男女別スペースを使うことはストレスだと語るトランスジェンダー当事者も
日本のトイレは男女でわかれていることがほとんど。トイレの選択にストレスを抱えているトランスジェンダー当事者がいることは事実です。
そこで多機能トイレを利用する選択が出てくるのですが、車いすの人やお子さん連れの人のように見た目では判断されにくく、他者からの指摘や注意を恐れて使えない人もいます。
その裏付けとなるのが、2018年に実施されたTOTOの調査です。
「外出先のトイレ利用で、どのようなことに対してストレスを感じますか」という質問に対し、「トイレに入る際の周囲の視線」と回答するトランスジェンダーが3割。続いて「トイレに入る際の周囲からの注意や指摘」「男女別のトイレしかなく選択に困ること」との結果がでました。
さらに、男女別のトイレ利用に不満を抱える割合は、シスジェンダーが2.2%であるのに対し、トランスジェンダーは29.7%。不満であると答えた人のなかでもトランスジェンダーのほうが圧倒的に多いことがわかりました。
また男女別のトイレを利用しづらいことから、「多機能トイレ」や「個室トイレ」を求める当事者も。前同の調査では、「性別に関係なく利用できる広めの個室トイレが公共トイレとして普及していくこと」に対し、85.7%ものトランスジェンダーが賛同を示しました。
私は、トランスジェンダー女性が女性トイレを使えるようになることは理想だと思います。
しかし、先ほどお話ししたようにトランスジェンダー女性を偽るシスジェンダー男性が出てくる可能性があり、また加害目的の男性とトランスジェンダー女性の見分けがつかない人もいるなど、現状の社会を見るとまだまだ問題が山積みです。
そして悲しいことに、生まれたときの性と異なる性のトイレに入ると、場合によっては「建造物侵入罪」にあたる可能性もあるのです。
このようにトランスジェンダー当事者を犯罪者としてみなすような社会的な認識があるなかで、トランスジェンダー女性当事者も女性トイレを使うことに対して敏感になっており、今回のニュースのように堂々と女性用スペースに入る当事者よりも、アイデンティティが正しく認識されないことに悩む当事者の人が多いように感じました。
そのため、いま私たちにできることは、
- トランス女性は女性、トランス男性は男性である認識を広める
- ただし心の性など「面」で判断できないことを悪く利用する犯罪者も出てくる想定を持つ
- 問題意識を持ちながらも、男女別トイレのほかに共有トイレを増やすなど、トランス当事者を排除しない取り組みを行う(共有トイレの認識を改める)
上記の3点だと思います。
海外ではすでにトランスジェンダーのトイレ問題を解消すべく、さまざまな取り組みが行われています。たとえばアメリカのニューヨークでは、「男性用」「女性用」と書かれたサインから「All gender(すべての性)」に変更したり、個室トイレを導入することがスタンダードになりつつあります。
また、イギリスでは男女の性差にとらわれないジェンダーニュートラルなマークをトイレに使うことが増えてきているようです。
日本でもこういった施設が増えればいいと考えますし、実際に日本でも「誰でもトイレ」が増えてきているように思います。
しかし規模の小さい施設では3種のトイレを備えられなかったり、トランスジェンダーだと気づかれたくないというトランスジェンダーの人への配慮などの問題があり、まだまだ議論が必要になるでしょう。
だからこそ、ひとりひとりが前提の知識をつけ、個々の認識を変えるべきだと思うのです。
“既存”に執着するのはもう遅い?
日本には「トランスジェンダー女性は女性ではないから〜」ということで、生物学上の性を押し付ける傾向があります。
ですが、それは個々のアイデンティティを尊重することにはなりませんし、それによって人権問題が解決されるわけでもありません。既存にある男女スペースだけでなく、いまの社会の価値観に合わせた新しい取り組みを行うことが必要なのです。
また、マイノリティや弱者の人が不利になるような法律も多数存在します。たとえば、性的同意年齢が13歳であること、同性婚が認められないことなど、人の考えや価値観が変わっても、昔からいままでで法律が変わっていることが0に近いのです。そういった傾向をいまこそ変えていく必要があるように感じます。
いままでつくり上げてきた“既存”に執着し、その時代ならではの新しい取り組みは無視される。そういった傾向をいまこそ変えていく必要があるように感じます。
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