「集中力」とは何なのでしょうか。これまた辞書で引いてみると、「気持や注意をある物事に集中することのできる力」と載っています。一般的にはこんな認識で間違いないのでしょう。しかし私があなたに向かって「集中力」という場合、もっと深い意味を含んでいます。
自ら積極的に対象に意識を向けるのも集中力ですが、「受動的意識集中」という、がんばらなくても集中が保たれている状態をさらにうえのレベルに位置づけて、トレーニング目標に加えています。
ただし、この「本当の集中力」は、簡単に身につくものではありません。だから、手順を守って丁寧にトレーニングをおこなうことが肝心になります。
「能動的意識集中」と「受動的意識集中」
入り口は、「能動的意識集中」なのです。いきなり「受動的」のほうをめざしてはいけません。幼児が大学入試対策の予備校に入るようなもので、いくらがんばっても成果が出ず、嫌になってあきらめてしまうでしょう。多少の飛び級はあるにせよ、小学生には小学生の、高校生には高校生のトレーニング段階があります。
逆にいうなら、「段階を踏みながら取り組めば、必ずマスターできる」ともいえます。瞑想で集中力を養うトレーニングをするチャンスは、そうざらにあるものではありません。いまこの機会にしっかりマスターするためにも、丁寧に取り組みましょう。
集中力は「貫き突き抜ける力」
集中力とは、いったい何なのか。なぜ「集中」には、それほど大きなパワーがあるのか。「集中に大きなパワーがある」という表現は、確かに正しいのですが、もっと正確にいうと、「集中を高めると、小さなパワーで足りる」ということです。
ホースの先をつぶして水を遠くに飛ばした経験は、あなたにもあるでしょう。太い水より、細い水のほうが、遠くまで飛びますね。その細い水を足元の土に当てれば、穴が掘れます。しかも、水は細ければ細いほど、穴があく。これが集中の力です。
発声でも、「共鳴を集める」ことによって、小さな労力で無理せず声を飛ばす発声法があります(共鳴発声法)。水が太いままでは、土に穴はあかず、バシャバシャ濡れるだけ。しかし、水を細くすれば、水の量は少なくても穴があく。ここが大事。「水の量が少なくても」のところです。
私たちのエネルギーは有限。使える時間も有限です。その限られた資源を注いで、物事を変えたいとします。
- 目標を達成する
- 自分の能力を高める
- 他者からの評価を高める
- 組織に貢献できる力を得る
- 置かれている境遇を変える
すべてに共通するのは、「現状を変化させる」ということですね。何かを変化させるには、力を加える必要があります。しかし、私たちの力には限りがある。エネルギーは有限です。
だとしたら、どうすればいいか。その限られたエネルギーを、小さく絞り込めばいいのです。小さな1点に絞り込む技術があれば、エネルギーの総量は少なくても、貫通して現状を突破する破壊力が生み出せます。
ホースの水にたとえるなら、ホースの先をうまくつぶす技術があるかどうか、です。気が散る人は、ホースのつぶし方を教わったことがないか、つぶそうとしていないのでしょう。あるいは、つぶし方は教わったのに、つぶした状態をキープしていられない。
ホースの先をつぶしたら、次は「つぶした状態をキープする」方法を身につけます。トレーニングの段階とは、こういうことです。集中力とは、貫き突き抜ける力。現状を変えることのできる力です。