クィアマガジン「purple millennium」を運営し、LGBTQ当事者としての経験や考えを発信しているHonoka Yamasakiです。
最近、議論されつつあるトランスジェンダーに関する問題。トランスジェンダーとは、一般的に出生時の性と自認する性が一致しないことを指します。
電通ダイバーシティラボの2020年の調査によると、トランスジェンダーについて知っている人は91.8%と高確率。ですが、LGBTQ+についての知識や配慮のある人でも、「関心がない」という意見が36.6%という結果でした。
まだまだカミングアウトがしづらい日本では、周りに当事者がいないと感じることも多いはず。調査の結果をみると他人事な話題として捉えている人が多い印象ですが、実はトランスジェンダーをめぐる問題は世の中にありふれています。
そこで今回は、トランスジェンダー差別とトイレ問題についてお話します。
カテゴライズできないこともひとつのアイデンティティ
私は女性として生まれ、女性を自認しています。性別は自認していますが、セクシュアリティに関してはいまだにわかりません。
同性、異性ともにお付き合いしたことはありますが、ここ数年惹かれる相手は女性やXジェンダー(性自認が男性にも女性にもあてはまらない)の人が多く、「バイセクシュアルかレズビアンだと思ってたけど違う?けど胸を張ってパンセクシュアル(全性愛者)とも言えないな?」と、自分のセクシュアリティをカテゴライズできないことに悩んでいました。
ある日、知り合いが「ジェンダーフルイド(自分のジェンダーを定義せず、そのときによって性別が流動すること)」であることをカミングアウトしてくれたことがきっかけで、「クィア」について初めて知りました。
クィアは、「LGBT」の頭文字をとったレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーを含めたセクシュアルマイノリティを指すだけでなく、LGBTにカテゴライズされない人たちに対しても使える、包括的な言葉です。
セクシュアリティやジェンダーをカテゴライズできなくても、「クィア」という言葉があることで、「私」というひとつのアイデンティティが存在することに安心し、私自身も「私のセクシュアリティでいい!」と思えることが増えました。
同時に、シスジェンダー女性(女性として生まれ、女性を自認する)として過ごすことで、周りの人や出来事に対してもシスジェンダーが前提として考えていたことを反省しました。
セクシュアリティがわからない私と同じように、規範的なアイデンティティにカテゴライズできないことで悩んでいる人がいる。そのことを知り、社会に根付いた男女の二元論は本当に必要なのかと疑問に思うようになりました。
トランスジェンダーの問題については近年語られるようになりましたが、それでもなおステレオタイプが存在します。
トランスジェンダーのトイレ問題
日本では、生まれた性と個人の生き方を当てはめる傾向にあると感じています。シスジェンダー・ヘテロセクシュアル規範な考えが浸透する世の中で、トランスジェンダーや同性愛者などのマイノリティが息苦しさを感じることは想像できるでしょう。
性のあり方に対して、まだまだ規範の形に当てはめる現状があるなかで、特にトランスジェンダーについては議論されています。私は、問題意識をもちつつ、トランスジェンダーを排除しない取り組みがいま必要であるように感じます。
たとえば、トランスジェンダーについて話すときに議論されるであろう「トイレ問題」。トランスジェンダー女性と偽り、加害目的で女子トイレに侵入する人がいるせいで、トランスジェンダーと犯罪者を混在して認識する人も少なくないようです。
先日、「気持ちが女性だから…」との理由で、女子トイレに3度侵入した、北海道札幌市豊平区に住む56歳の男性教員が逮捕されたというニュースを北海道ニュースUHBが報じ、議論をよびました。
SNS上では、「これを許すのがLGBTへの配慮だ。トイレも風呂も着替えも男女共用へ」「性自認を見極めるのには難しい」「多目的トイレを使ってほしい」など、さまざまなコメントがあがっています。
2021年6月時点ではこのニュース記事はYahoo!から削除されていますが、LGBTQ差別だと判断したのか、それともほかに理由があるのか、明らかになっておりません。
ですが、このようなニュースはトランスジェンダーのトイレ問題に結びつけられることが多く、心が女性であれば見た目が男性でも女子トイレを使ってもいいのか、これを認めることがはたしてLGBTQの人権保護につながるのか、と疑問の声が上がっているのも事実で、この問題に目を背けてはなりません。
性的少数者をめぐるLGBTの法案にかかわった、日本共産党参議院議員の田村智子氏は、セクシュアルマイノリティに関する差別発言が相次いだことを受け、記者会見を行いました。
記者からの「見た目が男性で性自認が女性の人が女性トイレを利用し、そこにいたシスジェンダー女性が恐れた場合、それは差別になるのか」という質問に対し、田村氏は「私たちがつくろうとしているLGBTの法案は、多様な性があるもとですべてのかたがたの権利を保証することが大前提です。もし、見た目が男性の人が女子トイレに入ることで、仮にトイレを利用する女性に恐怖心を与えるのなら、これはすべての人の人権を保証することにはなりませんよね」と述べました。
さらに「多機能トイレを導入してほしいという意見は聞いても、男だとわかる見た目のまま女性トイレに入れてくれと主張するトランスジェンダーの人をみたことがありませんよ」と加えました。