打ち込むのです。迷いがあったり、躊躇していると刺さりません。犬が痛がります。
私はここで「度胸」を学んだと思います。私が迷うことで痛い思いをするのは犬です。苦しむのも犬。だから迷ってはならないんです。
信頼って、そういうことではないでしょうか?
先ほどお話ししたマナは、私が路上で捕まえました。狂犬病だってあったかもしれませんよね?でも「捕まえないといつか車に跳ねられる」状況にいました。慣れてないうちは抱っこもできませんでしたよ。噛みつく行動も見せていました。でも、いまでは私を完全に信頼しています。
私もマナを信頼していますが、絶対ということはありませんから、リードは放しません。私から離れずに歩かせることもできますが、車や犬がぶっこんできたら…という想定すると、リードがなければ守れませんよね。
おそらく多くの飼い主さん、とくにアカデミー参加される方、メルマガやこの記事を読まれている方、なんとなく「犬を守る」という意識は、メルマガやアカデミーを知らない方に比べると、高いはずです。
でも、まだ足りない…これは恐らく「医者の目」があるかどうかだと思うんですよね。
犬にも2つの顔がある「犬」と「飼い犬」。だからこそ、飼い主も「親」(飼い主)としての目線と、医者の目、2つの目を持つべし。
犬のため、犬を守るため、犬に負担を掛けないため…と思えるときこそ、人は冷静になれます。
どういう医者をあなたは信頼しますか?
いつも「様子見ましょうね」って優しい医者?なんでもかんでも「ストレスですね」で片づける医者?「とりあえず、薬だけ出しときますね」と言う医者?威張り腐って権力を振りかざす横柄な医者?パソコンばかり見て、患者の目すら見ない医者?触診せずにデータばかり見る医者?感情に流される医者?患者を怒鳴り散らす医者?患者の言いなりになるやさしい医者?
アカデミーで語ったことは、メインは「冷静」=強さということ、そのために「医者の目」を持てということ。
映画を観て感動するのはもちろん大事です。でも、「どうやって撮影されたのかな?」というひねくれた目を私は子どものときから持っております。
とくに犬を使った動画などは、制作時にスタッフがどこにいて、どういう指示を出しているのか?
カメラがどこについて、どういうアングルで撮ったんだろうか…というようなことばかり気になる性分でして、感動して泣くとかないのです。
いずれにしろ、別アングルから見る目というものがあれば、人は冷静でいられます。それを「しらける」とも言いますが…。
犬の内面に起こっている事態を冷静に見て、その場その場での判断をしてあげてください。犬のニュースは噛みつきや人殺しだけではありません。
最後に、アカデミーでも紹介した動画を載せておきます。
犬に悪気はありませんが、犬はいつでも人に危害を与えることができるのです。
知識があること、知っていることで、「危機回避」はできます。こういうことがあると知っているだけで、犬を守れるのです。
ドッグランに行って、フェンス越しに大型犬小型犬が行ったり来たり、吠えまくっている状態をみて「楽しそう!」と思うか、「辞めさせよう!」と思うか、2つの意見が分かれる場合、どちらが正解かメルマガ読まれている人にはわかると思います。
きょうの記事を読んで、みなさんがもっと「犬を大事にする」ということへの理解が深まると嬉しいです。
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