まだ結婚してません。結婚宣言から1年経った私たち
Instagramを開くと、「結婚しました!」の文字とともに学生時代のクラスメイトが知らない誰かとの写真を投稿しているというタイムラインをよく目にする年頃になった。
おそらく、第一次結婚ラッシュ。今年26歳になる同級生たちは、一応フォローしてはいるもののいまの私の人生に全くと言っていいほど関わりのない人物たちで、それなのにその人たちの近況を知ってるというのも奇妙なものだ。
それでも、結婚という人生の節目の報告と、学生時代の面影を残しながら大人びた顔つきになった同級生たちを見て、純粋におめでたいなと嬉しくなる。
それは私がお人好しだからなのか、はたまたまだ人の結婚を喜べる年齢だからなのか、もしくは自分が結婚予定だからなのかはわからない。
そう。私も結婚をするのだ!きっとInstagramに結婚指輪や婚姻届なんかと一緒にツーショット写真を並べ投稿し、何年も会っていない学生時代の友人たちに「おめでとう」とコメントされ承認欲求を満たすだろう!LINEの名前の苗字も変えたりなんかしちゃって、まさに人生の最高潮を味わうのだ!
…と思っていたのは、1年前。結婚すると報告すべき友人にはしたものの、まだプロポーズも受けていないし、籍を入れる日も決まっていない。結婚指輪をいつ買うのかもわからないし、なんなら同棲もしていない。
「もう結婚した?」してません。「いつ籍入れるの?」わかりません。
「式は挙げるの?」知りません!誰か教えてください!私の結婚!いつどこでどうなるのか!周りに結婚について聞かれるたびにそう叫びたくなる。
私たちの結婚は、きっと側から見ると不可思議なものに見えるであろう。「結婚する」と宣言するのが早過ぎたのではとも取れるのだが、そうでもない。きっとみんなと同じタイミングで大切な人たちへ報告を始めた。
ではなぜこんなにスローペースになっているのか。それは、結婚というものはそう簡単にできるものではないと思い知ったからである。
腹をくくれ!結婚話は怒号から始まった
結婚というのは、お互いの好きな気持ちだけでできるものだと思っていたし、お互いのタイミングで結婚してみんなに祝ってもらえるものだと、これまでの人生で見てきたドラマや映画や周りの大人たちの光景から刷り込まれていたが、現実はそれとは程遠かった。
そういえば、どんな作品だってプロポーズからすっ飛ばして夫婦になっている。間にある面倒な結婚準備なんて誰も教えてくれなかった。
「結婚」という言葉がふたりの間で話されるようになったのは、1年ほど前。居酒屋で食事をしながらお酒を飲んでいたときに、私が「腹をくくれよ!」と彼に怒号を浴びせたことがキッカケであった。
この「腹をくくる」という言葉を発したのは、彼の言動からだったと思う。健康を気遣う素振りもなく、独り身だから話せるむかし話を聞かされ、いつまで経っても自由な独り身気分な彼に堪忍袋の尾が切れたのだ。
口ではふたりの将来のことを語るくせして実際はどうなんだ!と酔った勢いでまくし立てた。
彼はどうにか笑ってはいるものの、その言葉と私の形相にひどく打ちのめされていた。
数日後、仕事中に電話がかかってきた。仕事中に電話なんて珍しく、何かあったのかと電話に出ると、彼は興奮した様子で「来年の頭に結婚するから!」と言った。
聞くと、彼の友人たちに片っ端から電話をし、「結婚する!」と宣言して回ったそうだ。彼なりに色々と考えていたときに「腹を括れ」と言われ、半分自棄で半分本気のようだった。
ああ…そうですか…という中途半端な返しをし、職場の同僚に「結婚する、らしいよ」と半笑いで話したのを覚えている。
同僚たちははしゃぎ、祝福の言葉を並べたが、当の本人は全くもって喜びなんて感じられなかった。「結婚する」と言われて喜ばないなんて、贅沢過ぎる。そう思われても仕方ないが、これには理由があった。