いまの時代、アメリカ・ロサンゼルス(以下、LA)に居ながらにして、日本のテレビやメディアの情報をリアルタイムで知ることができるようになりました。
日本ではメディアがよく「アメリカで大流行」などの謳い文句を使っていますが、嘘が多いのも事実。私のメルマガ『FROM LA TO JAPAN』では、LAから見た日本への個人的意見も含め、本物の情報を発信しています。
「団体行動」を普段目にしない私は、日本の野球の試合を見て少しだけゾっとしました。
アメリカでも、日本のように野球観戦での応援がうるさいのは同じですが、団体で同じ掛け声や振り付けのような手の動きをしながら、選手の応援歌をみんなで合唱するような応援の仕方はまずありません。ラッパや太鼓も鳴りません。
アメリカでは個人個人が相手チームにヤジを飛ばしたり、ブーイングでの「煽り」や「邪魔」を楽しんでいる傾向の方が目立ちます。
あくまでも「楽しむ」が基本で、観客席もチームごとに分かれていないため、隣に座った人が「相手チームの応援者」だったりするのです。
アメリカでは、「日本の鳴り物応援がうるさくて選手の集中の邪魔になる」ということはよく言われます。
エンゼルス戦で、大谷翔平選手の応援をしていた日本人ファンが静かにするように注意されたというニュースもありました。
人数が集まると、それが周りに伝染し、束になって応援する傾向にあるのが日本です。自分以外の人の多くが「敵」の相手チームを応援していると、個人は身を縮めてしまいます。
そして、最悪、くら替えするのが私です。次第に相手チームを応援する側に回ります。
きょうは、団体行動についてお話します。
「圧力」を感じた出来事
昔、日本でレストラン(アメリカにチェーン店があるBBQのお店)に行ったときのこと。
私は友人たちと食事を楽しんでいたのですが、その店内に「本日お誕生日を迎えた方」がいました。
いきなり店内の電気が消えたかと思うと、レストランのウエイトレスたちが、暗闇からロウソク付のケーキをゆっくりと運んで来るではありませんか。しかも、店員は「ハッピーバースデー」の歌を歌いながら…。
その「誕生日を迎えた主人公」は、どうやら友人たちからのサプライズだったらしく、レストラン側の粋な計らいに驚いていたみたいですが…。
私はそれを見て、一緒に食事をしていた友人にこう言いました。「ああいうことは、私には絶対にしないでくれ!」と。
こっぱずかしい!というのはもちろん、目立ちたくない!喜ぶどころか、怒りが先に立つ。
むろん、食事を楽しみに来客した人にとって、食べている途中で電気が消されるなんぞ、迷惑と感じる人もいるだろうし。
その日に別れ話をしているカップルだっているだろうし。愚痴なんぞこぼしながら、友人と食事をしてイライラしている人もいるはず。
なのに、「見ず知らずの人の誕生日」を祝わなくてはならないのか?同調しなければならないのか?
ハッピーバースデーの歌が終わるまで、いや「主人公」がロウソクを吹き消すまで、なんとなく変な空気が流れるなか、ガツガツ肉を頬張る度胸はなく、私も友人も箸をおき「おめでとう!」と拍手を消極的に鳴らしたものの…これって何でしょうか?
そこで拍手も送らず、「うっとうしいな!」と眉間に皺をよせていれば、「器のちっちぇーやつ」とか、「おとなげない」と言われるような空気感?「一緒に祝ってあげましょうよ!」的な、あの空気感?
私には理解できませんでした。でも、まあ、拍手はしたのですが…。
周りをみると、「見知らぬ人の誕生日」に全く関係のない人たちが笑顔で、「おめでとうございます~」ってホトケのようなまなざしを送って拍手している人が多かったからです!
しかも、そういう「全く関係のない人」が、さらに関係のない私たちを見て、立ち上がり手を叩きます。「拍手してあげましょうよ~!」みたいな笑顔で…。
それにつられて私も友人も、なんとなくパチパチと軽めの拍手をしたのですが、個人的には「気持ち悪っ!」という思いでした。
なんというか、そのとき、その場にいた人全員に拍手を促すような店員の態度、客の態度が、異様で本当に気持ち悪かったです。でもまあ、多数派に身を任せるのは、私も日本人だからなんだろうな…。
「笑顔の押し付け」のようなものが、私はすごく苦手です。
こちらも笑顔でいなければならないかのような、「拍手くらい送って上げられる人になりましょうよ!」的な、「みんな拍手しているでしょ?(なんであなたは拍手ができないのかな?)」みたいな、やんわりとした強要がとっても心地悪い。
実は居酒屋でも、こういう場面に遭遇したことがあります。
そのときは、居酒屋の店員が「ウサギの着ぐるみ」を着てケーキを運んできてのですが、狭い店内で人の2倍ほどにもなる着ぐるみを来たウサギは、前が見えないためかあちこちに足をぶつけながらケーキを運んでいたのです。
その居酒屋でも、ハッピーバースデーの歌が終わるまで、いや主人公がロウソクを吹き消すまで電気はつきませんでした。よって、食事も中断…。
このように、やんわりとした「圧力」みたいなものを感じたことは、過去2度ほど日本で経験しました。
アメリカでも、誕生日にレストランで食事をする人たちはいます。店側に頼んでいたサプライズのケーキを、食後に運んでくれるウエイトレスもいます。でも、歌は歌いません。
そのケーキをみた周りの人が、小声で「ハッピーバースデー」と声掛けする場面はありますが、店内全員の客の注目を一気にかっさらうような「もてなし」はありません。