「人は物事を見たいように見て、感じたいように感じる」という心理法則があります。恋愛心理でいえば、彼が別れたそうなそぶりをしていても、別れたくない彼女はその態度を一切無視するというのがそれです。
そして別れようと思うからこそ、いまの間だけはやさしくしておこうという彼のそのやさしさだけをクローズアップして見たり、彼が会いたがらない理由を「結婚を考えて、一生懸命、仕事して、お金を貯めようとしてくれているのだ」と解釈したり…。このようなことは、それはたくさん起こっています。
すれ違うコミュニケーション
男性であれ、女性であれ、自分から別れをパートナーに告げるときは、なかなかストレートないいかたができないことも多いものです。「あなたはほんとうに素晴らしい人だから、私のような者より、もっとお似合いの人がいるはずよ。私ではない、もっとよい人と結婚してほしい」。
別れを伝える側は、最後のひと言を伝えたいわけです。「私ではない人と結婚して」。つまり、「私とは別れて」。
しかし、伝えられた側は「私を素晴らしい人といってくれた」というところばかりが聞こえ、「パートナーは自分のことを過小評価している」と解釈したりするわけです。
そして「そんなに気を使わなくていいよ。きみは十分、素敵だよ」などといわれ、一生懸命、別れの思いを伝えた側は、コミュニケーションがうまくいかないことにがっかりしたりする…こんなこともよくあるわけです。
別れ話のときに大切なフレーズ
あるとき、ご相談にみえた女性と彼氏の間にも同じようなことが起こっていました。お話を聞いてみると、彼氏は彼女と別れたがっているように感じられました。彼女は38歳、彼は31歳。
彼はこれまでにも「結婚への願望や憧れはない」、「子どもはもちたくないんだ、あまり好きではないし」といっていたようです。その彼に、彼女は最近こういわれたようなのです。
「きみは子ども好きだし、子どもを産める年齢にはリミットもあるから、ぼく以外の人にしたほうがいいと思うんだ」。しかし、「じゃあ、別れるの?」と聞くと、曖昧な態度の彼。「だから、彼は別れたくはないんじゃないかと思うんです」と彼女はいいます。
地方出身の彼は、「いずれ地元に帰り、跡とり息子として生きていかなければならない。そんなことを考えると、なかなか結婚する気にならない」ともいっているのだとか。こうした彼の態度を見て、彼と別れたくない彼女は「まだまだ私を愛しているからだわ」と判断しているのでしょう。
しかし彼がはっきりとしたことをいわないのは、「別れる」といってしまうことで彼女を傷つけたくないと思うのと同時に、自分が悪者のようになりたくないという心理が隠れているように私の目からは見えました。
できるなら彼女のほうからキッパリと別れを口にしてもらって、「きみがそういうなら、仕方がないね」という展開になることを狙っているように思えたのです。
「結婚を考えられない」は彼の主義ではなく、「きみとの結婚は考えられない」だと思われます。「子どもをもちたくない」も、「きみとの間で子どもをもとうとは思わない。なぜなら、別れを考えているから」なのでしょう。
そして、「決められないぼくとつきあっていて、きみが子どもを産めるリミットを越えてしまってはいけない」というのは、一見、彼女を思いやっているように見えますが、そこには自分の手は汚したくないというズルい男の心理がある様子も見え隠れしています。
男女関係のコミュニケーション、とくに別れる・別れないの話のとき、とくに大切なのは最後のフレーズ。前半で語られるいいわけや理由の部分には、意味のない、そして、大きな誤解を招く、やさしさや配慮が多く含まれているケースが多いのです。
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