声を届けることは不可能ではない
性のありかたに対する認識が変わることで、少しでもSOGIハラが減少することにつながると思います。
ですが、子どものころから構築されてきた人間の思考を変えることは難しいかもしれません。とくに小中高の教育はその後の思考を形成するうえでの重要な役割を果たします。
逆にいうと、初等教育から見直すことで、性のありかたの認識も広がるということです。性教育といっても、一重に人間の性行動だけでなく、性的指向、性別、性交渉など、人権についての話でもあります。性教育をタブー視するのではなく、本質を理解することから始めていかなければなりません。
しかし、その教育方針を検討するのは大人である確率が高いのです。大学生など、義務教育を終えた若者たちが声をあげている傍ら、権力を行使して国を変えようとするご年配のかたがいる。なんともいえない構造社会が浮き彫りになっていますが、政治を動かす人たちに声を届けなければならないのです。
声を上げたりアクションを起こすことで、そのひとの周りが自然と新しい視点と触れる。さらにそこから広がっていけば、社会の雰囲気は変わっていくのかもしれません。
実際にChange.orgの署名サイトで、性別欄を取り除いた履歴書を求める1万名もの署名が集まったことを受け、JIS規格から性別欄が無くなるまでに至りました。
このように、個々の声が重なることで変化が見られることもあります。最終判断は受け手ではあるものの、少なくとも耳に届く、伝わる可能性はあることを実感することができました。
性のありかたについてオープンに語られていない環境で過ごしてきた、うえの世代のかたは、LGBTQやSOGIと聞いてもパッとしないことが多いかもしれませんが、11人に1人がセクシュアルマイノリティといわれている現代で、自分の親類や子ども、孫がその一人であることは十分にあり得るのです(参考統計)。
ですが、思考が真反対のかたに問題視するよう強要することは逆効果。SNSでRTしたり、署名するなど、とにかく何かしらの形で知るきっかけをつくることが大事だと思います。
特権を利用して生きている
最近、「特権」という言葉をよく耳にします。困難なく日常生活を過ごすことのできる人は特権を持っていますし、そのほとんどがマジョリティでもあります。
私はセクシュアリティに関してはマイノリティの枠組みに入るものの、生まれたときの性と自認する性が一致している「シスジェンダー」の女性で、性別の面ではマジョリティに位置します。
問題を知るまでは、恥ずかしながらトランスジェンダーのかたなどが抱える日常の困難について、何も考えることなく過ごしていました。知らなくても聞かなくても生きやすい状態にいることは、マジョリティの特権だと実感しました。
シスジェンダーとして生まれただけで社会的恩恵を受け、性別に関して不自由なく過ごしてきたことに対し、同じようにトランスジェンダーとして生まれただけで抑圧される現実があり、365日24時間という同じ時間を生きるなかでも、不平等で不当な扱いを受ける割合は後者が圧倒的に多いのです。
マジョリティはマジョリティ中心としての社会を考えがちですが、マイノリティといえども、実は日常にマイノリティに位置付けられる人々はたくさんいます。ただそれに気づかないだけなのです。
そういったマジョリティ中心の社会で、SOGIハラなどの差別は顕在化されにくく、見過ごされがち。目の前で起きた差別に乗っかれば、簡単に悪い方向へと事が運んでしまいます。
マジョリティ側が問題意識を持ち発信することは、マイノリティの言葉を代弁するだけでなく、差別に加担しない雰囲気をつくることにもつながります。こういったときにこそ、特権は利用できるのです。
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