令和のこの時代だけど。結婚準備は夫婦になる過程なのだ
まずは彼を私の母に会わせた。その次に父を交えて4人で会った。私の両親はとにかく「娘の結婚相手」としての彼ではなく、「彼自身」と向き合おうとした。
“普通”ではない両親の行動に彼ははじめ戸惑ったし、遅い展開の進み具合にヤキモキしていた。けれど、そんな両親の行動は彼が両親を知るとともに、私の過去や生い立ちや環境に触れるということだった。
彼と両親はお互いの好きなことを語り合っていたし、そのなかに私がいた。そしてそれがリンクし影響し合って間に私を挟まずとも、私の大切な人同士が繋がっていった。
私は彼の生まれ育った土地へ足を運んだ。長い間、彼の話のなかだけに存在していた人たちに実際に会って、答案用紙を答え合わせしたようだった。義母さんに会って彼のルーツを強く感じたし、その彼にそっくりな空気を身にまとった彼女を愛しく思えた。
口数の多い彼のおかげで沢山想像できていたはずの土地や彼の家族には、やっぱり会って見てみなければわからなかったことのほうが多かった。彼の話の根拠や説得力にもなったけれど、この目で見たことが事実なんだと、そしてそれを見せてくれたことが幸せだと思った。
彼と触れ合ってきたなかで知ってきた点が線になった。
お互いの両親に会うのと同時に、少しずつ現実的なお金の面を整えた。共同の口座を作り貯金をし、一気に彼のリボカード支払いをして、知り合いのFPとライフプランシュミレーションを作った。頭を悩ませる苦い現実も、向き合ってみたら少しずつ前に進むしかないことを知った。
そんな結婚準備を重ねていったら、やっとふたつの人生が重なっていくのだと、心の準備ができた。他人よりも時間がかかって課題が多く立ちはだかるけれど、時間がかかったからこそより一層私たちは一緒にいたいと思えたのだ。
令和のこの時代に、「結婚は家族同士のものだ」とか「お金との相談だ」なんて古臭い気もする。けれどこの過程を踏まなければ、私たちはいつまでも目の前にいるふたりのままでいただろうし、たぶん知らない一面を知ったとき、違う道を選んでしまったかもしれない。
家族と会うことで知ったお互いのルーツや、結婚資金を作る過程で教えてくれた過去の出来事。そのひとつひとつがいまの自分たちを作り上げているのだとわかったとき、男女以上に人間として愛しいと思えるようになった。
プロポーズも、入籍日も、引っ越しも、まだまだ未定なものばかりだ。でも私たちは形に見えないところで、確実に夫婦になっている。思い描いてきた理想とは程遠かった結婚準備が私たちを夫婦にさせたのだ。
「白湯が最高!」
最近彼は缶ジュースやコーヒーを止めて白湯を飲み始めた。自分だけの身体じゃないから、らしい。そんな小さなことも私たちが夫婦になろうとしている、結婚準備のひとつなのかもしれない。
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