クィアマガジン「purple millennium」を運営し、LGBTQ当事者としての経験や考えを発信しているHonoka Yamasakiです。日ごろからセクシュアリティに向き合っている私ですが、実は自分自身のセクシュアリティについてよくわかっていません。
「アイデンティティ」という言葉が浸透し、自分自身を表現・定義できる言葉を持つことで社会とつながりを持つことができたり、他者から認識されやすくなることもあるかもしれません。しかしカテゴライズできないことでアイデンティティが確立していない、わからないことでネガティブに捉えられることもあります。
私はシスジェンダー女性(生まれたときに女性として診断され、私自身も女性だと思っている)で、セクシュアリティは不明。現在は、同性の恋人がいます。
恋愛トークの際に「レズビアン?バイセクシュアルなの?」と聞かれることはよくあり、一言で済ましてしまうほうが楽な場合は、(罪悪感はありますが)便宜上のセクシュアリティをいってしまうことはあります。
「わからないんだよね」ということで、触れてはいけない話題として気を遣わせてしまったり、逆に「なんで?」とわからないことに対して質問されることもあるので、相手と私との関係性によって答えかたに多少の違いがあるのかもしれません。
このようにセクシュアリティがわからないことで葛藤や悩みを抱くこともありましたが、しかし最近は「このままでもいいのかも」と思えることも増えてきたのです。
初めて女性に対して好意を抱いた
人生で初めて好きになった相手は「男性」でした。そのときは、「ヘテロセクシュアル(異性に対して性的な感情を抱くセクシュアリティ)」であると無意識に自覚していたと思います。
異性とお付き合いをしていた時期は、セクシュアリティについて聞かれることも考えることもありませんでした。振り返ると、悩まずに済んだことはマジョリティの特権だなぁとつくづく思います。
高校に入ると、後輩の女の子に好意を抱くようになりました。初めて同性を好きになったときです。10分休みでその子の教室を訪れたり、私の教室が2階で相手が1階だったので、廊下に出て手を洗うフリをしてその子の教室を上からのぞいていたりしました。
高校生特有のコミュニケーション方法だとは思いますが、女の子同士だと手をつないだり、キスやハグをすることは普通だったので、好きな子からスキンシップをとられたときは勝手に舞い上がっていた覚えはあります(笑)。
その子の恋愛対象は男性だったので、特に関係が発展することもなく、好きの気持ちは自分だけのなかに秘めていました。
また思春期に突入し、性についての話に興味を持ち始めたころ。クラスメイトの男友達とコンビニの週刊誌に掲載されたグラビアアイドルを見て一緒に盛り上がっていたり、女友達とのいわゆる恋バナにも共感することがあったり…。いま思い返すと、そのときから性的・恋愛感情は異性だけではなかったのだと思います。
女性同士の恋愛は「本当?」と思っていた
当時は「LGBTQ」という言葉を耳にしたことはあったものの、「L?T?何それ?」と意味はよくわかっていませんでした。
ゲイの友達や先生がいたので男性の同性愛については当たり前にあることだと思っていましたが、女性同士の恋愛となるとなぜか「パフォーマンス」という印象が強く、私自身女の子が好きだったのに、学校にいたレズビアンのカップルを見て「本気なのかな?」と思っていた時期もありました。
それは百合やアダルトビデオのレズビアンコンテンツしか知らず、まだ情報が乏しかったことから、女性同士の恋愛はエンタメ的存在であると誤った認識を持っていたせいかもしれません。
「リアルな女性同士の恋愛」という概念がそもそもなかったが故に、自分が抱いている女の子に対する「好き」の気持ちが恋愛感情なのか、友情なのか、それとも友達以上恋人未満なのか、わかっていませんでした。男性に対しての好きの気持ちははっきりしていましたが、女性に対する感情には終始モヤモヤしていたのです。
当時はLGBTQについて無知だったので、そもそもセクシュアリティについて悩むこともありません。女性同士の恋愛が本当ではないと思う反面、自分が女性に対して近づきたいという特別な感情を持つことへの矛盾に、どこか違和感を覚えていました。