クィアマガジン「purple millennium」を運営し、LGBTQ当事者としての経験や考えを発信している、Honoka Yamasakiです。
2021年3月。足立区で「パートナーシップ制度」に加え、「ファミリーシップ制度」が導入されました。実は、これは都内でははじめてで、国内でも兵庫県明石市に次いで2例目のことなのです。
パートナーシップ制度しか導入されていない地域のカップルが子どもを育てる場合、法的には子どもは「どちらか片方の子ども」としてしか認められません。実際、幼稚園や保育園でのお迎えや公的施設を利用するときなどには、多くのカップルが「友人」として振る舞っているという問題もあります。
ファミリーシップの導入はこれらの問題を解決するものであり、さまざまな家族の形が認識される一歩になりました。
このように新しい風の訪れを感じることで、社会に希望を持つ人も増えたのではないでしょうか。しかし、先日の自民党の簗和生衆議院議員の「LGBTは種の保存に反する」といった問題発言のように、同性結婚制度に反対する考えも存在します。
そして、日本は唯一G7のなかで同性結婚制度のない国としても知られています。希望とともに絶望があったり、LGBTQに関する取り組みは、日本全体で見たらまだまだ不十分なのです。
そこで、個々が尊重される理想の社会を実現するために、個々や社会が変わるべき点を考えてみました。
法的拘束力のない「パートナーシップ制度」「ファミリーシップ制度」
LGBTQについての認識が深まることは、一人一人の行動や発言、それらに影響する社会的制度や法律が変わることにつながります。
国議会同盟(IPU)の調査によると、2019年時点での女性衆議院は463人中たったの47人(10.2%)であることがわかりました。また一般社団法人PMIによると、国のリーダーの平均年齢が60歳を超えている国は日本、韓国、イタリアのみとの統計も出されています。
国を動かす人の多くがいままでに男女二元論でしか語られてこなかった世代の人という点が、法律を変えるまでに至らないことのひとつの要因として考えられるでしょう。
国民側のLGBTQに対する考えをみてみると、朝日新聞の世論調査では、同性婚を法律で認めるべきだと答えた人は65%の半数以上。ほかにもさまざまな調査によって、過半数以上の支持が得られています。
民主主義を唱えている日本で、これだけの賛成の声が集まっているにもかかわらず、法律が変わる兆しはありません。セクシュアルマイノリティの人権を守る法律がないことや、カミングアウトがしづらい環境など、さまざまな要因により声をあげられない当事者がたくさんいます。
声をあげても安全な環境が確保されないという状況を変えるには、やはり大きな力を持つ法律が変わるべきなのです。
また、パートナーシップ制度やファミリーシップ制度の取り組みを導入している自治体もありますが、法的拘束力はありません。これら2つの制度は、法律婚とは異なり、配偶者控除や遺族年金が認められないので、まだまだ困難を強いられる可能性があります。
パートナーシップ制度やファミリーシップ制度が取り入れられることで、導入前と比べると精神的には安心できるかもしれませんが、国レベルで認められないことは事実上の保証にはならないので、十分とはいえません。
また、コロナ禍で同性のパートナーが法的にパートナーとして認められないことから、お見舞いを拒否されたという出来事も稀ではなく、現段階の法律は、口を塞ぐものとして存在しているように思います。