クィアマガジン「purple millennium」を運営し、LGBTQ当事者としての経験や考えを発信している、Honoka Yamasakiです。私は、過去に就職活動(以下「就活」)を経験しました。
就活では、性的マイノリティ当事者であることをオープンにしていました。そこで今回は、就活でのカミングアウトの実体験を交えながら、「LGBTQと就職活動」についてお話したいと思います。
会社に入ると、さまざまな世代の人たちと関わりを持つ機会が増えることが大半。幅広い世代が交差するなかで、LGBTQに関して不寛容な人や、同性愛者に対する嫌悪感を抱く人もいるかもしれません。
よくも悪くもさまざまな反応が存在する社会で、セクシュアリティをクローズドにすることは一つの選択肢であり、必ずしもカミングアウト(自分がセクシュアルマイノリティであることを打ち明けること)をするからいいということではないと思っています。
「カミングアウト」という一つの選択肢
冒頭を読んで、「カミングアウトをしなくても就活はできるのでは?」と疑問を持つかたもいるかもしれません。実際にセクシュアリティを表に出さないクローゼットな状態の当事者も多くいますし、私もかつてはセクシュアリティを隠してきた一人です。
ですが、一度セクシュアリティを伝えたときに周りが受け入れてくれたことや、LGBTQについて考えるきっかけにになったと伝えてくれたこともあり、カミングアウトをするという概念が一つ増えました。
私の場合、結婚する同年代の友達が増え、結婚についての話題があがるたびに、「結婚願望は?」と聞かれ、はぐらかして答えることが徐々に苦しく感じていったことがきっかけでした。
セクシュアリティをクローズにすることで、自分の大事なアイデンティティの一つが閉ざされてしまうだけでなく、嘘をついていることへの罪悪感や、恋人への申し訳なさを抱えることもあり、「伝えてしまったほうが楽なのでは?」と思うようになったのです。
会社に属すということは、長く付き合っていくことが前提にある場合が大半。なかなかプライベートと仕事を分けることは難しいと考えています。セクシュアリティは隠そうと思えば隠せますし、うまくやり過ごすこともできると思います。
しかし、週7日間のうちの5日間、仲のいい友達よりも多く過ごす会社は、ある意味「第2のホーム」となることもあります。なので、会社に属する前にも「職場では自分のアイデンティティを隠さないで過ごそう」と思っていました。
あまり会社を知ることができない面接
面接でカミングアウトすることで、ダイレクトに面接官の意見や反応が返ってきて、会社を見極める際の一種のフィルターにもなりました。
私が受けてきた面接では、現在の活動や今後したいことについての質問が多かったです。私はLGBTQ当事者として、会社で社会問題についてアプローチしていきたいと思っていたので、説明をするときに自分のアイデンティティについてお話する機会がありました。
そのことについて説明すると、素直に興味を示してくれる面接官は多かったです。面接では、「セクシュアリティに気づいたきっかけはありましたか?」「なぜ同性が好きだと思いますか?」のような質問を多くいただきました。
いまではLGBTQについて割とフラットに話せるようになり、面接官からさまざまな質問を聞かれたときも、非当事者がLGBTQについて知るいい機会だと受け取っていました。
しかし、会社と就活生のお互いをすり合わせることが目的である面接が、LGBTQについての説明となってしまうこともありました。企業について知りたくても、自分のアイデンティティについての話が8割。残り10分で会社の説明を行うこともありました。