クィアマガジン「purple millennium」を運営し、LGBTQ当事者としての経験や考えを発信している、Honoka Yamasakiです。
突然ですが「SOGIハラ」という言葉をご存じですか?「SOGI」とは、「Sexual Orientation(性的指向)および「Gender Identity(性自認)」の頭文字をとった言葉で、SOGIに関する差別や嫌がらせを「SOGIハラスメント(以下、SOGIハラ)」といいます。
セクハラだけでなく、パワハラ、アルハラ、マタハラなど、さまざまなハラスメントが浮き彫りになった現代では、ハラスメントに対する意識喚起、対策、対応が求められています。
まだあまり耳にしない「SOGIハラ」ですが、実は職場や飲み会などで多くみられ、埼玉県の性的少数者(LGBTQ)に関する調査によると、セクシュアルマイノリティの8割が「不快な冗談や嫌がらせを受けた」、また65.8%が「死ねたらと思った、または自死の可能性を考えた」といった統計結果が出されています。
「狙われているかも?」と思われやすいセクシュアルマイノリティ
特にゲイやレズビアンのかたのなかで、「自分が同性愛者だから狙っていると思われているかもしれない」と、気を遣って行動する人は多いのではないでしょうか。実際に、私の友達Aさんがこのような話をしてくれました。
Aさんはゲイを自認しているシスジェンダー男性(生まれたときに割り当てられた性と自認している性が一致している男性)です。Aさんは複数人の男友達とある日遊んでいたときに、SOGIハラを経験したといいます。
遊んでいた複数人の友達のなかで、彼がゲイであることを伝えていたのは一人。互いに冗談を言い合えるような仲ではあったため、いつものふざけたノリで「お前このなかで誰がタイプ?」とAさんのセクシュアリティを本人の許可なく伝えられてしまったのです。
友達は悪意なく冗談で言ったとしても、Aさんはかなり複雑な気持ちだったと当時の心境を語りました。ですが、その場の雰囲気を壊したくない一心で、笑って誤魔化すしかなかったそうです。
たとえ性的指向が同性だとしても、恋愛に好きなタイプや条件があるように、全同性を恋愛対象としてみていることはまずありません。
Aさんの話してくれた出来事のようなことが起きたとき、性的マイノリティ当事者が不快な思いをさせられているはずなのに、その場に対応しなければならないことが多くあります。
性のあり方は0か100ではない
「ゲイだから男好き」というように、性のあり方は一つにまとめられがちです。お笑いの世界でも「オカマタレント」が存在しますが、「ゲイ=オカマ」というわけではありません。
恋愛対象は女性だけど女性性を持つ男性もいれば、女性的な振る舞いをするゲイのかたもいるわけです。必ずしも一枚岩ではないのが性のありかたの特徴です。
ですが、「あの人は女性っぽいからオネエ」と決めつけたがる人は多く存在します。最近では、お笑いの世界でも「セクシュアリティについての差別的発言はしない」「体型について言及しない」などと意識される機会が増えましたが、禁止をすることで問題の本質が認識されているわけでもないと思います。
というのも、いわゆる「オネエキャラ」を売りにしているタレントさんはいまでもいますし、オネエキャラとしてのアイデンティティに誇りを持って活動している人もいます。
もちろん、「オカマ」や「レズ」という言葉は文脈によっては差別的な意味合いとなるので、使用することは避けるべきなのですが、「オカマ」を「ゲイ」という言葉に変換して表現することでニュアンスが変わる場合もありますし、内輪で互いをレズと呼び合うレズビアン当事者もいます。
同時に「オカマ」や「レズ」とよばれることを嫌う当事者もいるわけで、0か100で考えることは難しいと思います。
「オカマと言ってはいけない」や「ゲイは全男性に下心がある」といった一つのイメージに偏るのではなく、「さまざまな性のありかたがあって当たり前」という前提を持つことが大事。
なので「レズビアンはいいけどレズはだめ」と言葉自体を禁止することだけに意識を向けるのでは、差別は解消されないでしょう。